『スーパーメトロイド』
<SUPER METROID -METROID 3->
発売日 1994年3月19日
定価 9800円
メーカー 任天堂
内容  ショットで敵を倒しながら、いろんな技を使って道を 
 切り開きつつ進んでいくアクション。第一作め『メト 
 ロイド』はファミコンディスクで’86年8月発売。 
 第二作め『メトロイド2』はゲームボーイで’92年 
 1月発売。本作品はシリーズ第三作め。

 私はFCディスク版もGB版もクリアした。1の記憶はもうずいぶんと薄れて
いるけれど、大変おもしろかった。GB版の2も熱中して遊んだ。さて、SFC
版はどんな出来なのだろう? 任天堂だからヘタなものは出すまいが……。そう
思いつつ発売日に買う。
 映画のはじまりを思わせるオープニングデモ。かなり雰囲気が出ており、目が
離せない。最初に出てくる英語のしゃべりが、すごくクリアで驚いた。カーソル
移動音、足音、アイテム入手音など、効果音もよく出来ている。曲は「雰囲気を
演出するための音」という感じでムードを盛りあげてくれる。臨場感バツグンで
ある。グラフィックも質感がよく出ており、芸がこまかい。

 全体マップで現在地の確認ができるシステムは、『ゼルダの伝説』を思いださ
せる。GB版メトロイドは確かにおもしろかったのであるが、あまりにあちこち
入り組んでいて位置関係がわかりづらく、とまどうところがあった。これはその
反省をこめているのだろうか、とてもわかりやすくて良い。機能変更メニューも
充実していて、メッセージなどの表示が英語と日本語字幕スーパー、どちらかを
選択できるのには恐れ入ってしまった。英語表示は見た目カッコいいので、よく
デモなどで使われるが、表示終了が速すぎてとてもじゃないが意味がわからない
場合が多い。字幕スーパーが出るなら、その心配はないわけである。最近は日本
にもずいぶん多くの外国人が住むようになった。英語モードをつけることによっ
て、日本在住の外国の方にも遊びやすい作品となっているのではないだろうか。
ゲームを楽しむ心は世界共通。こういった配慮は、対日感情をやわらげるのに、
すこしは貢献しているのかもしれない。

 システムの大変ていねいなつくりに感心しつつプレイ、気がつくとすでに数十
分が経過。完全にゲーム世界にひきこまれている。いったんセーブして、ふうっ
と息をついて我に返り、言うセリフはこれだ。「このゲーム……すっごく、おも
しろいんじゃない?」
 主人公サムスはいろんな動作をこなすのでさまざまな操作方法があるのだが、
ゆっくりとひとつずつ覚えていかせる仕組みになっている。まず走る。ジャンプ。
しゃがむ。回転とび。……さぁ、このアイテムを入手したということは、あそこ
が通れるようになるね。そうそう、うまいぞ、その調子だ。じゃ、ここらへんで
小ボスでも出してみるかな? ああ、こわがらなくていいよ。ここまでやってこ
れた君なら、きっと倒せる。ただし、全力をつくせよ。油断はどんなプロにも命
とりだということを忘れるな……そんなメッセージが、脳に流れこんでくるかの
ようだ。これなら、メトロイドシリーズ初プレイという人でも入っていきやすい
だろう。私は最初、軽い復習のつもりでゲームを進めた。後になるほど、今まで
にない数々の仕掛けがサムスを待っている。

 進めば嫌でも遭遇するのがボスだ。最初くらいは難易度をおさえていてくれる
だろうな、ここまで気づかいを見せてくれているなら、最初のほうでゲームオー
バーなんてことはよもやあるまいと思って戦うと……だんだんシャレにならなく
なってくる。時間の経過とともに、自分の体力エネルギーはみるみる減っていく。
頭のなかが次第にマヒしてきて、まともな思考ができなくなる。必死に応戦しな
がら、頭のなかに、ふとよぎる考え。
(まさか……? まさかこのまま負けてしまうのか? ウソだ、これは夢だ、何
かのまちがいだ! ほら、今に倒れるぞ、こいつ。倒れるにちがいない。……倒
れてくれ、頼むぅ!)
 だが倒れない。戦いが長びくと、まさに死闘、デス・マッチだ。ようやく倒し
ても、華やかなファンファーレは鳴り響かない。まだ任務は終わっていないのだ。
どんなに怖くても、進まなければならない。

