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【プレイステーション】
『ONI(オニ)零〜復活』
発売日 2001年3月22日
定価 1980円
メーカー パンドラボックス
内容  隠忍(鬼(オニ))と呼ばれる種族が転身(変身)して悪と戦う、 
 和風コマンドRPG。パンドラMAXシリーズVol.6。

■低価格の限界への挑戦
 『ONI』シリーズは、ゲームボーイで5作、スーパーファミコンで2作
発売されたRPGシリーズ(発売はバンプレスト)。この『ONI(オニ)
零』は、開発メーカーのパンドラボックスが独立して立ちあげた「パンドラ
MAXシリーズ」の中の1本として発売された(「零(ゼロ)からの出発」
という意味がこめられているのだろうか)。
「パンドラMAXシリーズ」とは!
RPGあり、アドベンチャーあり、笑いあり、サスペンスあり。
 ジャンルも内容も異なる新作ゲームを1本1980円の低価格で提供しよ
う(それでいて、高品質も維持しよう)とする、スゴいシリーズなのである。

 発売後、しばらく経過したソフトを値下げして再発売する廉価(ベスト)
版とは違い、最初から低価格の定価で新作を発売する。こういったプレイス
テーションの低価格ソフトには、D3パブリッシャーの「シンプル」シリー
ズ、サクセスの「スーパーライト」シリーズなどがある。これらのソフトは、
通常5000円以上するプレイステーションソフトを1本2000円前後で
発売している。内容は、「予算と時間と情熱をあまり注ぎこんでいない」よ
うな簡単な内容のものが多いように見受けられる。期待したほど面白くなく
ても、「低価格なんだから文句を言わないように」という暗黙の了解によっ
て、納得せざるをえない。「あの有名ソフトの真似だ」とわかる、アイデア
だけ拝借してタイトルだけそろえたようなものまである。
 これらのソフトは結構売れたようなのだが、いくら安いとは言っても、短
時間で飽きてしまう内容の薄いソフトばかり出していると、いずれユーザー
に見放されるのではないかと私は思っている。
 そこへいくと、「パンドラMAXシリーズ」は低価格でありながら、赤字
になりそうなほどの労力をかけて作られている(ように見える)。説明書の
最初には、「パンドラMAXシリーズ」の意気込みが語られている。「安い
があまり面白くない」ではなく、「安いが質も良い」ソフトを提供しよう、
というわけだ(「最近のゲームは価格が高いと思いませんか?」と問いかけ
ているが、スーパーファミコンより、プレイステーションの方がソフトの価
格帯は下がっている)。

 ソフトの値段を安くすると、(単純に考えて)メーカーの利益はそれだけ
減る。損ではないのか? しかし、この戦略はソフトの存在感を高める、ひ
とつの方法ではある。
 他のゲームと変わらない値段で競っても、大手メーカーのソフトが有利。
あまり知名度の高くないメーカーやタイトルは、多くのソフト群の中に埋も
れてしまいやすい(いくら内容が良くても、だ)。TVや雑誌に広告を出す
にも費用がかかる。とにかく、少しでも目立たなくてはならない! 少々、
利益を度外視しても、ユーザーを増やすことが先決なのだ。
 そこで「パンドラMAXシリーズ」では、1本あたりの定価をギリギリま
で下げ、ジャンルも内容もバラバラなシリーズの各作品を「PMS」という
連動システムでつないだ。各作品のセーブデータを他の作品に使用すると、
特別なデータを利用できたりするのだ。ちょっとしたおまけ程度ではあるが、
面白い試みではある。
 毎回、メインのゲームの他に、おたよりコーナーやミニアドベンチャーゲ
ームが収録される。こういう形式は、何年か前にPCエンジンで発売された、
ビクター音楽産業の『ウルトラBOX』(ミニゲーム集&PCエンジンソフ
トデータベース収録のCD−ROMマガジンシリーズ)に近い。が、「パン
ドラMAXシリーズ」は『ウルトラBOX』よりも、メインのゲームに重点
が置かれている。

 この『ONI零〜復活』に関して言えば、定価1980円(イチキュッパ)
の価値は充分にある。2980、もっと作り込めば3980円でもバチは当
たらない内容である。「パンドラMAXシリーズ」の中では一番の目玉商品
だろう。
手抜きなく、きっちり描きこまれた背景。
魅力あるキャラクターたち。
ボリュームもそれなりにあり、グラフィックや音楽の質も良い。
しかし、惜しいことに物語の完成度がいまひとつで、中途半端になっている
(途中まではとても良いのだが)。
 300もの神がいて、いろんな場所に潜んでいる神様を発見していくのだ
が、徳と交換で力を上げてくれる神様&戦闘中に呼び出せる神様以外は、解
放してもしなくてもあまり変わりない。せっかく様々な神様がご登場なさる
のだから、名前だけ出て終わりではなく、有効活用されるような工夫がある
とよかった。
 難易度は低くないので、やりごたえはある。特に終盤は敵がかなり強い。
簡単にはクリアできない。

 ゲームの終わりには「続編が発売予定」とあるのだが、まだ発売されてい
ないようだし、最近、「パンドラMAXシリーズ」が発売リストに出てくる
のを見ない。中途挫折したのだろうか? やはり無理があったのか? 安く
してもあまり売れなかったのか? 現実は厳しいのかもしれない。理想どお
りにはなかなかいかない。しかし、他と違ったことをやろうとする、いい意
味での「目立とう精神」を持ったソフトが出てくるのは、ゲーム業界にとっ
て刺激になるのではないだろうか。
 「パンドラボックスさんも、無茶するよね」などと思われつつ、大変そう
だからがんばれと、思わず応援したくなるような“限界への挑戦”。たとえ
途中で倒れてしまっても(いや、倒れてはいけないのだが)、いちかばちか
の賭けを試みた、その心意気だけは高く買いたい。
(「まぐまぐプレミアム」発行(2004.6.13)・
有料メールマガジン「巴かずみのゲームソフトレビュー(有料版) Vol.21」改稿)
(HP登録日 2004/9/22)

ソフト発売2001年3月備考なし

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