『ごきんじょ冒険隊』

発売日 1996年5月24日
定価 7980円
メーカー パイオニアLDC
内容  幼稚園児たちが活躍する、ほのぼのコマンドRPG。


 『ごきんじょ冒険隊』は主人公たち幼稚園児の冒険を描く、コマンドRPGで
ある。漫画家の須藤真澄(「月刊まんがくらぶ」にて同名漫画を連載中)のデザ
インによるユーモラスでかわいいキャラクターと、日本の町を舞台にした身近な
設定が新鮮だ。
 ゲームシステムも一風変わっていて、敵に勝っても経験値は全く得られない。
キャラクターの能力は幼稚園での「お勉強」でアップさせる。勉強といっても、
好きな科目をただ選べばいいだけなので難しいことは何もない。戦闘はイベント
中の限られた場面でしか発生せず、戦闘終了後には倒されたメンバーも含めて体
力が全回復。たとえ敗北しても、より強くなった状態ですぐに「その場復活・再
挑戦」が可能。レベルアップの苦労が最小限に抑えられているため、「RPGの
システムを使ったアドベンチャーゲーム」といった印象だ。会話や探索、ボス戦
などのイベントを味わってもらうことに、重点がおかれているのがわかる。

●練り込みの不足がもたらす希薄さ

 だが、その狙いがゲームの面白さに結びついているかといえば、残念ながらそ
うとは言いがたい。親切すぎるシステムは同時に、キャラクターを成長させてい
く楽しみや展開のメリハリまでも取り去ってしまった。全体の練り込みが甘いせ
いで各要素も充分に活かしきられておらず、様々なシステムを有効に使う機会が
あまりに少なすぎる。いってみれば、「ほとんど調理せず、材料だけを皿に盛り
つけた状態」に近いのである。手を抜いてプレイしていても何とかなるので、張
り合いがない。
 どちらかというと、小さい子供やゲーム慣れしていない女の子がほのぼのと遊
ぶのによさそうなソフトだが、それにしては謎解きのヒントが一部わかりにくく、
配慮に欠ける。マニア向けにも初心者向けにも徹しきれていないバランスは、明
らかに調整不足だと言わざるをえない。個性的なキャラクターとストーリーの温
かさ、そしてザコ戦の多さに代表される「RPGの疲労の原因」を軽減しようと
した発想などは良かっただけに、中途半端な仕上がりになってしまったことが非
常に惜しまれる。
 ゲーム批評 Vol.10('96 7月末 発売)掲載(改行位置変更)
                (登録日 '96/10/30)

ソフト発売1996年5月備考なし