 この作品は、同じく任天堂の3Dシューティング『スターフォックス』のハデ
な話題性には負けるかもしれない。けれど「スーパーFXチップ搭載」に代わる
ものとして、このソフトには「プレイヤー心理・認識チップ」なんてものが組み
こまれているのではないかと思えてくる。こちらの考えていることを読んでいる
かのように、プレイヤーへのアプローチがおこなわれる。演出が見事なのだ。
 プレイヤーは見ている。電源を入れた瞬間から、今からやろうとしているこの
ゲームがおもしろいかどうか、無意識に点数をカウントしている。ちょっとでも
「なんだこりゃ?」な部分が出てくると、たちまち点数は下落していく。急降下
して一気に0点、それでも止まらずマイナスになると“クソゲー(クソッタレな
ゲーム)”のレッテルを貼られ、封印される。ゲームはプレイヤーになめられた
らおしまいだ。魅力がなくなり、プレイしてもらえない。

 では、この作品の場合、どうか。あるゲームを初めてプレイするときは、軽い
緊張があるものだ。はたして楽しく遊べるだろうかと、期待と不安が混ざった状
態でコントローラーを手にする。私も、「このゲーム、とってもむずかしかった
ら嫌だなぁ」と思いながら開始した。最初はいきなり敵が出てこない。何かある
だろ? あるにちがいないよな? にやにやしながら、操作を学習しつつ進む。
アクションやシューティングで、開始後、数秒のうちに集中攻撃を浴びて死んで
しまい、やる気をたたきつぶされるゲームも存在するが、その点、この作品は、
やりかたが上手である。簡単なことからすこしずつやらせて、次第に難しくして
いくのだ。ザコ敵がかたまって出てくる“エネルギー補給場所”もちゃんと用意
されており、ボス戦では、ボスの吐きだす小弾を撃つと回復アイテムも出る。

 知らず知らずのうちに作品世界に引き込まれていき、頭のなかカラッポにして
ゲームに集中してしまうので、ちょっとだけ遊ぶつもりでも、いつのまにか長時
間が経過している。シリーズ作品にはマンネリを避けるためにか“前作にはなか
った新要素”がよく投入されるが、いかにも取ってつけたようになって、そのア
イデアが活かしきれていないことがままある。シリーズの雰囲気をぶち壊す場合
すらある。この作品においても新しい要素がいろいろと出てくるが、シリーズの
雰囲気をまったく壊すことなく、それどころかさらに高め、ゲーム中に意味ある
ものとしてしっかり溶けこんでいる。

 はっきり言って難易度は低くない。一部かなりむずかしい箇所がある。演出の
しかた、謎解きなどが『アウターワールド』などの外国作品の影響を受けている
感じで、けっこう頭を使わないと進めない。「ん、ここはあやしい」と思ってや
ってみたらやっぱりそうだった、ということが多々ある。隠された道を見つけた
ときはとても嬉しい。狭いところに入っていくのはドキドキする。「いきづまっ
た!」と感じやすいが、よ〜く周りを見ていろいろやってみれば、ちゃんと抜け
だせる。一度行ったところも回ってみると新しい発見がある。

 簡単な操作説明がゲーム上で表示されるし、最初のデモも攻略のヒントになる
し、操作説明をコンパクトにまとめたカードもついていて、全体に親切なつくり
なのだが、問題点もないではない。それは、説明書に操作説明のないアクション
が存在することだ。ある行動が可能かどうかわからないので、いつまでも失敗し
続けるとハマりかと思ってしまう。しかも、どうやるかわかっていてさえ成功が
むずかしいものもある。そういうところでどうにも進めなくなり、クリアをあき
らめる人がいるとしたら残念だ。すべての操作のしかたを書いておいてくれても
よかったのではないだろうか。そうすれば、プレイヤーは「この場面ではこの技
を使えばいいんだな」と応用させることができる。その動作が本当に存在するか
わからないと、「ホントにこれって出来るの? ひょっとしてムダなことしてる
んじゃ……」と疑問がわいてしまい、そうなるとますます成功しない。練習すれ
ば必ずできるとわかっていてこそ成功もしやすいはずである。この点だけは少々
残念に思う。

 じつは−−発売後すぐに買うか値下がりを待つか、迷ったのだ。が、私のなか
の何かが「これは買え!」としきりに命令するので買った。それは正解だったと、
心から思っている。
 もしFCディスク版『メトロイド』をクリアしていなければ、GB版もSFC
版も、プレイしてみようと思わなかったかもしれない。いくら評判が良くても、
私はふだんあまりアクション系を買わないからだ。その私でもじゅうぶん楽しめ
たこの作品の出来は、かなりいい。定価に見合った面白さを提供してくれる力作
である。いきづまりやすい部分もありはするが、その難所さえ越せれば、探索の
楽しみと興奮を、思いきり味わうことができるだろう。
'94 3/25 NIFTY-Serve FCGAMEM
     ファミコン&スーパーファミコン会議室 #405(改稿)
                   (登録日 '96/11/13)
ソフト発売1994年3月備考GM