『ファージアスの邪皇帝』<NEO MATAL FANTASY>

発売日 1992年8月29日
定価 7500円
メディア スーパーCD−ROM
メーカー ヒューマン
内容  ところどころにビジュアルシーンが入るコマンドRPG。


 システムなどのグラフィックセンスがなかなか個性的で良い。音楽もいい。時
々、敵を倒してもグラフィックが一部消えずに残ったり、戦闘中いきなりセーブ
データをロードして戻されたりするなどのこまかいバグもあったが、おおむねス
ムースに遊べる。戦闘突入とフィールド復帰のたびにCDを読み込みにいくのも、
画面切り替えが速めなので苦にならない。オートバトルは戦闘スピードを最速に
しておけば毎回の戦闘ごとにコマンド入力する必要がなく、戦闘開始と同時に自
動で戦い始め、終了すると画面が切り替わってくれる。プレイヤーはとても楽だ。
じっと戦闘の様子を見て、危なくなったらオートを解除して手助けする。オート
にしていても全滅させられることはあまりないから目を離していてもいい。が、
ザコ敵との遭遇率は高い。まともにBGMを聴いているヒマもないほど、しょっ
ちゅう敵が出てうんざりする。ダンジョンマップも結構入り組んでいて、よけい
に疲れる。オートコマンドがなければ相当大変だっただろう。

 街中では、簡略マップ上のカーソルで行き先を指定して、目的の場所へひとっ
飛びする。ダラダラと歩かなくてすむのがありがたいが、方向キーを右に入れる
と左、左に入れると右の場所を指したりするのは移動の感覚がつかみにくい。
 人に話しかけるには接触してIボタン。一度話し終わってすぐまたIボタンを
押しても、相手は反応しない。再度、方向キーを入れてから押さないと、話して
くれない。店のやりとりでもこの調子なのは何とかしてほしかった。

 「会話」というコマンドを使うと、そのときどきのメンバーによるおしゃべり
が声入りで聞ける。ていねいな心理描写ができており、ゲームのヒントにもなる。
この手のRPGで、旅の途中いっさいムダ口をきかず、ひたすらもくもくと任務
遂行するパーティだと、やはりおもしろみがない。この会話コマンドは、キャラ
クターに生命をふきこむ役割を果たしている。話が進行するたび、ちがう内容に
なるので実行するのが楽しみになる。しゃべっている途中でもランボタンで会話
を終了させることができるから、同じ内容だった場合でもすぐにキャンセルでき、
うっとうしくない。メッセージ文字のみでのセリフもいいが、やっぱり声がつく
と性格を把握しやすいし、キャラクターに親しみがわく。ただ、時間がたつと会
話が変わってしまうことがある。気をつけていないと聞き逃してしまう。会話を
聞くのと聞かないのとではストーリーの立体感がかなりちがう。全部聞いておき
たいところである。

 設定がちょっと某漫画を連想させるものの(笑)、ストーリーが凝っていておも
しろかった。各キャラがそれぞれ自分の本当の目的のために動いており、それで
いて余裕のあるときは人を助けてあげたりして、人情的にも厚い。ひとりひとり
にその人なりの目的と意志が見えるので行動が自然で納得がいき、存在感がある。
皆、自分に正直に生きているところに好感が持てる。ウソっぽくない。
 タイトルにある「邪皇帝」がちゃんとゲーム序盤でプレイヤーの前に姿をあら
わすのにも意表をつかれた。勇者が自分の元へ来るまで外に出たがらない出不精
な「待ち」姿勢の親玉が多いなかで、フットワークがかるいのは感心である。実
体として最初にボスクラスが登場してくれると、自分の目標がはっきりして張り
合いがでる。
 また、通常よく使われる、“魔法を唱える力:MP”という概念のかわりに、
この作品では「アカシック」という単位が用いられている。これは個人個人の決
められた値ではなく、パーティ共通所持の“魔法の素”で、これがなくなるまで
一人何回でも魔法を唱えることができる。力をそこから汲みだす、という感じで
好きなシステムだ。

 ハマりやすく、いきづまることがあるかもしれない。いきなりノーヒントにな
って、ぼうぜんと立ちつくす。どこへ行っていいか何をしていいのか、わからな
くなる。何かがあるポイントが背景に溶けこんでしまっていて見落としやすい。
隠し○○もけっこうある。ストレスたまりそうなパズル的要素もある。私はいき
づまることはなかったけれど、少々うろうろしなければならなかった。そういう
ときにザコ敵にドカドカぶつかるのは、ちょっとタメ息が出る。
 ゲーム展開自体は「街での情報収集&買い物」→「ボス倒す」→「次の街」と
いう、よくあるパターンの繰り返しだが、この先どうなるのか知りたいと思わせ
る吸引力が強いため、退屈ではなかった。CD−ROMならではの「しゃべり」
とビジュアルが活かされている。シナリオとキャラクター描写の勝利であろう。


'94 9/9 NIFTY-Serve FCGAMEM
     PCエンジン会議室 #1074(改稿)
                    (登録日 '97/5/28)
ソフト発売1992年8月備考なし