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【プレイステーション】
『ブレス オブ ファイアIV〜うつろわざるもの』
<BREATH of FIRE IV>
発売日 2000年4月27日
定価 5800円
メーカー カプコン(→メーカーHP
内容 RPGシリーズ第4作め。

■物語は、ひとつの出会いに向かって進んでいく−−

 『ブレス・オブ・ファイア』シリーズには、ひとつの特徴がある。
主人公は「リュウ」という名前の少年。
羽を持つ少女の名前は「ニーナ」。
主人公とヒロインの名前が毎回、同じなのである。
 同じキャラクターを使った続編ではなく、前作のキャラクターの子孫でも
ない。名前は同じだが1作1作、キャラクターと世界とストーリーが異なる。
同じ名前でもそれぞれ違うキャラクターであり、毎回違った物語がつむぎだ
される。こういうシリーズを、私は他に知らない(毎作ごとに登場キャラク
ターが違うシリーズは多いが、名前はまったく別のものになる)。
 ひとつの時代を生きたキャラクターが、別の世界に(同じ名前で)生まれ
変わり続けているような感覚(難しい言葉で言うと「輪廻(りんね)・転生」。
松任谷由実の名曲で言うと「リ・インカネーション」)。1作ごとに、「今
回は、どんなリュウ&ニーナだろう」と思いつつ、物語に入り込んでいく。
 4では、リュウの他にもうひとり、フォウルという名のプレイヤーキャラ
クターが存在する。リュウとフォウル、2人の行動が交互に描写され、プレ
イヤーはその両方を体験していく。
西部劇で、2人の男が同じ位置から背をむけて逆方向に歩き出し、数歩進ん
だ後、クルッと振り向き、相手に向かって銃を抜き放つ−−。
そんなイメージのストーリー。
「2人が出会った時、一体、どうなるのだろう?」と、プレイヤーに思わせ
る設定&展開が良い。

 前作同様、大変ていねいに作られているが、今回はグラフィック面で気に
なる点がいくつかあった。

(1)竜が竜らしく見えない

何種類かの竜が登場するが、「これが竜? 別の生き物みたいだ」と思って
しまうデザインのものが少なくない(竜らしいデザインの竜もいるが)。竜
(ドラゴン)は架空の生物なのだから決まったデザインがあるわけではない
し、見慣れたデザインでないのは作品の個性にもなるが、一般的なドラゴン
のイメージからすると、やはり多少、違和感がある。ドラゴンと言うよりは
恐竜のような感じなのだろうか(恐竜は姿形が全然異なる、いろんな種類が
いるから)。

(2)3Dマップが見づらい・移動しづらい

特に、建物がある町の中が、きゅうくつな感じ。道の幅が狭いので、入るつ
もりのない場所へうっかり入ってしまい、再度、元の場所へ戻らなくてはな
らないことが何度かあった(そのたびにCDアクセスするので、ちょっとイ
ライラさせられる)。気を使って操作しないといけないのはストレスがたま
る。もう少しゆとりある設計でもよかったのではないだろうか。このシリー
ズは「のびのびした表現」が持ち味だと思っているので、狭苦しく感じた。

(3)全体マップやフォントデザイン・配色などが、PS『ファイナルファ
ンタジータクティクス』(スクウェア)に似ている

『ブレス』シリーズはカプコンを代表するRPGなのだから、「あの作品に
似てるな」と思わせてしまうデザインではなく、すべての要素においてオリ
ジナルを目指してほしい。

■物語構成のメリットとデメリット

 「その場所&その状況のためだけに作られたミニイベント(ミニゲーム)」
は、なかなかユニーク。それらをクリアしながら、「伝承師」が与えてくれ
る課題を目標にして力をつけ、旅はゆっくりと進んでいく。スピード感に欠
ける気もするが、じっくり世界を味わいつつ旅するための仕掛けは、あれこ
れ用意されている。仲間と連携して、より大きなダメージを与える「コンボ
攻撃」は、何コンボ出せるかの記録を狙うのが楽しい。
 ただ少々、たんたんとした(悪く言えば)単調なテンポになっているのは、
後に待つであろう「リュウとフォウルの出会い」という大きなクライマック
スを意識しすぎて、それまでの道中のエピソードがあまり盛りあがらないよ
うに感じるためだろうか。例えるなら、「かなり重要な人に会う予定が何日
か後にある。当日まで、そのことが気になって、他の仕事が手につかない」
時のような気分だ。
 リュウたちがイベントをクリアしても、いまひとつ達成感が弱い気がする
のは、フォウルの存在が常に頭から離れないせいかもしれない。彼に比べた
ら、自分たちは−−弱い。弱すぎる。と言うより、フォウルが強すぎる。力
の差を見せつけられているから、いくら強くなっても強くなった気がしない
のである。
 フォウルの強さを目の当たりにし、「あんな強い奴と出くわすことになる
のか? 攻撃してきたらどうするよ? レベル、全然違うじゃん!」という
不安を常にかかえつつ、進んでいかなくてはならないのだ。
 リュウとフォウルはどちらも、ドラゴン形態に変身して戦える。この2人
の対比が、ブレス4の見どころ。プレイヤーは、圧倒的な強さのフォウルに
比べると、まだ力不足なリュウを育てていく。仲間と協力して戦い、レベル
を上げていく。フォウルのレベルに少しでも近づけるように。
 運命の流れに動かされ、磁石のように引きつけられて、出会わざるをえな
い2人。
 2キャラクター分離操作の進行は、1キャラクターの場合よりも主人公へ
の感情移入度が多少薄まるデメリットがあるが、面白い構成の物語である。
(「まぐまぐプレミアム」発行(2003.10.13)・
有料メールマガジン「巴かずみのゲームソフトレビュー(有料版) Vol.13」改稿)
(HP登録日 2004/7/7)

ソフト発売2000年4月備考なし

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