ゲーム上のグラフィックと原画とが、あまり似ていない作品も存在するなか、
この作品ではかなり原画のイメージに近い。相原さん独特の持ち味がよく活かさ
れている。スーパーファミコンというハードで、ファミコンよりは表現力が上が
ったせいもあるのだろう。が、これはやはり何よりも、開発スタッフの努力のお
かげと思われる。

　コマンドＲＰＧで遊んでいるとき、「ここがこうだったらな」と思うことがよ
くある。たとえば、装備時はステータス変化がわかる、消耗品の売り買いは数を
指定できる、回復魔法をかけるときは全員の状態表示が出る、などである。意外
と、すべての要素をかねそなえている作品というのは少ない。たいてい、何かが
抜けている。この作品ではこまかいコンフィグ機能こそないものの、かなりシス
テム面が充実している。押さえるべきところをちゃんと押さえているのだ。
　ボス前のセーブや回復、複数攻撃魔法が使えるようになるタイミングなど、よ
く練ってある。敵グラフィックや攻撃方法、アイテム類も大変ユニーク。「ここ
はこうしたほうがいい」「こんなこともやってみよう」と、工夫されているのが
わかる。

　戦闘画面は『ファイナルファンタジー』のリアル版、といった感じ。装備して
いる武器がちがうと、合わせて絵も変化する。キャラが動いて戦闘するので少々
時間がかかるのだが、なぜか見ていて飽きないので退屈ではない。オートバトル
はないけれど、コマンド入力後はボタンでメッセージを送らなくていいし、戦闘
終了すると適度なスピードで戦闘結果報告が自動的に表示され、画面も切り替わ
ってくれるので楽だ。
　最初のほうだけすこしつらいけど、戦闘バランスもなかなか良い。レベルアッ
プ時に全回復するからけっこう長もちする。ボスを倒すと大量の経験値がもらえ
てレベルアップ→全回復、などの気づかいも見られる。

　しかし、これだけ手がかけられているのにふしぎなのは、ちゃんとテストプレ
イさえしていればすぐに気がつくであろうバグの存在である。「変身」コマンド
部分は、戦闘画面では問題ないのだが、通常画面で主人公以外のキャラの変身が
使えなくなる。使おうとするとなぜか主人公の変身メニューになったり、画面が
バグったりする。ちょっと不便なだけで何とかなるからいいけれど、やはり普通
に使えたほうがいいに決まっている。いや、それで当たり前なのだ。もしもこの
バグが戦闘画面でも起こるのだったら、作品の商品価値は地に堕ちていたことだ
ろう。
　しかも、ヘタをするとやり直すしかない、ハマりのバグもあるようだ。セーブ
するタイミングに注意していれば、ある程度は予防できるが、運が悪いとハマっ
てしまうかもしれない。悲しいことだ。
後半など、グラフィック上に平気な顔をしてバグった絵がチラついてくる。こう
いう状態の作品が市場に出回ってしまうこと自体、残念でしょうがない。

　画面切り替えが遅い。特に戦闘終了〜フィールド復帰までの間は一瞬、「これ
ってＣＤ−ＲＯＭのゲームじゃないよね」と思ってしまうほどだ。おまけにキャ
ラクターの移動速度がわりとのろく、イライラさせられる。敵との遭遇はむちゃ
くちゃ高くはないが低いわけでもない。いりくんだ広いマップでは目的の場所に
着くまで、ちょっと疲れる。

　従来のＲＰＧでいう魔法に代わり、「前世パワーで変身」というのが出てくる。
一時的に自分の前世の姿に変身し（なぜ変身できるのかは謎である）、特殊攻撃
をおこなう。これがけっこう見もの。キャラクターの個性が思いきり出ている。
　必殺技の名前（必殺技を出すときの、かけ声）を自分でつけられるのも楽しい。
18字も使用できるので、凝ったものを作成できる（私は考えたすえに、自分の必
殺技をこう命名した。「これでもくらえ！スマッシュボンバー！」）。
　必殺技をくりだしても通常攻撃とグラフィックが変わらないので、もうひとつ
迫力に欠ける。もっと派手にしてもよかったと思う。

　コマンド関係の使用感覚は良い。「ボタンを押したときの感覚がここちよい」、
これはささいなことのようだが、わりと重要である。なにしろゲーム終了までの
ボタンプッシュ回数は相当なものだから、この操作が不快なのは作品全体の楽し
さにまで影響する。メッセージ文字は大きく読みやすかった。

　ストーリー展開が大変おもしろく、楽しめる。バグさえなければ、そして画面
切り替えとキャラの移動速度がもうすこし速ければ、かなりいい評価がつけられ
たにちがいない。非常に残念である。