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【プレイステーション2】
『ファイナルファンタジーXII インターナショナル
ゾディアックジョブシステム』
発売日 2007年8月9日
メーカー スクウェア・エニックス メーカーホームページ
内容  2006年3月16日に発売されたFFシリーズ12作めの、英語版。 
 コマンドRPG。特典DVD付き。

■見ごたえあるムービー・芸術的グラフィック

FF12には飛空艇で活動する「空賊」が登場する。
FFシリーズには飛空艇があるから、空賊というのは良い設定。船を造るの
は比較的簡単だが、飛行機は技術がないと難しい。だから現実世界には空賊
がいない。ファンタジー世界なら、ありうる。

何度も訪れる王都ラバナスタは、多くの人々が活動する街。
街の人「全員に」セリフが用意されてるのが今までの多くのRPGだったが、
FF12では「顔マークがついているNPC以外とは話をしない(セリフが
ないNPCも多々いる)」。現実的。話したくない人だっているだろうし、
用もないのに話しかける方が不自然だ(全員に話しかけてたら、プレイヤー
も大変)。
少ない人数だと、にぎわっている大きな街という感じが出ない。一般的なR
PGの街は、全員に話を聞くのが大変だからという理由でか、そんなに広く
なく、人数も少ない。FF12では広くて人の多い街を描写しつつ、セリフ
量を制限している。ナイス省略である。

3Dゲームグラフィック特有の冷たい表情にならないよう、人物の顔部分が
手描き絵画のように、顔だけ筆で塗って描かれてるようなタッチ。動く油絵。
3Dゲームキャラクターは顔がカタいというか、人間のやわらかな肌の質感
が出にくいものだけど、良い意味での泥くささが出ている。
背景には重量感があり、精密に描かれている。
召喚獣のド派手攻撃シーンも迫力。
ヒュム(人間)、人とモンスターが混ざったような亜人、バニーガールのよ
うな格好のヴィエラ、FFマスコット・キャラクターのモーグリなどの種族
が描き分けられた、飛空艇技術の発達した独特のファンタジー世界。
人物・背景、どちらも魅力あって、ていねいに描かれた良いグラフィック。
かなり高レベルの画力だ(特に最初のムービーがとてもいい)。
光・炎など、物質でないものの鮮やかな表現、クリスタルの質感が美しい。

この『インターナショナル』は、日本語版FF12を英語版として作り直し
た新バージョン。
セリフに英語音声が入り、洋画のような雰囲気。なかなかカッコいいのだが、
英語に堪能な人以外は英語を理解しきれないので字幕文字を読むことになり、
意味の把握が遅れる。字を見ていると、画面(グラフィック)を見る余裕も
少なくなる。
日本語版は日本人声優の声でしゃべるので聞き取りやすいし、アニメ・ファ
ンのプレイヤーには日本語版の方が合っていると思う(外国人声優も雰囲気
は出ているが、日本人声優ほど個性が強くない)。

サブタイトルの「ゾディアック・ジョブ・システム」は、キャラの成長状態
をあらわす「ライセンスボード」(FF10のスフィア盤のようなもの)を
12星座にあてはめたデザイン。1キャラクターにどれかのジョブ(星座)
をセットして能力を伸ばす。
(このジョブシステムは各キャラの役割はハッキリするが、キャラ絵のイメ
ージと合ってないので雰囲気が出ない。武器はジョブ由来のものなので武器
だけはジョブらしさが出るが、他の装備はグラフィックに反映されない。
シーフのような格好で白魔道士だと言われても、そう見えない)

■自動行動が楽な「ガンビット」システム

戦闘やアイテム・魔法使用などは「ガンビット」という自動行動システムに
よって、プレイヤーのコマンド操作をできるかぎり省いてある。移動してい
ると敵がいて、自動で接近し、戦い始める。プレイヤーはピンチの時だけ補
助的にアイテムや魔法を手動コマンドで使い、問題ないなら後は眺めるだけ。

仲間キャラクターが自動で戦闘してくれるAI(人工知能:コンピュータ・
キャラが自律思考しているかのように自動で動く)は、古くは『ドラゴンク
エストIV』(1990年発売)で使われていたが、あれは基本行動方針を一言で選
ぶだけだった(回復優先の「いのちだいじに」など)。FF12では言葉の
組み合わせによって行動パターンを1キャラ最大12個まで登録できる。
「主人公だけ手動」ではなく、全員自動行動。

ガンビットで指定しておくと、コマンド操作の面倒くささが減って、楽。
自動でアイテムを使ってHPや状態異常を回復してくれたり、防御魔法をか
けてくれたりする。
うまく自動にできると快適。戦闘中だけでなく、移動時にも自動で動く。
自動だと、複数メンバーの行動が同時にできて時短。手動コマンドだと一人
ずつの実行だが、ガンビットはスピーディ。「●●の場合」、「▲▲する」
という発動条件を満たした時点ですぐ(優先順に)行動してくれるので速い。

