『アースライト〜ルナ・ストライク』
<EARTH LIGHT LUNA STRIKE>

発売日 1996年7月26日
定価 7980円
メーカー ハドソン
内容  戦闘シミュレーション『アースライト』の続編。
 司令官が成長するRPG要素が加わり、実質的
 にシミュレーションRPGになった。


★良い点(と、それに伴う欠点)★

・面の最初の状況設定は結構凝っていて、悪くありません(でも、その後の展開
 がダラけます)。
・面の最初にキャラクターによる説明が入るのは、わかりやすくて親切です。
・残り耐久力が色で表示されるのがいい(コマンド開閉の手数が多く、間があく
 のは、もっとスピーディにできなかったかな)。
・戦場で敗れた司令官には、しばらく戦列に復帰できなくなるペナルティがつく。
 これは、ゲームルールとして良い方法だと思います。
・RPG要素を活かす演習面。難しい面でも、鍛えれば進みやすくなる(逆にい
 うと、ゲームバランスの調整をこれに任せられるせいで、シミュレーション部
 の練り込みが甘くなった気もする)。
・セーブカウント数がついているので、データの新旧がつかみやすい。
・グラフィックがていねい。きっちり作られていて、バグらしきものにも遭遇し
 ませんでした。効果音の出来も良いです。

・リーダーの近くにいる配下のユニットは攻撃力&防御力が上がる、というシス
 テムは、なるほどと納得します。しかし、近くにいるときと、いないときの差
 が激しすぎ。リーダーのそばにいることによって精神的に鼓舞される効果は認
 めるけど、ダイヤモンドのようにカタくなってしまうのは、精神上の効果だけ
 にしては強すぎると思う。バリアが張られるっていうんならわかるけど。それ
 と、このシステムがあるせいで、移動力のあるユニットでも仲間の足の遅さに
 合わせなくてはならず、先走りができない。隊から離れた行動がとりにくく、
 ユニットの個性が死んでます。

◆「ちょっと……」な点◆

・ユニットの個性と魅力が弱い。『ネクタリス』では、強い飛行ユニットに対し
 ては天敵が存在していました。ハンターに対抗するにはジャビイでは圧倒的に
 不利だし、ファルコですら不安が残る。そこで飛行ユニット殺しのホークアイ
 が登場! もう、あんただけが頼りよ!(笑) じつに、頼もしかったものです
 (そのかわり飛行ユニットがいなくなると、壁の一部となるくらいしか使い道
 なくなっちゃうけど☆)。この作品では「機動」「艦船」「白兵」の攻撃方法
 を使い分けるんですが、どれもそこそこ、平均的に戦える。リーダーのそばに
 いるとやたら強くなるせいで、ユニット間の相性は、それほど大切ではない。
 いかに隊形をくずさずに相手を取り囲んで叩くか、のほうが重要。
・敵があまり賢くない。『ネクタリス』では、弱った敵が自分を回復させるため
 にドックへ逃げ込もうとするので、「逃がすかっ!」と追いかける楽しさがあ
 りました。やっとのことで弱らせた「残り1匹になったハンター」なんてのは
 経験もじゅうぶん積んでますから、そういう奴に完全回復されては、たまった
 もんじゃありません(笑)。しかし『ルナ・ストライク』ではドックの存在を活
 かせていない面がほとんどで、単なる消耗戦になっています。ドックのなかに
 どんなユニットが入っているかを覗く楽しみ、どちらが先に奪えるか取り合う
 楽しみ、ってのがないんです。また、それに代わる面白さも見当たりません。

