『サイレント デバッガーズ』
<SILENT DEBUGGERS>

発売日 1992年8月7日
定価 7400円
メディア Huカード
メーカー データイースト
内容  モンスターの巣くう宇宙ステーションで戦う、
 3Dガンシューティング。とてつもなく困難 
 な仕事を請け負い、とてつもなく高額な報酬 
 を得るプロフェッショナル、人は彼らを“サ 
 イレント デバッガー”と呼ぶ−−。


 「音」という要素を意識して活かしているゲームはいくつかある。この作品も
そのうちのひとつだ。「音」は、うまく使えば、かなりの効果をあげることがで
きる。それは本能へダイレクトに働きかける信号なのだ。音楽と効果音の出来が
よければ、楽しさは何倍にもなる。「音」の重要性は、もっと強調されてしかる
べきだろう。

 この作品は3Dエリアのなかで敵を倒しつつ最下層へと降りてゆく、SFガン
シューティングである。モンスターの攻撃は容赦がなく、しかも神出鬼没。一歩
コンピュータルームから外へ出れば、1対複数の圧倒的不利な戦場になる。懸命
に走り回ってもなかなか追いつかない。たとえどんなに条件が悪くても、弱音を
吐かないのがプロだ。圧迫されるような恐怖にも、こころづよい相棒がいるから
耐えられる。運動系は自分、思考系は相棒にまかせるコンビネーションプレイ。
周囲の気配に注意しながら進んでいるときに、「あの謎はこういうことなのか?
いや待てよ……」などと考えている余裕はない。死の影はいつもそばにチラつい
ている。かたときも油断せず、ひたすら敵の殲滅(せんめつ)に没頭するのみだ。

 探索中は曲が流れず、シンとしている。敵の存在が近くなってくると鳴りだし、
あたりに響きわたるサウンドセンサー。点滅しながら青から黄、赤へ変わるカラ
ーセンサー。だんだんトーンを上げスピードを増していく警告音に、プレイヤー
の心臓の鼓動が共鳴する。そしてある段階をクリアしてはじめて、曲が流れだす。
はりつめていた緊張が一気に解き放たれ、任務達成感が倍増される。これが「す
っげーうれしい」のである。静と動のメリハリのつけかたが、たまらなくうまい。

 マップ構成は比較的単純で、適度な広さ。プレイヤーがだんだん慣れていける
よう段階を経て、すこしずつむずかしくなっていく。全体マップと現在地を確認
できるので楽だが、データの見かた、ステーションの構造などを把握するまでが
大変だ。ほんのわずかの時間の差で状況が悪化し、時間・設備・装備が制限され
てピンチになる。
 異なる性質を持つ何種類かの敵が存在しており、各々の特徴を理解することが、
攻略へのポイントになる。どアップで眼前に踊りでるモンスター。撃つと触手が
欠けていく。子供の頃に見た、ちぎれた昆虫の足を連想させる。

 パスワードやバックアップRAMによる途中セーブはない。緊迫感が薄れてし
まうから、そんなものあってたまるかという硬派な世界だ。取り返しのつかない
失敗をしすぎれば最初からやり直すしかない。それでも、一発でゲームオーバー
になったりはしない。どんな苦境におちいっても、かなりのあいだネバれる。腕
さえ上がれば、苦しい状況であっても、ちゃんとクリアできるバランスになって
いる。
 タイムロスのペナルティを払えばコンティニューできるが、コンティニューな
んて邪道だという完璧主義な人のために、終了の選択肢もある。ベテランあるい
は音がうるさいという人のためには、センサー音を止める機能もある。

 撃ちながら前進・後退できるのはとても便利。「ドアが開いてもすぐには中に
入らず、方向キーを再度押すことでそこをくぐる」「部屋に入って、中の様子を
伝えるメッセージが表示されたあと、方向キーをもう一度押すと部屋から出る」
など、移動にワンクッション置かれているのもありがたい。前を向いたまま後退
するときには前進時よりスピードが遅くなったり、キーを押し続けると前進速度
が上がったりと、こまかいところに工夫が見られる。武器の交換時に弾丸残数が
表示されないのは、ちょっと不親切だ。ごくたまに、メッセージ表示がおかしく
なることもあった。

 切り替え可能なバッテリーパックや、エネルギーを大量消費して瞬間移動する
ジャンプユニットなど、ゲームシステムはよく考えられているものの、センサー
切り替えや銃の使わせかたについては、まだ練り込める余地が残されているはず
だ。続編がもし出るなら、そのへんを含めてのパワーアップに期待したい。
 さらに欲をいえば、2〜3段階の難易度設定がついていれば、より長く遊べた
だろう。最初はえらくむずかしく感じるのだが、熟練すると楽勝でエンディング
までいってしまい、物足りなくなる。もっともっと、この空間に身をひたしてい
たい……そう思うようになる。やはり、苦戦して勝ちとる勝利のほうが断然いい。

 ゲームしていないときでも目をつぶると敵が目の前に浮かびあがり、敵影指示
の赤いマークが点滅し、勝手にゲームが再現されていく。あまり画面に集中して
プレイするので、画像が網膜に焼きついてしまうのだ。そしてしっかりと、アラ
ーム音の幻聴まできこえてくる。
 モンスターとの追撃戦。センサーに導かれ、恋する異性に会いたいときのよう
な気持ちで敵の姿を追いもとめる。追いつめて、逃げられる。また追いかける。
繰り返しだ。そしてどんどん押していって、ついには仕留める。
 一度はじめるとしばらく電源を切れないが、全体の長さはちょうどよく、熱中
して遊んでしまう。謎をはらみながら進行していく展開に引きこまれる。臨場感
あふれる、スリリングな作品だ。


'95 10/14 NIFTY-Serve FCGAMEM
     NECゲームマシン PCシリーズ会議室 #3189(改稿)
                   (登録日 '96/11/27)
ソフト発売1992年8月備考なし