自動で動きすぎるとプレイヤーが動かす余地が減って面白くないのでは、と
いう気がしないでもないが、傍観ばかりではなく、強敵戦では忙しい。
通常戦は放っておいてもいいが、強い敵の場合は手動じゃないと負ける。
時々、強すぎる敵に倒されてしまって、かなりやり直しになる。通常、コマ
ンドRPGだと、それほどやり直すことはないのに(ボス戦で負けるくらい
で)。ゲームオーバーになると戦闘経験値と入手アイテムがパアになるだけ
でなく、ライセンスボード・ガンビット・装備の変更がやり直しになってし
まう。
ボス戦前などではセーブポイントが近くにあって安全だが、普通に歩いてい
て「非常に強いレアな敵」に遭遇することがある(物語のボス敵より強かっ
たり)。そこでゲームオーバーになりやすい。緊張感はあるが、セーブ状態
によっては、かなりやり直さなければならないので要注意だ。

■欲を言えば……

大変良い出来のRPGだが、戦闘画面のカメラワークに動きが少ないのが残
念なところ。戦闘フィールドの切り替え無しで戦闘開始・終了するのは確か
に速くてスムーズなのだが、離れた後ろからカメラを回して追い続けている
ような、平凡で単調な遠景構図が続く。基本的に「後ろ向きの小さめ全身姿
メイン」。
ボス敵の姿も、ところどころムービーに切り替わってアップになることもあ
るが、小さめ表示で構図に変化が少ないのは同じ。

シームレス戦闘(移動していると、そのまま戦闘になる)はアクションゲー
ムの手法。アクションゲームの場合は動きやエフェクトが派手だが、コマン
ドRPGだと動きが少なく、やや地味。
戦闘フィールドに切り替える方法と比べると、ドラマチックな構図感が薄れ
る(ムービー以外で顔などがアップにならない)。
キャラクターが正面アップになり、派手な動画で次々に展開する「ミストナ
ック」(制限時間付きでアクション風味なのが面白い)という特殊攻撃技は
ダイナミックだが、TVアニメで毎回クライマックスの変身シーンだけ同じ
セル画を使い回す手法と同じで、少々ワンパターン(1キャラ3種類あるの
でサンパターン)。ミストナック以外の場面で戦闘の躍動感がない。

自分でカメラ視点を動かすことはできるが、それは普通に動かしているだけ
で迫力はない。味方や敵が戦ってる様子をアップでも見られる方がいい。
ムービーだけでなく、戦いの場面でのアップもある方がいい。
漫画やアニメのようにアップとロングを使い分けてメリハリをつける方が画
面が活き活きする。距離的に遠いと、プレイヤーの感情移入度もダウンする。

構図的な変化もないが、通常戦闘では戦闘曲の変化もなく、フィールドのB
GMがそのまま流れ続ける(ボス戦はボス戦用の曲があるが)。
短い通常戦闘でいちいち切り替えていてはテンポが悪くなるから略されてい
るのだろうが、時間がかかるモブ戦(討伐依頼が出ている強いモンスター)
の場合でも、その場所のBGMが流れ続けるのは違和感。
勢いのある曲ならいいが、おとなしい曲だと盛りあがる場面に合わない。
RPGの楽しみのひとつは戦闘曲のノリの良さであり、戦ってる!感じを味
わいたい。その演出に、いい戦闘曲は欠かせないものだ。
(オンラインゲームの『ファイナルファンタジー11』も似たような自動戦
闘システムだが、あっちはちゃんと戦闘曲に切り替わるし(切り替わらない
場所も少しある)、戦闘時にキャラクターサイズが大きめになるので敵がよ
く見える。接近しすぎると背の高いモンスターは顔が上部で切れて見えなく
なるが)

大作と呼ぶにふさわしい貫禄はあるが、もう少し練りこめたような気もする。
各地にいる強い敵を討伐する依頼をこなすとランクが上がって、より強い敵
討伐の依頼が入るようになったり、店の品ぞろえが変化したりするのは、ゲ
ームの先へ引っぱる良いシステム。
しかし物語が「もっと続くのでは?」と思うくらい、ややアッサリぎみに終
わるため、ゲームのボリュームに対して物語量・キャラクター描写が不足し
ている感がある。
(描写不足を補うためか、DSで続編『FF12レヴァナント・ウィング』
が発売された)
まだやるべきことが多々あるのにエンディングになってしまった。やり残し
たことが結構多い。
手間のかかった豪華なグラフィックと自動行動してくれるシステムで、贅沢
気分を味わえるRPGである。(食べ残しが多いという意味でも)

(HP登録日 2015/12/21)
ソフト発売2007年8月備考裏話

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