・ひとつひとつのユニットを活かしきるというより、数で勝負なので、おおざっ
 ぱな感じ。全体的にユニットの足が遅い。敵が動こうとしない場合、その場所
 まで全ユニットを移動させるのにやたら時間がかかる。中央にあるドック目指
 して最初は少なめのユニット数で移動、ドックにたどり着いてからユニットを
 取りだし、そこから戦端が開かれてゆく『ネクタリス』方式は、やはり優れて
 いたと、改めて思わされます。
・背景がほとんど似たような宇宙ばかりで、飽きる。展開も曲も単調。形勢有利
 になったときに曲が変わるのがこのシリーズの楽しさのひとつなんだけど、こ
 の作品では全然、気分が高揚しない。面クリアしても嬉しくない。もっと雰囲
 気を演出してほしい。
・敵のターンで、動かないユニット(固定砲台など)にまで、いちいちカーソル
 を合わせて順番を回すのはうっとうしい。行動しないユニットの表示は省いて、
 サッサと味方ターンへ切り替えてほしい。

・(出来自体は別問題として)ユニットデザインにアニメ界の著名な方を起用し
 ているため、「どっかで見たようなデザイン」になってしまい、シリーズの個
 性が失われています。見せ方もうまくない。ファンファーレと共に改造&新型
 機を出すのは「どうです、カッコいいでしょう」と言わんばかりなのですが、
 悲しいほどワンパターンで感動がない(シラケ鳥が数羽、南の空へ向かって飛
 んでます)。敵を倒したときや必殺技のときの決めゼリフも同様。浮いていて
 同調できません。
・敵の司令官の顔グラフィックが全員、ハンサムなお兄さんで「良い人」に見え、
 敵だと思えないです。ただでさえ味方の描写が足りないのに、敵のほうの事情
 描写(それも、哀れさを誘うような)をしっかりされると、何だかこっちが悪
 者になって攻めているような気分になってしまいます。(だから醜くしろって
 わけでもないんだが☆)
・複数敵を同時に攻撃する方法がほとんどないから、とにかく地道に片っ端から
 叩いていくのみ。一対一の戦闘でも楽しければいいんですが、この作品ではた
 だの作業になりがち。「あの位置まで動いて、ひとつずつブッつぶしていけば
 勝てる」のはわかるんですが、考えただけで疲れてしまいます。戦う楽しさが
 感じられません。敵を多く出すことによって、やりがいが出るのは確かですが、
 ただ出せばいいというものではありません。プレイヤーを苦労させるなら、そ
 の苦労を耐え抜ける楽しさ(または耐え抜いた後の喜び)が、どこかに必要な
 のです。

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 プレイ中、あまりに「あ〜もう、うざったいっ!」と感じる局面が多かったの
で、「このゲームの開発者は“プレイの快適さ”という点をあまり考慮してない
んじゃないか?」としばしば思いました。工画堂スタジオ制作だそうですが、そ
れを聞いて、ひとつ考えたことがあります。確認したわけじゃないので、あくま
でも推理にすぎないのですが……ひょっとしてこの作品を制作した方たちという
のは、パソコンゲームを作り慣れた人たちなのではないでしょうか。
 パソコンゲームには、解像度の高い緻密なグラフィックや、非常にきれいに聴
こえる音楽(音源が高級ってことじゃなくて、モニターのスピーカーから流れて
くる音の響きが大変良い、ということ)などの魅力があります。そして「自分は
今、パソコンでゲームしている!」という、ある種の充実感があり、美しい絵と
音に触れているだけでも結構な満足感が得られ、多少のかったるさは我慢できる、
というメリットがあります(もちろん、パソコンゲームのなかにも内容(ゲーム
性など)でプレイヤーを引きつけるものはあるでしょうし、かったるくない作品
もあるでしょう。でも、パソコンゲームというのは「絵」と「曲」と「高級感」
の3要素に、かなり助けられている面があると思うのです)。

