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【プレイステーション】
『バイオ ハザード』
<BIO HAZARD>
発売日 1996年3月22日
定価 5800円
メーカー カプコン(→メーカーHP
内容  館の中を探索するサバイバルホラー・アクションアドベンチャー。

■「怖いけど、おもしろい」。古びた洋館からの脱出

『バイオハザード』は、現在ではとても名の知られたホラーゲーム。外国人
キャストで映画にまでなっている。売れているゲームには、何らかの魅力が
ある。きっと、おもしろいのだろう。だが私は長らく、このシリーズをプレ
イしようとしなかった。数年前、弟に勧められてプレイしてみた時も、序盤
でやめてしまっていた。なぜか? 「おもしろくなかった」からではない。
私は、怖いものが苦手なのである!

バイオといえば、ゾンビ。腐った人間の死体が動き、まとわりついてきて、
生きている人(プレイヤー)を食べようとする。これだけでもう怖くて気色
悪くて、ゲームをやめたくなってしまう。
アクション系ゲームはプレイしていて疲れやすい。しんどいゲームは後回し
にして、ついつい、楽なゲームを選んでしまっていた私。RPGのレベル上
げはのんびり気楽に出来るが、アクション系ゲームは多くのエネルギーと集
中力を必要とする。そこへ、さらに「恐怖」というスパイスが加わった、生
きるか死ぬかのサバイバルホラーゲーム『バイオハザード』は、プレイヤー
にかなりのストレスと緊張を強いる。

このゲームは移動画面には一切、コマンドやキャラクターステータス類の表
示がない。それらの表示はボタンによって切り替えて、完全にメイン画面と
分離させてある。メッセージの表示ウィンドウも出ず、セリフなどは洋画の
ように日本語の字幕と英語音声のみ。というのが意外に新鮮だ。
アクションゲーム画面のように見えるが、扉を開けたり階段を上り下りする
のにはボタンを使用する。また、移動は構図がどのように変わっても、
「前進は方向キーの上、後退は下、右回転は右、左回転は左」と、固定され
ている。
方向キーでキャラクターを移動させるゲームでは、方向キーを押すと、押し
た方向へ動く形式のものが多いが、このゲームは場面によって上下左右の配
置が変化し、進行方向が変わる。が、押す方向キーは同じ。アクションのよ
うに見えながら、アドベンチャー的な操作方法なのだ。

最初は、ややこしそうな操作方法だなと思ったが、慣れれば、それほど、や
やこしくはない。ただ、視点の変化が目まぐるしい。少し移動するごとに画
面が切り替わり、そのつど、構図も変化する。上から見下ろしたり遠近をつ
けたり、カメラワークが映画のよう。主人公の視点を画面の中心にすえ続け
る3Dダンジョン方式だと、視点がほぼ一定で構図に変化は少ないが、この
ゲームではプレイヤーキャラクターのサイズや位置がひんぱんに変化する。
一定方向だけを見ていればいいのではなく、場所によって注意すべき方向が
変わってしまうことが、不安定な緊張感を生みだしている。

嫌な雰囲気の曲が流れる、重い空気で支配された館の中を、ひとりで(時に
は仲間と)探索して回る。生き残るための手がかりを求めて。恐怖をテーマ
にしていても、「おばけだぞ〜」的なショッキング映像ばかりを多用してい
ない。「何か起こりそう」と警戒させる、不安定な画面構図が非常に効果的
に作用しており、じっとしているだけでも圧迫されるようなプレッシャーが
ある。館という舞台装置が、モンスターへの恐怖を倍増させているのだ。

そういった背景描写の秀逸さ以外に、このゲームを面白くしている要素のひ
とつは、「セーブ回数が限られている」という点だろう。セーブするにはセ
ーブ用アイテムを入手し、セーブポイントまでたどり着かねばならない。
セーブするための場所があるシステムのゲームでは、通常、何度でもセーブ
しに行けるため、ゲームオーバーになっても「かなり戻ってやり直しになる」
ことはあまりない。しかし、このゲームでは、セーブの場所はあるものの、
気軽にセーブできない。セーブ用アイテムを使いきってしまったら、新しく
見つけるまで、セーブできなくなるのだ。

武器の弾薬や回復用アイテムの数も限られており、出来るだけダメージを受
けないよう慎重に進んでいかなければ、すぐに死亡してしまう。アイテムの
数に余裕はない。ムダ使いは許されないのである。
セーブ回数の制限は、「アイテムを使いきってしまってクリア不可能になっ
た状態でセーブにしないようにするため」と、「アクションの臨場感を損な
わせないため」の、うまい工夫と言える。セーブしてからのプレイ時間が長
くなるほど、「失敗してもロードしてやり直せばいいや」という甘えは断ち
切られるからだ。

難易度は2種類あり、「ハード(HARD)」は男性キャラ、「イージー(EASY)」
は女性キャラがプレイヤーキャラクターとなる。それぞれ話の展開が違うた
め、別のルートで攻略できるのがいい。イージーでもかなりの手ごたえがあ
る。まずは、アイテム所持可能数が多いイージーから始めて、クリアしたら、
ハードに挑戦。その頃には操作にも慣れ、館の全体図と話の展開もだいたい
わかっているので、最初のプレイよりは安心感が出る。その差が、男性と女
性の心理的違い(男性は女性よりは落ち着いている)の、自然な演出となっ
ている。
アクションとアドベンチャーが混合していて、敵と戦うアクション部分と、
アイテムを集めて仕掛けを解くアドベンチャー部分が交互に訪れる。純粋に
アクション部分だけだったなら、ほとんどずっと戦闘の連続であるため、プ
レイヤーの集中は維持される。常に気持ちを張りつめていれば、敵の出現に
も、そうビビることはない。
しかし。
ふいを突かれた時、人は本能的に驚く。
このゲームは、戦闘シーンと非・戦闘シーンの緩急のつけ方がよく工夫され
ているので、プレイヤーは「決して驚くまい」と思っていても、びっくりし
て思わず声をあげてしまうのである★

ゴルフというスポーツでは、コースにある障害物のことを「ハザード」と呼
ぶ。『バイオハザード』は、死の場所から脱出しようとするプレイヤーを、
逃がすまいとして邪魔してくる。アクション部分よりアドベンチャー部分の
難易度の方が高く、仕掛けがかなり凝っているので、いきづまる人も少なく
ないだろう。が、その難しさこそが楽しい。最初の苦手意識さえ振り払えば、
閉じ込められた恐怖の中に身を置く苦しさよりも、難関を突破していく過程
の面白さの方がまさる。サスペンス小説を読んでいる時のような良質の恐怖
感覚を、この作品は与えてくれる。
(「まぐまぐプレミアム」発行(2004.4.13)・
有料メールマガジン「巴かずみのゲームソフトレビュー(有料版) Vol.19」改稿)
(HP登録日 2004/8/6)
ソフト発売1996年3月備考なし

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