『アルバート オデッセイ』<ALBERT ODYSSEY>

発売日 1993年3月5日
定価 9600円
メーカー サン電子
内容  システムに独自性のある、ひと味違ったタイプの 
 シミュレーションRPG。


 シミュレーションRPGというと、「ひとつのマップをクリア後、自動的に場
面が移動し、新たな次の戦いへと突入する」という、面クリア型のものをまず想
像する。しかし、この作品はちょっと違う。マップは面ごとに分断されておらず、
通常のコマンドRPGのような全体マップを使用、自由にフィールド上を歩ける。
そしてマップ上を歩いていると近くにいた敵が寄ってきて、そのまま画面が切り
替わらずにシミュレーション風の戦闘に入る。フィールド全体をひとつの広い戦
場に見立ててしまおうという、大胆な発想なのである。パーティメンバーが各自
別行動をとるため、町に入るのにも、ひとりずつキャラクターを操作して全員分
移動させてやらなければならない。瞬間移動呪文を使える者だけが途中で戦線を
離脱して町へ戻り、アイテムを買ったりセーブしたりする変則行動も可能になる。
少し面倒な部分もあるけれど、とてもユニークなシステムだ。

 パッケージに「新戦略RPG」と表記されている通り、戦闘にシミュレーショ
ン要素が濃い。攻撃時に相手からの反撃がないシステムは、戦闘に単調さをもた
らしがちだが、この作品では1ターン中に攻撃を含めて行動を複数回こなせるの
で移動・攻撃・特技を自由な順番で小刻みに使え、計画的な幅広い行動ができる。
また、反撃がないおかげで、弱いキャラクターでも安心して攻撃をしかけること
ができ、他のメンバーのレベルに追いつきやすい利点もある(ただし、配置をう
まく考えて戦わないと、敵ターン時にボコボコのタコ殴りにあってしまうが)。
難易度もちょうどよく、強くなっていくのがはっきりわかり、レベルアップが嬉
しい。

 操作性はあまり良いとは言えない。ずんぐりむっくりしたキャラクターは大変
かわいらしいが、町でのキャラクター移動が重たく、動かすのがおっくうになる。
店での買物では、誰がどれを装備できるのか、どれだけステータス値が変化する
のかが購入時にわからない。全体を見渡せるマップ表示は一定の範囲内しか見ら
れないうえにカーソルが海などの移動不可能な箇所を通過できないせいで、もの
すごく参照しづらい。戦闘時の方向転換をR,Lボタンで決められないし、ボタ
ン一回で未行動キャラクターへカーソルが移るようになっていないのも不便だ。
このあたりは、もう少し何とかしてほしかった。
(長めの会話を途中でキャンセルできる仕様はありがたい。「メッセージが変わ
っていないか、確認のために話しかける→すでに聞いた話がまた始まり、ボタン
連打でメッセージをとばす」のは面倒だから☆)

 操作系等にクセがあるせいで最初は一瞬、「これはハズレをつかんでしまった
か?」などと思ったのだが、慣れてくると面白い。次に倒すべきボスキャラ名が
画面に表示され、それを次々撃破していくゲーム展開が、ひとつのここちよいリ
ズムをうみだしている。キャラクターがタタタタと勢いよく走っていって画面が
スクロールする戦闘シーンも、陸上の走り幅跳びを見ているような感覚で楽しい。
システムやシナリオは少々粗削りだが、世界観とキャラクター描写に独特の魅力
を持つ作品である。


'96 12/31 NIFTY-Serve FCGAMEM
     ファミコン&スーパーファミコン会議室 #31569
                   (登録日 '97/4/9)
ソフト発売1993年3月備考なし