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【プレイステーション2】
『ブレス オブ ファイア V ドラゴンクォーター』
<BREATH OF FIRE V DRAGON QUARTER>
発売日 2002年11月14日
定価 7140円
メーカー カプコン(→メーカーホームページ
内容  竜(ドラゴン)を題材にしたコマンドRPGシリーズ第5作め。


 機種がプレイステーション2になり、ゲームシステムがかなり変わったシ
リーズ第5作めの舞台は、技術の発達した、現実に近い世界。
 地下深くの下層地区で生きるリュウに、竜が宿る。竜の侵食(Dカウンタ
ー)が100%になる前に上の階層へのぼり、地上へ出なければならない。
 「Dカウンター」は、主に竜に変身して戦うことで数値が増えていき、1
00%に達するとリュウが死亡する(ゲームオーバー)。移動しているだけ
でもわずかずつ数値が増えていくので、「急がなければ」という緊張感が生
まれる。一種の時間制限である。
 「SOL(ソル:シナリオ・オーバー・レイ)」は、ゲームオーバー時に
「最初から」あるいは「セーブポイントから」やり直すことでエピソードが
追加され、新たなイベントシーンを見ることができるシステム。パーティ経
験値や武器&道具庫のアイテム・預けたお金・手持ちの装備&スキルは引き
継げるが、手持ちアイテムのほとんどを失い、レベルは1に戻る。
 今回導入された、この2つのシステム。なかなか面白い、と思った。
−−最初のうちは。

 回復魔法が存在せず、HP回復はアイテムに頼るしかない。アイテム売り
場まで戻るには、今まで来た道を歩いていかなければならない。戻るのは面
倒だと思ってそのまま進んでいると、強い敵に会って全滅、入手したアイテ
ムを失い、かなり戻されてやり直しになり、もっと面倒なことになる。
 ある地点まで瞬間移動できるアイテムか魔法はないのかと言いたくなるが、
そんなものは用意されていない。
 敵の姿は最初から見えていて、出現場所もだいたい固定している。敵を倒
すと、その場所には敵が出現しなくなる。通常戦闘は前作までのように「敵
の姿が見えないランダム・エンカウント方式」にした方がよかったのではと
思うが、やり直すたびに多くの戦闘をこなしていては疲れてしまう、という
配慮だろうか(狭い場所なのに、倒しても倒しても敵が出てくるのは不自然
ではある)。
 ランダム・エンカウントの場合、敵にいつ遭遇するかわからず、あるエリ
アの敵は数種類いて、そのうちのどれかが出現する、というように変化がつ
くが、このゲームのように敵がどこにいて、どういう奴かがすでにわかって
しまうと、やり直しの戦闘が作業的になる。
 レベルをいくら上げても、リュウのDカウンターの消費方法で勝敗が決ま
るので、不必要に戦闘量を増やすのを避けたのかもしれないが、ランダム・
エンカウントの戦闘にして、「敵の出現率を下げるアイテム」によってプレ
イヤーが戦闘量をコントロールできるようにしてもよかったかもしれない。

■やり直しが面倒な新システム

 「中断セーブ」で、いつでも一時的にセーブしてゲームを中断できるが、
中断セーブデータはロードすると消える仕組み。ロードしても消えないセー
ブをするには「セーブトークン」というアイテムが必要になる。消耗品で非
売品なので戦場で発見するしかないが、出現個数がきわめて少なく、気軽に
セーブできない。
 ゲームオーバーになったら、「前回までのセーブデータを上書きして途中
から(あるいは最初から)やり直すか」、「リセットして前回のセーブデー
タをロードしてやり直すか」になる。増加しすぎたDカウンターでは、途中
のセーブポイントからやり直してもクリアできないため、結局、「初めから」
やり直すことになる。
 この「セーブトークン」によるセーブ回数の制限と、Dカウンターの存在
が、「同じイベント・同じ戦闘」のやり直しを何度もプレイヤーに強制する
のだ。
 初期の頃の『ウィザードリィ』(3DダンジョンRPG)のように、パー
ティが全滅したらレベル1からやり直しなのだが、『ウィザードリィ』ほど、
面白いシステムにはなっていない(もちろん、『ウィザードリィ』でもパー
ティの育て直しになるのはキツいが、緊張感を保つルールとして納得はでき
る)。
 セーブ機能がないタイプのアクションやシューティングゲームでは、最初
のステージから何度もやり直すのが普通。やり直せば、どこでどういう敵が
出てくるか、すでにわかっている状態になる。それでも、繰り返しのプレイ
が苦痛でなく面白いのは、操作そのものが楽しいから。何度も練習して、う
まくなろうという意欲がわく。
 コマンドRPGではアクションやシューティングゲームほど、同じことの
繰り返しを楽しめない。『ブレスV』ではAP消費によるターン制になり、
移動を含めたシミュレーションRPGのような戦闘システムになった。それ
自体はいい出来なのだが、同じ場所の同じ戦闘を何度もやり直さなければな
らないのはやっぱり面倒だ。アクションやシューティングの場合とは、違う
のである。
 「SOL」によって追加されるエピソードもごくわずかなので、最初から
全部流しても、たいして変わらない。何度もやり直すため、ストーリー展開
部分を少なめにしたのかもしれないが、「追加エピソードを見ると謎解きの
ヒントになって、分岐地点で正しい行動を選べるようになる」など、構成の
工夫がもっとあるとよかった。

■シリーズのファンを突き放した難易度

 新しいシステムは、よほど慎重に練りこまなければ、プレイヤーに満足感
を与えることが難しいものだ。
 前作までのような「普通のRPG」だと思って購入したプレイヤーにとっ
て、このゲームは、とてもクリアできる難易度ではないだろう。どうしても
クリア方法がわからず、プレイをやめてしまう人もいるはずだ。
 学生の部活動に例えるなら、文化部に入って楽しくやろうと思っていたら、
運動部の厳しいスパルタ特訓になってしまった。というような感じだ。
 アクションRPGではないので、戦闘コマンドの選び方さえ間違えなけれ
ばいいのだが、何度も繰り返し失敗して、効果的な「Dカウンター消費方法」
を学習していかなければならない。
 最初からやり直しになっても、持ち越したパーティ経験値で、ある程度の
レベルまですぐに上げることができるようになっている。しかし、何度も同
じルートをやり直し、同じ戦闘を繰り返さなければならないのが苦痛。攻略
のしがいはあるが、あまり何度も同じことを繰り返すのは楽しくない。シリ
ーズのファンを突き放したようなシビアすぎるシステムに、期待を外された
人も多そうだ。
「続編もこんな風なら、ブレス オブ ファイアシリーズはもうプレイしない」
そう思われないよう、厳しさと面白さが両立するシリーズを目指してほしい。

(HP登録日 2005/11/24)

ソフト発売2002年11月備考なし

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