『ファイナル ファンタジーIV』
<FINAL FANTASY IV>

発売日 1991年7月19日
定価 8800円
メーカー スクウェア
内容  国産コマンドRPGといえば、『ドラゴンクエスト』シリーズと 
 並んで名の挙がるビッグタイトル第四作め。


 F・Fという略称で知られる『ファイナルファンタジー』シリーズは、ファミ
コンで三作が発売されている。四作めである『IV』は、スーパーファミコンでの
登場となった。SFCになって、グラフィックがすごく良くなったという気はし
ない。SFC初期の作品であることを考えればこんなものなのかもしれないが、
かえってファミコン版のほうがきれいだったようにすら感じるのは、「スーパー
ファミコンの力はこんなものではない」という先入観があるせいか。

 『IV』の大きな特徴は“アクティブタイムバトル”である。戦闘がリアルタイ
ムで行われるおかげで、緊張感ある戦いになっている。このシステムがなければ、
「よくできてはいるが基本的に今までのパターンを踏襲した、ごく平凡なコマン
ドRPGだな」と思ってしまうほど、この作品の根幹をなすシステムだ。普通、
コマンドRPGというものはコマンドを入力しなければ状況はずっとそのまま、
放っておいても敵が襲ってくることはない。時間がその瞬間で凍結してしまう。
だがこの作品では、ぼーっとしているとどんどん攻撃がくる。「ちょっと、さっ
き攻撃したばかりでしょ、ちゃんと順番守ってよね!」という論理は通用しない。
早い者勝ちの乱戦なのだ。
 私は最初そのことを知らなかったので、ついいつものパターンでコマンド入力
後、コントローラーから手を放して他事をやっていた。ふと見ると、味方はボコ
ボコに攻撃をくらっている……「おいおいおい、待て待てぃ!」と時代劇の悪徳
奉行のようにあせりながら急いで反撃コマンドを入力。ようやく、このシステム
に気づいたのだった(私はいつも、説明書を読むのは後回しにしているのである)。
このようなシステムだから、コマンドRPGにはめずらしく、戦闘中にポーズを
かけられる。しかし自然と戦闘に集中してしまうので、ポーズする必要はあまり
ない。とても忙しくて、それどころではない。

 ボス戦が大変楽しい。それぞれ個性的で戦いがいがあり、盛りあがる。強いの
だが、頭を働かせて全力で戦えば負けはしない。戦闘中にバッタバッタと仲間が
倒れるが、アイテムで強力な補助ができるので持久戦に持ち込める。が、後半の
敵は強すぎる。すごく意地悪だ。どんなにたくさんHPがあっても一回の攻撃で
ゼロ、あるいは瀕死状態になる。容赦がない。途中までは苦戦でも楽しかったの
に、後半は苦痛になる。圧倒的な力の前にたたきふせられて全滅、ということが
少なくない。
 小ボスみたいな固定敵がいる。これがまた途方もなく強い。しかも巣にでもな
っているのか、すぐ近くに何匹も配置されていたりする。全力を使い果たすので、
どうしても一戦ごとに補給地点へ戻る必要がある。しばらくセーブを忘れている
とかなり戻され、同じ宝箱を開けたり同じ人形劇を見なければならず、つらい。
まるで夏休みの宿題を、休みが終わりかけになってから嫌々やるようなもので、
最後はもうレベルアップのためだけの戦闘を、ひたすら繰り返していた。それで
も全然歯がたたない。ストーリーは、スピーディに先へ進むようにとゴーサイン
を出してくれているのに、敵の強さがそれを許さない。

 シナリオはおもしろいと思う。キャラクターが活きているし、工夫してあって
いい。が、予想はしていたが、やはりスクウェアお得意の「哀しみのシーン」が
出てくる。それもあちこちで。かと思うと、一生ぶんの幸運を使い果たしたかと
思われるような都合のいい展開もある。さぁここで、ある作業をしなければなら
ない。次のような思考回路を、頭のなかから除去するのだ。
(またか……黄金のワンパターンだな)
(何人殺せば気がすむんだろうね?)
(安易な手段はやめてほしいよなあ)
 うっかりこんなことを考えてしまうと、とたんに冷めてしまう。だからここは
わざと、開発者の手にのってやるのだ。もちろんこれで最高だとは思っちゃいな
いが、ゲームは楽しく遊びたいもの。純粋に楽しんだほうが得である。私はこの
作品の登場人物が好きだ。ばかばかしい、などという目で見ていては、懸命に演
じている彼らが気の毒ではないか。
 それにしても、多少の変化はついているものの、死を陳腐化させるような使い
古されたパターンはもうやめにしてほしい。確かに、死という要素を持ってくれ
ばキャラクターへの感情移入は強まり、敵への闘志はわきあがる。だが、あまり
何度も使うとその手法の効果は薄れ、プレイヤーをうんざりさせることになりか
ねない。戦いにおいて死人が出ないほうが不自然だというなら、「キャラを殺し
てるのは敵ではなくて開発者」というイメージを、できるだけいだかせない工夫
をするべきだ。

 システム操作関係のここちよさは、さすがである。じつに整然と、センスよく
構築されている。アイテムの整頓をすると気分がすっきりする。きっとソフトの
開発も、同じようにきちんとした能率よい環境でおこなわれているのだろうなと
思わせる。アイテムを使用するところで自動的に持ち物ウィンドウが開いてくれ
るのも親切だ。洞窟内などの途中にセーブ&回復可能ポイントがあるのはかなり
助かる。たどり着くのが大変だが、無いよりはるかに良い。
 音楽もやはりいい。FFシリーズの「どこかホッとするような空気」は曲によ
ってかもしだされている。戦闘の曲などもノリが良く、思わず口ずさんでしまう。

 どこへ行っていいかわからなくなる場合もあるかもしれないが、むずかしい謎
などは存在しない。ただ、後半の戦闘バランスにはやはり疑問を感じる。非常に
疲れた。あまりにキツくて何度もやり直すはめになるので、ストーリーを忘却し
そうになる。後半も前半のような調子で進んでいけたら、よかったのだが。


'94 4/15 NIFTY-Serve FCGAMEM
     ファミコン&スーパーファミコン会議室 #245(改稿)
                    (登録日 '96/12/4)
ソフト発売1991年7月備考GM