『聖竜伝説モンビット』

発売日 1991年8月30日
定価 6800円
メディア CD−ROM
メーカー ハドソン
内容  竜を育て、悪を討つコマンドRPG。


 懇切丁寧なオープニングデモ。よく説明書に長々と書いてあるバックストーリ
ーを、紙芝居風に流してくれる。説明書がなかったとしても状況がよくわかる。
デモにあまり派手な動きは取り入れられていないのでCDの読み込みは少なめだ
し、スーパーCD−ROM用でないわりには、アクセスの長さは気にならない。
敵との遭遇が多いので、戦闘突入〜フィールド復帰のスピードが速いのはありが
たい。

 ストーリー展開や設定が自然だ。悪星の影響で世界が悪に染まる、というのは
じつに納得がいく。他のRPGで、強大な大ボスがひとりいるだけでなぜ世界に
ああもザコ敵がはびこるのだろうと、常々ふしぎに思っていたのだ。
 宝箱を開けるのに、「念波」という、主人公独自の特技を使用するのもいい。
ダンジョンなどにある宝箱はどうして誰にも盗まれずに残っているのだろう、と
いう疑問に対する、納得のいく設定だ。

 導入部分をプレイして第一印象、なかなか親切なゲームだなと感じた。メッセ
ージ文字が大きく、漢字がしっかり使われているので、わかりやすく読みやすい。
システムも便利な設計である。
 が、序盤の戦闘バランスはキツい。ほんのちょっと遠出すると、とたんに強い
敵が出現する。敵からくらうダメージが大きく、こちらの攻撃は効いてない。苦
しすぎる。ほとんど逃げられず、戦闘に突入した瞬間、全滅が確定してしまう。
思わずリセットしてやろうかと思うくらいで、ストレスがかかる。最初に感じた
親切さとはえらく対照的に、いじわるだなと思った☆

 こういう順番で行動すべきだという、見えない「正解」が存在していて、それ
に反すると全滅する。「やっておくべきこと」を抜かして先へ進むと、しっかり
と悲惨な状況におちいる。無理は絶対に禁物だ。「急がば回れ」、慎重さが要求
される。だが、プレイヤーは必ずしも開発者の意図どおり行動するわけではない。
もうすこし柔軟性がほしい。

 敵が前後左右に移動したり、合体分裂したりと工夫されてはいるけれど、おも
しろみの少ない退屈な戦闘に感じる。ゲーム途中からは力押しがきくので、ただ
ボタンを押していれば戦闘が終了していく。ながめていても、あまり楽しくない。
敵や画面のデザインがありきたりで、新鮮さと魅力に欠ける。コマンド入力時に
どのキャラからでも行動選択できたり、途中で1人ぶんだけ選択し直せたりする
自由さはあるが、操作性がもうひとつで、やりづらい。

 持ち物がすぐいっぱいになってしまう。アイテム預り屋がなかなか出てこない
ので苦労する。持てる数は10で、装備関係で5つとり、捨てられないアイテムが
いくつか入ると、もう余裕がない。ダンジョン脱出や瞬間移動の魔法を覚えるの
が遅いのでそのかわりにアイテムを、と思っても持つことができず、後で命とり
となる。「備えあれば憂いなし」の、「備え」がしにくい。

 ダンジョン探索は一度では回りきれないので、何度も出かけては引き返さねば
ならない。そのときにまた同じデモやメッセージが出てくるのはうざったいし、
不自然だ。強制的に負けさせられる戦闘がいくつかあるのも嫌。
 敵に先制される、自爆される、仲間を呼ばれる。自分の攻撃が連続でスカる。
特にこのスカりは回数が多めで、ちょっとイライラする(連続4回もスカったこ
とがある)。静かに血圧が上昇していくのがわかり、健康によくない(笑)。あと、
攻撃力アップの魔法をかけて、まだ一度も攻撃しないうちから魔法効果が消えて
しまったり、体力まんたんなのに突然ドラゴンがコマンドを無視して回復行動に
走ったりするのが、よくわからない。

 序盤の主人公1人の場合の戦闘画面で「魔法」を選択すると、キャラクターの
ステータス表示がされている場所に魔法の一覧が出て、魔法を選べるようになる。
このとき、やっぱり魔法使うのやめようとキャンセルしても、ステータス表示が
戻ってくれない。状態が見えなくなってしまうので、不便で困る。
 相手が自爆などして戦闘が終了したとき、最後にくらったダメージが、その場
で画面のHP表示からマイナスされない。フィールドへ復帰してからマイナスさ
れる。やはり、ダメージをくらった瞬間にマイナスすべきだ。

 最初、絵と声のギャップに少々とまどったが、デモの絵はほんわかしていて、
あたたかい。物足りない気もするが、これが味なのだろう。背景グラフィックに
工夫がこらしてあって良い。地域によって建築様式がちがい、魅力がある。
 曲はちょっとおとなしめ。小ボス戦の曲がザコ戦と同じなのは緊張感がダウン
する。キャラの強さを見る画面なんかではわざわざ曲がかわるのだから、ボスで
も別に一曲、用意されているとよかった。

 ドラゴンをたまごから育てるのがウリだけれど、もう一歩ドラマチックでない。
一応ドラゴンならではのイベントはあるが、だいたいが今まで他のゲームで見た
別の何かに置き換えられるので印象が弱い。ドラゴンの成長パラメータを自分で
好きなように振り分けることができ、それによってドラゴンの性格(攻撃方法)
が変わるが、結局どう振り分けてもたいした差がないんじゃないかという気がし
て、自分だけの竜を育てているんだという喜びがあまりわいてこない。

 『サンサーラ・ナーガ』+『ドラゴンクエスト』+『天外魔境』といった感じ。
遊べない出来ではないのだが、なぜだか気づかないうちに静かなイライラが発生
してしまう。もう少し、ワクワクどきどきさせてくれるインパクトがほしかった。


'94 7/29 NIFTY-Serve FCGAMEM
     PCエンジン会議室 #865(改稿)
                   (登録日 '96/11/27)
ソフト発売1991年8月備考なし