安定した力量を感じる、良質RPG
機種がスーパーファミコンからプレイステーションになって、グラフィッ
クが一段と良くなった。キャラクターの仕草が非常にこまかく描かれていて
味わい深い。ビジュアルの見せ方やイベント内容、敵キャラの攻略法など、
いろいろなアイデアを随所にちりばめた繊細なつくりだ。種類ごとにアイテ
ム欄が分類されているシステム画面も使いやすい。快適な操作性である。
今回は、画面が切り替わることなく、歩いているとそのままその場で戦闘
に入る。状況によって敵と味方の位置どりが四方に変わり、その場所の背景
グラフィックが戦闘背景となる。毎回の戦闘画面の背景と構図に変化が生ま
れ、印象がワンパターンにならない。戦闘終了後はすぐに歩き出せるので、
移動への復帰もすばやい。さまざまな種類の声が入るようになったことで、
戦闘時のキャラクターがとても活き活きしている。
この作品のキャラクターたちには、どこか野性味があって好きだ。お上品
に宿屋に泊まるゼイタクを避け、無料の野宿をする。野宿の方が自由な旅を
している感じが出るし、いちいち宿屋まで戻る面倒くささもない。キャンプ
すると、仲間のセリフを聞くことができて親しみがわく。
フィールドは全体マップと拡大マップで構成され、入り組んでいる。目的
地へ到着するまでに結構迷う。次にどこへ行けばいいのか明確に指示されな
い時もあり、あちこち回って目標を見つけださなくてはならない。前作では
道中の戦闘量がかなり多くて忙しかったが、今回は全体マップ上では基本的
に敵が出ず、「!」マークが出た時にボタンを押すと、戦闘画面へ移動する。
フィールド上では最低限の戦いだけで済ませられるようになっているのだ。
好きな時に好きなだけ、現在の自分たちの強さに見合った敵と任意で戦える
この方式は、「弱い敵でも(わずかな経験値&お金と引き換えに)強制的に
戦闘へ突入させられる」という、従来のRPGが持つストレスをやわらげて
いる。必要以上に戦闘に邪魔されることなく、ゆっくりとゲーム世界の空気
を呼吸でき、フィールド上をのびのびと歩き回れるのが良い。それでいて戦
闘にはちゃんと手ごたえがあり、ボス戦では「戦闘不能になって復活するた
びにHPの最大上限値が下がり、どんどん不利になっていくペナルティ」が
つく。「倒れてもすぐ復活できるから、いいや」などと安心しているわけに
はいかず、出来るだけ戦闘不能にならないようにしなければならない。その
ため、戦いに緊張感が生じる。
戦闘不能のまま戦闘終了すると、HP上限値は減少したままだ。これはキ
ャンプでは回復できない。本来の数値に戻すには宿屋に泊まるしかない。ち
ゃんとベッドで眠らないと疲れを完全にとりきれないという、納得の設定。
もしこのルールがなければ、わざわざお金を出して宿屋に泊まらないだろう。
野宿システムがあるせいで宿屋という設備を無意味にしないよう、ちゃんと
考えられている。
欠点らしい欠点が見つけられないくらい、システム・物語ともによくまと
まっていて質も良い。あえて気になる点を挙げるなら、途中のミニゲーム的
イベント部分が少々、いきづまりやすいことだろうか。苦労しただけあって
突破できた時の喜びはひとしおなのだが、コツが要るから、人によっては挫
折しかねない。それと、実益をかねた釣りゲームやミニ育成シミュレーショ
ン、竜変身の組み合わせ研究、キャラクターの成長具合が変化する「師匠」
システム、敵の技を習得する「見る」コマンド、属性攻撃を予防する注射な
どのアイデアは面白いのだが、いまひとつ活用する必要性が薄い。プレイヤ
ーが積極的に利用しないと、せっかくのアイデアがあまり活かされないうち
にゲームが終わってしまう。もっと物語の展開にからめて、使う機会を多く
したらよかったと思う。しかし全体的には、細部までていねいに心をこめて
仕上げられたつくりに、とても好感が持てた。楽しめる作品である。 |