 で、そういう恩恵のあるパソコンゲームの場合と同じ意識でコンシューマ(特
に、サターンやプレステほどの迫力はないスーファミで)ソフトをつくると、単
調さをカバーしてくれる絵や音の効果がパソコンゲームほど現われないために、
隠れていた「かったるさ」は表面に出てしまう。
 そして、もうひとつ思ったのが、「このゲームはマウス操作ならば、ここまで
かったるく感じないのではないか」ということです(『ルナ・ストライク』には
スーファミマウス対応マークはついていません)。ユニット数&移動回数がかな
り多いこの作品では、ユニット位置へカーソルを合わせ移動先を決定する操作を
すべてコントローラーでやるのは、ちょっとつらいものがあります。各ユニット
に別個の名前がついているタイプならまだ、行動方法の違いを楽しんだりできる
のですが、そういう魅力が薄いから間がもたないし、攻略法も単調です。開発時
にこの「かったるさ」に気づけない原因は、「マウスでプレイするパソコンゲー
ムを作り慣れていて、つい同じ調子で作ってしまった」あるいは「テストプレイ
時にパソコンとマウスを使用していた」のどちらか(または両方)ではないのか
なぁと、想像するわけです。そう考えるなら、この作品の「かったるさ」も多少
は、納得いく気がするんですね。

 いずれにせよ、この作品は私にとって楽しむどころか、苦痛ですらある内容で
した(シリーズ続編であることを抜きにして見ても、です)。司令官のレベルア
ップという要素は難易度調整の役割もあるのでしょうが、『ルナ・ストライク』
がパズル的面白さを持っていない点をカバーする(悪く言えば、ごまかす)ため
のものに見えてしまいます。面倒だけど、とりあえず戦ってれば強くなっていく
から「ま、いっか」と思ってもらえるかな……というような甘さを感じました。

 人間のキャラクターを導入したのは、雑誌記事での見栄えがいいせいもあるで
しょう。商品である以上、利益にならなきゃしょうがないのはわかります。機械
的ユニットが多く、見た目が地味ですから、このシリーズは。でも、その無機質
性を私は気にいっていたし、中身が面白いことも、わかる人はわかってくれてい
たはずです。だから、個性を失ってまで、安易な方向へ流れてほしくなかった。
8機編制を1ユニットとする従来のシステムは、リアリティという点からすると
不自然かもしれません。ユニットの大小にかかわらず、どうしてすべて「8機で
1ユニット」なのか。どうして、修理すると破壊された機体が補充されるのか。
不思議といえば不思議です。けれど、それでじゅうぶん面白く魅力的なシステム
だったのです。
 今回、戦闘シーンの魅力が著しく低下したのは、このシステムを切り捨てて、
すべてHP表示にしたことと、同時攻撃(敵と味方が一斉射撃する)の緊張感が
なくなってしまったせいだと思います(「破壊したはずのユニットから反撃を受
けた」ように見えるのはたぶん、「実際は同時攻撃なのだが、攻撃グラフィック
がそうなっていないため、同時に見えない」ってことなのでしょう)。何機生き
残るかを、かたずをのんで見守るスリルがなくなっちゃったんですね。わずか数
機で命からがら、ドックへ逃げのびようとするギガントを狙う敵。「頼む、当た
るなよ……。よぉしっ、偉いぞ!」。残り数匹のハンターに味方のユニットが全
滅させられたときなどは「やはりハンターは侮れん」と悔しがる……そういう興
奮がないんです、『ルナ・ストライク』には。シリーズを特徴づける個性が消え、
新たな魅力も生みだせない戦闘シーンには、いちいち見るだけの価値がなくなっ
てしまいました。

 できればシリーズの個性を大切にしてほしかった。そして、変えるなら変える
で、ゲームとして、もっと楽しめるものを作ってほしかった。この程度の奥の浅
い人物描写なら、ないほうがよかった。ユニットのアイデアが尽きてきたのなら、
別に新しいユニットでなくたってかまわない、旧シリーズ作品のユニットを使用
して中身を練り込んだ「マップ集」的作品でもいい。いつか、初代『ネクタリス』
の面白さをよみがえらせた新作が出ることを、切に願います。


'96 9/5 NIFTY-Serve FCGAMEM
     ファミコン&スーパーファミコン会議室 #25903(改稿)
                  (登録日 '96/11/13)
ソフト発売1996年7月備考なし