ゲームレビュー(5)
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プレイステーション
『桃太郎電鉄7(セブン)』
発売:1997年12月23日
メーカー:ハドソン
ジャンル:
☆日本各地を回って物件を買い、資産額トップを競う、すごろくタイプのボードゲーム。人間とコンピュータ、合わせて最大4プレイヤーで遊べる。ファミコン・スーパーファミコン・PCエンジンなどで発売されてきた、桃鉄シリーズ・プレイステーション版。
 順調なら大変楽しいが、ドツボ状態になると、これほど腹のたつゲームもない−−それが、桃鉄シリーズである。
 ルールは簡単。サイコロをころがして出た数だけマップ上を進む。様々な効果が出る多種類のカードを駆使しつつ、都市の物件を購入して決算時の利益増加をはかる。目的地に一番早く到着した人は援助金がもらえ、その時点で目的地から一番遠くにいる人には貧乏神がとりつく。両者の間には天国と地獄の差がある。
 ゲームは1ターンで一ケ月が経過、夏のマス目は黒字が多く赤字が少ない。冬はその逆になる。時の経過とともに段階的に駅の性質を変化させてゲームの戦略性を深めると同時に、盤上のグラフィックも季節ごとに変えて、さほど広くないマップ内を行ったり来たりする単調さをカバーしている。ユーモアあふれるメッセージ、時事ネタを適度にとりいれたイベント、地域色を盛り込んだ動きあるグラフィックは見ていて楽しい。遊んでいるうちに、都市の位置や特徴を自然に覚えられるから、日本地理の勉強にもなる。途中で出てくるミニゲームは数分続くことがあって若干クドいが、これをイライラせずに眺められる気持ちのゆとりがほしいところだ。でなければ−−血圧が上がることになる。
 昔、PCエンジン版『SUPER桃太郎電鉄II』を弟とプレイしていて、弟があまりにも調子がよく、私があまりにも最悪の状況におちいったため、最後に私がスネてしまったことがあった。笑って会話することがだんだんなくなり、ついには不機嫌に黙り込むのである(笑)。ゲームなんだからそこまでマジにならなくてもと言われそうだが、私はゲーム上の勝負においてはかなり負けず嫌いなのだ。しかし今はもう、こういう大人気ない態度をとることはない。……と、プレイ前には思っていた。
 ところが、やはり負けがこんでくるとどうしようもなくムカムカしてくる(笑)。自分が不調かつ不運な状態にもかかわらず、他人が好調かつ幸運なのをニコニコ見ていられる人間はそういない。よほど悟っているか、勝ち負けを全く気にかけない人くらいなものだ。もう逆転できそうにないほど圧倒的な差がつくと、ゲームを続けていても楽しくない。かと言って、気をつかってワザと手加減してもらうのはもっとイヤだ。

(落ちつけ、心を静めろ、これはゲームなんだぞ。実際に損をしたわけじゃない、こんなことで気分を害することこそ損じゃないか。健康に悪い)

 そう言い聞かせても、いらだちはおさまらない。そんな熱い気分にさせる何かが桃鉄シリーズにはある。調子のいいときはものすごくいいが、いったん深みにハマるとなかなか脱することができない。富める者はさらに富み、不運は失意の者の元へトドメをさすかのように襲ってくる。借金を背負い、物件を手放さなければならなくなったときの哀愁の曲を聴くと、たとえその気の毒な立場のプレイヤーがコンピュータ側だったとしても同情を禁じえない。それが自分自身だったときには涙せずにいられない。しかし、そんな中にも一筋の希望の光がさすこともある……。人生、一寸先には何が起こるかわからない。桃鉄シリーズは人生の、栄華と没落の縮図を描きだしているのである。

[つづき]
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