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【プレイステーション】
『ファイナルファンタジータクティクス』
<FINAL FANTASY TACTICS>
発売日 1997年6月20日
定価 6800円
メーカー スクウェア(→メーカーHP(現・スクウェア・エニックス) )
内容 高低差のあるマップで戦うシミュレーションRPG。

■シミュレーションRPG版『ファイナルファンタジー』

 クエストのシミュレーションRPG『タクティクス・オウガ』のシステム 
に、スクウェアのコマンドRPG『ファイナルファンタジー』シリーズの世
界観と素材を加えて作られたのが、この『ファイナルファンタジータクティ
クス』だ。
 両作品が備えていた、気配りのゆき届いたシステム設計と操作性の良さ、
品のある絵と音、洗練された抜群のセンス、ていねいな作りなどの長所は、
この作品においても継承されている。競馬の世界で言えば、レベルの高い2
作品から生まれたサラブレッド。両親はすばらしいのに子供はパッとしない
ケースも世の中にはあるが、「親の七光」で中身が伴わない、なんてことは
ない。FFTは、両親の名に恥じない、優秀な子供と言っていいだろう。
 『ファイナルファンタジー』シリーズと同じ要素が多いので、FFをプレ
イしたことのあるプレイヤーは、すでにアイテムやジョブなどの内容をだい
たい知っている。そのぶん、アイテムや魔法の名称・効能等を覚える負担が
減るため、この作品は、人数の多いFFユーザーをシミュレーションRPG
というジャンルに呼び込みやすい利点を持っている。FFのマスコットキャ
ラクター「チョコボ」を仲間にして一緒に戦えるのは、特に女性FFプレイ
ヤーに受けが良さそう。
 戦闘は、すぐに全体が見渡せるほどの小さな立体マップ上で、複数ユニッ
トが人形劇のように動いて戦う形式。ちまちましていて迫力にはやや欠ける
が、キャラクター動作の芸がこまかく、術などの展開も鮮やかで魅力的。

 FFには、「アクティブ・タイム・バトル」というリアルタイム戦闘シス
テムがある。FFTの戦闘はリアルタイムではないが、キャラクターが行動
するターンの順番で時間の経過を表現している。呪文を唱えだしてから時間
差で魔法が発動したり、キャラクターが倒れてから3ターンで、クリスタル
や宝箱に変化して完全消滅したりする。倒れたキャラクターに「3」「2」
「1」とカウントダウン表示がつくので、ゼロになるまでに生き返らせなけ
れば、という緊張感が生まれる。こうした時間表現方法は面白い。
 箱庭セットのような狭いマップは登場ユニット数が少ないので、戦闘開始
が早い(敵のいる場所まで長々と移動しなくてすむ)。しかし簡単にカタが
つくかと思いきや、結構な手ごたえの難易度。時には、仲間が消滅して変化
したクリスタルを得て、生きのびなければならないほどの苦戦に追い込まれ
る。完全回復できるクリスタルは、戦況を一変させる力を秘めているのだ。
 装備やユニットの配置、ジョブ&アビリティの種類によって、同じステー
ジでも難易度が違ってくる。有効な編制と各ユニットへの的確な指示が、プ
レイヤーの腕のふるいどころだ。バランスの良いジョブ&アビリティの装着
が大切になる。戦士や召喚士など、いくつものジョブに変更し、いろいろな
特技を身につけて強くなっていく。アビリティの種類がかなり多いので多彩
な行動をとれるのがいい。
 セレクトボタンを押せばすぐに各コマンドやステータスの説明を呼び出せ
る機能、物語シーンの再生機能、プレイしてきた足跡がデータベースとして
順次蓄えられていくシステムなどは便利。システム要素がかなり多いゲーム
だから、わからない部分を調べるために、いちいち説明書のどこに説明が載
っているか探すのは面倒だし、人間関係や今までの状況の詳細を読むことに
よって、全体の流れを把握しやすくなる。また、待機メンバーを有効に働か
せて経験値や資金を得る「儲け話」、ゲーム世界の奥行きを深める「秘境・
財宝」の発見、ちょっとしたサウンドノベルなど、戦闘以外のお楽しみ要素
もたっぷり。
 グラフィック・音楽・ゲームシステムの出来は大変すばらしい。が、戦闘
システムのボリュームに、物語の長さが見合っていない気がした。描写不足
(特に後半は急ぎすぎ)な部分もあるので、もう少し粘り強いストーリー展
開を望みたかった。ジョブ&アビリティの種類が非常に多いため、一部しか
使いこなせないうちにゲームクリア(物語が終了)になってしまう。ごちそ
うを食べきれず、残した時のような気分になる。とは言え、やりこみがいが
あり、クリアまでに時間のかかるゲームなので、じっくりシミュレーション
RPGをプレイしたい人に、おすすめの一本だ。
(「まぐまぐプレミアム」発行(2003.11.13)・
有料メールマガジン「巴かずみのゲームソフトレビュー(有料版) Vol.14」改稿)
(HP登録日 2004/7/30)

ソフト発売1997年6月備考なし

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