ゲームレビュー(5)
(2/2)
プレイステーション
『桃太郎電鉄7(セブン)』
 ところで、いくら負けず嫌いだとはいえ、本来、皆でなごやかに遊べるはずのボードゲームで、なぜ腹をたてるはめになるのだろうか。原因はアイツである。タイトルこそ『桃太郎〜』だが、ゲーム中、桃太郎よりも強烈なインパクトを放って登場するアイツ−−キングボンビーだ。貧乏神でも結構な被害をくらうのに、キンさんときたら、シャレにならない大ダメージを連続で与えてくる。思わずコントローラーを投げ出したくなるほど嫌な奴だが、もはや「キンさんのいない桃鉄」など想像できず、いてくれなければスリルがない。
 そこで一計を案じる。人間には感情があるが、コンピュータにはない。コンピュータ・プレイヤーの中から一番弱いのを選んで、そいつにドツボ役をやらせれば、きっと楽しく遊べるはずだ……と思いきや、じつはそうではないのだった。コンピュータ・プレイヤー最弱レベルの「アカオニ」は、せっかく良いカードを持っていても活かそうとしないし、貧乏神を他のプレイヤーになすりつけようともしない。弱いというよりは、やる気がない。そんな彼は当然、キングボンビーの被害をかなり引き受けるので、結果、トップの独走を食い止めにくくなってしまう。これは困る。やはり、ある程度接戦にならないと面白くないのだ。

 しかも、確固たる基盤を築きあげ、あらゆる対策も完備した者には、各種災害、そしてキングボンビーの攻撃さえ、たいして効果がない。特に長い年数で遊ぶ場合、後半は物件がほとんど買いつくされて展開がマンネリ気味にもなる。それを防ぐために今回登場したのが、ギーガボンビーである。こいつは「全プレイヤーの持ち金およびカードの全消滅、独占物件の破壊」を一度にやってのける、とんでもない奴だ。ゲーム後半では大金を持ち歩くことになるから相当な痛手になるが、悪いことばかりではない。どん底にあえぐプレイヤーにとっては、莫大な借金を帳消しにし、ライバルのカードを消し去り、一部の物件を白紙に戻して挽回のチャンスを与えてくれる救世主でもある。ギーガボンビーは良いバランス調整役なのである。
 シリーズも、回を重ねるごとに様々な工夫やアイデアが盛り込まれ、子供から大人まで楽しめるボードゲームとして非常に完成度高く仕上がっている。システムは全体によく気配りされていて遊びやすいが、注文したい点もいくつかある。まず、サイコロを振ってからでも手持ちカードを確認できるようにしてほしいことと、都市の名称から位置をチェックできる索引コマンドがほしいこと。それと、これまでのシリーズではひと月ごとにデータが自動セーブされたが、このPS版では、セーブ時の待ち時間を減らすためか、年に一度しかセーブされない。急に電源を切らなければならないときもあるので、月単位の手動セーブ機能があるとよかった。

 もしも、この作品に「幸運度・不運度」というパラメータがあって、いいことや悪いことが起きるたびにポイントが加算されていき、ゲージいっぱいになると特別の力が使える、なんてルールがあったとしたらどうだろうか。もっと戦略性が増すのかもしれない。しかし複雑にしすぎると、普段あまりゲームで遊ばない人には「難しそう」な印象を与えてしまう。気軽に遊べるボードゲームに徹し、誰でも見よう見真似で入っていきやすい“とっつきやすさ”が、桃鉄シリーズの良さなのだろう。

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