『トップをねらえ! VOL.1』<GunBuster>

発売日 1992年6月25日
定価 6800円
メディア スーパーCD−ROM
メーカー リバーヒルソフト
内容  OVA(オリジナルビデオアニメ)「トップをねらえ!」の 
 第1話・第2話をデジタルコミック化。


 OVA「トップをねらえ!」を観た。はじめて作品のタイトルを聞いたとき、
「これは、あの超有名なテニス漫画「エースをねらえ」をパロった、おちゃらけ
学園スポ根コメディだろう」と内容を予想した。しかし、実際はちがった。ジャ
ンルはSF(サイエンス・フィクション)。地球の存亡にかかわる、シリアスで
スケールの大きい物語だったのだ。
 人間関係の基本設定などは「エースをねらえ!」を模しているが、ちゃんと確
かなオリジナリティを持っている。パワーあふれる迫力ある展開は大変見ごたえ
があり、ところどころで涙まで出た。とてもおもしろかった。最後まで観て満足
し、ビデオテープを巻き戻す。そして、その感動冷めやらぬうちに、このPCE
版『トップをねらえ VOL.1』をやってみることにした。

 まずはオープニングデモ。曲に合わせてのキャラクター紹介。OVAのテーマ
ソングが流れる。OVAと比べて動きが少ないのは、まぁ、しかたない。これが
PC−FXならもっと迫力が出せるのだろうが、PCエンジンのスーパーCD−
ROMでは限界がある。デモが終わり、いよいよゲーム本編に入った。が、しば
らくプレイしていてだんだん耐えきれなくなってきた。どうにもテンポが悪い。
 選択コマンドには正解ルートの他にさまざまな種類があり、主人公がいろんな
行動を起こすのだが、はたから見ると「こいつ、何やってんだ?」と思うような
行動をとるので、シラケてしまう。流れがぎくしゃくしていて不自然なのだ。

 冷静に見ればこの作品は、従来のデジタルコミックとは明らかに一線を画して
いる。ほんのちょっとキャラが動いたりしゃべったりするというレベルではなく、
TVアニメのようにかなりスムースにキャラが動き、よくしゃべる。アクセスも
ほとんど感じさせない。OVAの絵を取り込んでいるらしく、(新たに描きおこ
したものは別として)原作のイメージそのままだ。画像の大きさはTV画面の2
分の1以下なので、やや迫力には欠けるものの、よくやっているとは言える。
 しかし、OVAを観た後ではやはり分が悪すぎる。OVAとゲームではメディ
アの性格、得意分野がちがうことはわかっちゃいるが、シナリオが同じだとどう
しても比べてしまう。海でとれたばかりの新鮮な魚を刺身にしたのがOVAだと
したら、このPCEのゲーム版はその刺身を三日間くらい常温で放置したもので
ある、というのがプレイの第一印象だった。

 デジタルコミックというのは漫画が原作の場合、紙の上のキャラクターが声入
りでしゃべり、動くことが魅力となる。オリジナルストーリーの場合は、作品の
新しい世界を満喫できるのが魅力だろう。この『トップ〜』では、OVAのスト
ーリーを、ほぼそのまま持ってきている。動画ではOVAの迫力にとうていおよ
ばない。それなら、ゲームならではの魅力をうみださなくてはならない。
 そこでこの作品では、ゲームシステムとして「ストレス」というパラメータが
登場する。主人公がOVAとちがう行動を起こすとストレス値が上がっていき、
極限にまで達するとなんとゲームオーバーになってしまう。たとえ何てことのな
い普通の行動であっても、OVAの展開と異なったが最後、失敗の行動となって
ストレス値が増えてしまうのだ。ソフトの寿命を長びかせるためのシステムなの
だろうが、普通のコマンドを選んでるだけなのにどうしてゲームオーバーなんだ、
と納得がいかない。主人公のとんちんかんなリアクションも含めて、残念ながら
魅力をうみだすまでには至っていないように思える。

 驚いたことに、オープニングデモを途中でキャンセルできない。2分弱、まる
まる一番歌うデモを必ず見なければならない。たいていのCD−ROM作品では
ランボタンを押せばすぐにタイトル画面へと飛んでくれるものなのだが、飛ばな
いのである。飛ばせる方法は、なんと裏技の本に載っていた(なぜ、こんな基本
的なことを裏技にするのだ?)。
 ひとつのモードを終了後、いちいち「目次」というタイトル画面を再表示する
のは、よけいなことだと思う。スッとメニューに戻るほうがいい。本編を終了す
るとメニューに戻らずそこで画面が止まってしまうので、他のモードを見るには
リセットして再度立ち上げ直さなくてはならない。そしてそのたび、飛ばせない
約2分間のデモが強制的に流れる。また、セーブ画面で画面右からワクがえっち
らおっちらやって来て、セーブ後、またゆっくりと左へ去っていくのも、じれっ
たい。画面切り替えにもっと快適さがほしかった。

 本編の他に2つのモードがある。「人物紹介」は、3人の主要キャラクターの
簡単な紹介。「効果音集」は、ゲーム中の効果音を聞くことができる。ひとつの
効果音が鳴り終わるまでカーソルを動かせないので、ちょっとイライラさせられ
る。このモードで、ゲーム中の曲やオープニング&エンディングテーマも聴ける
ようになっていると良かった。
 ひととおりクリアすると、目次のメニューにおまけが3つ増える。悪ノリして
いるのが笑える「ボツセリフ集」、正解ルートがノンストップのアニメで流れる
「オールストーリー(約26分)」、ミニ劇場の「番外編」。ボツセリフ集はこの
ソフトならではのもので、貴重だ。オールストーリーはさすがに流れが良い。が、
途中でキャンセルできると便利だった。番外編はあまりおもしろくない。

 OVAと同じ声優が起用されており、このソフトでしか聞けないセリフもある。
セリフ終了時にブツッという音が入ったり、声がくぐもって聞こえにくかったり
するのはマイナスだ。OVAの動画をところどころ切り取って使用しているので、
OVAを観ていない場合、この人物がなぜこんな表情をしているのかわからない
箇所もいくつかある。少々ひとりよがりだ。画面との連動が悪いために、いま誰
がしゃべっているのかが把握しにくい。

 このソフトを 980円で買うのと、ビデオレンタル屋でOVAを借りるのとどち
らがいいかと聞かれたら、私は迷うことなくレンタルを勧める。OVAのおもし
ろさを知っていると、物足りなく思える。コマンドを総当たりしていけば、いず
れは正解に行き当たる単調さ。絵の迫力はOVAに劣り、ゲーム面もいまいちで、
中途半端な感じがする。


'95 2/11 NIFTY-Serve FCGAMEM
     NECゲームマシン会議室 #1918(改稿)
                    (登録日 '97/2/19)
ソフト1992年6月備考なし