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【スーパーファミコン】
『ロマンシング サ・ガ3』
<Romancing SaGa 3>
発売日 1995年11月11日
定価 11400円
メーカー スクウェア(→メーカーHP(スクウェア・エニックス) )
内容  複数のキャラクターから主人公を選び、その視点でストーリー展開する
 コマンドRPG。シリーズ第3作め。

 RPGというジャンルのゲームはシューティングやアクションとは違い、
エンディングを見たら再度最初からプレイすることが少ない。RPGをクリ
アするには時間がかかる。繰り返しプレイする作りにはなっていないものが
ほとんどだ。しかし、この作品は複数のキャラクターからメインキャラを選
べるため、キャラクターごとに細部が異なっていて、前回のプレイで試せな
かったいろいろな行動を試すことができる。何度もクリアすることを前提に
作られているのである。

 『ロマンシング サ・ガ』シリーズは「努力する」ゲームだと思う。努力
という言葉には何やら楽しくなさそうな響きがあるが、このシリーズでは成
長の努力を、楽しみながらおこなうことができる。努力が報われることの喜
びを教えてくれる。楽しい努力、というものは確かに存在する。
 何のためにこんなことをしているのか。今はわからないけれど、とりあえ
ず目の前の興味あることを片付けていく。到達すべき目的は次第に見えてく
る。そしてある時、重要なイベントに直面する。実力がそこで試される。日
々の努力の積み重ねは、この戦いのためにあったのだ。
 「しまった、もっとがんばっておくんだった」と後から思っても遅い。大
きな舞台上に立って実力を発揮できなかったならば、まだやるべきことが残
っていたことを意味する。成果を得ることに焦り、なすべきことを怠ったな
ら、難関を突破するだけの力はまだ育っていない。
 少しずつ覚えてゆく技の数々に、さまざまな陣形パターンや合成技を研究
し、鍛練する。いつどんな状況におちいっても対処できる実力をつけ、急な
戦闘に備えるために。大量の戦闘や技の研究を楽しんでやれるかどうかが、
この作品を面白く思えるかどうかを決定するだろう。

 このシリーズも三作めになり、システム面がかなり洗練されてきた。グラ
フィックは前作の雰囲気とはまた違って、しっかり描きこまれており美しい。
建物の建築構造に重厚な様式美を感じさせる。
 戦闘バランスはゆるくなっており、前作までの「ムチャクチャなダメージ
で全滅」というパターンは少なくなった(しかし、そのために緊張感は薄れ
てしまっている。無茶さえしなければめったに全滅はしない)。
 スクウェア作品の長所のひとつは、クライマックスの盛り上がりにある。
最後の戦いの時、今までたくわえてきた力を試す場に、自分が立っている臨
場感。どんなに敵が強かろうと打ち勝ち、達成感にひたりながらエンディン
グをむかえる。今回、そのあたりが弱い気がした。難易度が下がったことや、
メインキャラが複数に分散していることが、原因のひとつかもしれない。

 複数のプレイヤーキャラクターがいるので、徹底的に何度も遊びこむなら、
購入値段に対するお値打ち度(コストパフォーマンス)は抜群に良いという
ことになるが、「一回めのクリアで充分な満足を得られるか」という点にお
いては、少々不満が残った。
 ひとりやふたりのキャラでクリアしても、物語の一側面しか見ることがで
きず、あのキャラはどうなったのか、このエピソードにはどんな意味があっ
たのか、謎が残されたままになる。すべての状況をいっぺんに知ることはで
きない。各キャラクターの立場、個性によって、ひとつの世界の物語が立体
的に構築されていく。
 世界を旅する楽しさ。新しく行ける場所が増えていく楽しさ。
 一つの楽器だけでなく、複数の音質が集まればオーケストラになる。
『ロマンシング サ・ガ』は、そんな印象のゲームだ。

(「まぐまぐプレミアム」発行(2004.1.13)・
有料メールマガジン「巴かずみのゲームソフトレビュー(有料版) Vol.16」改稿)
(HP登録日 2005/7/1)
ソフト発売1995年11月備考なし

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