『リトルマスター〜虹色の魔石』 <Little Master Episode III 〜Jewels of Rainbow> |
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発売日 1995年6月30日 定価 9900円 メーカー 徳間書店インターメディア 内容
かわいらしい個性的なキャラクターが生き生きと動き回る、
シミュレーションRPG。ゲームボーイで2作が発売され
ているシリーズの第3作めにあたる。
ゲームボーイにはシンプルながらもキラキラ光る、魅力的な作品が多くある。
時の流れに逆らえずGBの勢いは次第におとろえ、GBから生まれた作品のいく
つかは、続編発表の場を売れ筋のスーパーファミコンへと移していった。なかに
は、移行せず埋もれたままのシリーズもある。ハードの衰退にともなって、良い
シリーズが打ち切られてしまうのは悲しい話だ。だから『リトルマスター』シリ
ーズがSFCで出ると知ったとき、GB版のファンであった私は大変うれしかっ
た。消え去るには、あまりに惜しい素材だったのである。
このシリーズ最大の強みは、絵が非常に魅力的なことだろう。こまかい動きや
表情にまでかなり凝っていて、作品に対する愛情が伝わってくる。敵・味方とも
にキャラクターの好感度が高い。どいつもこいつも素直さと素朴さに満ちあふれ
ていて愛嬌がある。攻撃方法もユニークだ。見ていてほほえましくなる。GB版
に出ていたユニットで今回は出演していないものもあるが、それを補ってあまり
ある、多くの楽しい新キャラが登場する。
良いのはグラフィックだけではない。一見単純そうなゲームシステムも、意外
と奥が深い。アイデアが豊富につまっており、いくつかのこまかい要素が戦況に
微妙な影響を与えてくる。攻撃失敗したときや、攻撃できず敵から一方的に攻撃
を受けた(あるいは、かわした)場合でもちゃんと経験値が入るのは、「失敗も
経験のうち」という、じつに納得のいくルールだ。
戦闘シミュレーション系ゲームでは、戦いをいちいち見ていると疲れるため、
慣れてくると敵ターンを見ないこともある。が、この作品では新しく導入された
“インパクトシステム(攻撃が届く瞬間にタイミングよくボタンを押すことで、
攻撃力を増したり防御力を高めたりできる)”のおかげで、戦闘中ほとんどコン
トローラーから手を放せない。絶体絶命のピンチでも「あ〜、もうどうせ負ける
んだ」とすぐにあきらめることなく、努力で展開を変えられる可能性が最後まで
残される。「味方と敵の力関係はだいたい決まっているから、後はもう組み合わ
せの問題だ」なんてことがない。うまくボタンを押せば結果をより良くすること
ができるから、画面への集中度が確実にアップする。
メッセージ文字は大きく、読みやすい。文章の表現力が豊かだ。ちょっとした
説明文にも心がこもっている。デモメッセージの自動切り替えはすこしスピード
が速すぎる。戦闘時のメッセージはともかく、ストーリー部分は小さい子供には
読みきれないかもしれない。オプションで、メッセージ送りの自動/手動を切り
替えられるようにしたほうがよかった。また、大人でも読みづらいような、むず
かしい漢字の使用も見受けられる。ひらがなでも通用する単語なら、特殊効果を
狙う場合をのぞいて、不必要に難解な漢字は使うべきでないと思う。どちらかと
いえば低年齢層にウケそうな内容なのだから、そのへんの配慮は必要だったので
はないだろうか。
全体にていねいにつくられているが、ちょっとしたバグがいくつかあったのは
残念だった。ゲームクリアに支障なかったとはいえ、たったひとつのバグが全体
をぶちこわしにすることだってある。最後まで気を抜かずに仕上げてほしい。と
もあれ、シリーズものとして安定した魅力を提供しており、GB版の良さを継承
しつつ、SFCへのスケールアップをきちんと果たしている。アイデアを盛りこ
んだ数々のマップはとても遊びがいがあって、じゅうぶん楽しめる。大作と呼ぶ
ほどの壮大さはないけれども、ゲームの楽しさをじっくり味わえる、良質の作だ。
'95 11/22 NIFTY-Serve FCGAMEM
ファミコン&スーパーファミコン会議室 #13850(改稿)
(登録日 '96/11/6)
ソフト発売 | 1995年6月 | 備考 | 感想 |
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