『ウィザードリィV』
<WIZARDRY V HEART OF THE MAELSTROM>
発売日 1992年9月25日
定価 7400円
メーカー ナグザット
内容  奥の深い3Dダンジョンを探索する、有名コマンド 
 RPGシリーズの移植。

 ファミコン版『ウィザードリィ』は、まぎれもない名作だ。ここちよい音楽と
リズミカルな操作、親切で完成度の高いシステム。プレイヤーを陶酔させる魅力
があった。あのテンポの良さを知っていると、このPCE版のプレイ中のCD読
み込みが最初、すごく気になる。どうしてもFC版のことがチラつき、比較して
しまう。キャンプ開始&終了で、いちいちCDアクセスするのがうっとうしい。
画面切り替えに時間がかかる。「こんなのやってられるか!」というほど致命的
な遅さではないが、FC版と比べるとどうにも遅く感じられる。
 が、ある程度ゲームが進んで雰囲気に慣れ、FC版の幻影が消えかかってくる
と、CDの読み込みも容認できるようになり、本格的にウィザードリィの世界に
のめりこんでいくことになる。

 この『ウィザードリィV』はスーパーファミコンでも発売されている。SFC
版には「オートマッピング機能」や「メッセージメモ機能」がついているようだ
が、PCE版にはそういうものはいっさいない。すべて自分の手でメモしていか
なければならない。この作品では、マッピングと情報のメモは欠かせない作業だ。
何も書かずに記憶だけを頼りに進んでいると、遅かれ早かれ全滅するか、いきづ
まってしまうだろう。
 強烈に難解である。クリアルートをまっすぐにたどれば、推理アドベンチャー
程度のそんなにむずかしくはない謎だと理解できるのだが、自分でルートを見つ
けだすまでがかなり大変だ。迷宮内にはさまざまなヒントをくれる個性的なキャ
ラクターたちが潜んでいるが、彼らの話の内容ときたら、ほとんど呪文に近い。
「何を言ってるんだ? もっとわかるように話してくれないかな」とお願いした
くなる。ただのたわごとだと思っていたら、それが重要なヒントだったりする。

 モンスターやアイテム、戦闘コマンド表示がすべて英語。さすがにメッセージ
表示だけは日本語だが、FC版のように日本語と英語の切り替えモードがついて
いない。このことが難易度の高さに拍車をかけている。英語の勉強になりはする
し雰囲気も出るけれど、英語が苦手な人にはつらいだろう。容量的には問題ない
はずだから(FC版でさえやれたのだから)、手間をおしまず、日本語モードを
ぜひともつけてほしかった。説明書でのフォローも不充分だ。私は英語の辞書を
かたわらに置き、意味を調べつつ遊んだ。単語の意味を読み取れないと、よけい
に謎がむずかしく感じられるにちがいない。ウィザードリィ初心者にはかなりキ
ツいのではなかろうか。
 グラフィックはていねいに描かれているが、もう一歩、個性と存在感が足りな
い気がする(特に、FC版であんなにステキだったグレーターデーモンがブタに
なってしまっているのはショックである(笑))。

 キャンプをしたり戦闘が終了したりすると自動的にセーブされる。「クイック
セーブ」という、CDのアクセスなしで瞬時にセーブできる機能もちゃんとある
ので便利だ。
 全滅してしまってもメッセージ終了のボタンを押さないかぎり、画面は切り替
わらないので、あっという間に自動セーブされてしまうことはない。タイミング
がシビアでないので、落ち着いて電源を切ればやり直せる。しかし、メディアが
CD−ROMであるため、再び元の状態に復帰するまでにやはり時間がかかって
しまう。キャンセルできないメーカーロゴと著作権表示。デモをとばし、再開の
コマンドを選んでようやく元に戻る。しかも、再開するとパーティの隊列がバラ
バラになるので毎回組み直さなければならない。めんどくさいし待たされるが、
リセットしたことへのペナルティだと納得するしかないだろう。

 ちょっとしたことですぐキャラクターが「灰」になる。しかし、めったに「消
滅」はしない。FC版では、呪文やカント寺院で死んだキャラクターを甦らそう
とすると失敗することがあった。死亡(DEAD)→灰化(ASHED)→消滅(LOST)
と段階的に落ちていき、LOSTになるとキャラクターはデータ上から抹殺されてし
まう。が、この作品ではまだ一度も蘇生に失敗したことがない。説明書にも触れ
られていないところを見ると、復活は 100%成功になったのだろうか。何となく
スリルがない。
 後列のキャラクターも、長距離用武器を装備すれば攻撃ができるので、今回は
攻撃魔法を使うことはあまりなかった。キャラクターの攻撃力がけっこうあるの
で力押しでもなんとかなってしまう。敵が大量に出てきたときだけ、攻撃魔法を
使用する程度だ。

 キャラクターは18人まで作成できる。1パーティ6人として、3パーティ組め
る計算になる。キャラクターデータをパスワードで吸いだすこともできる。英数
字、ひらがな、カタカナあわせて27文字のパスワードだが、文字が小さくて見づ
らく、「0(ゼロ)」と「O(オー)」の見分けもしにくいので、まちがえない
よう注意する必要がある。セーブはバックアップRAMをいっぱいに使いきる。
データセーブは当然のごとくひとつぶんしかできない。
 キャラクターの名前は英数字・ひらがな・カタカナを使用できるが、「アイウ
エオ」の小文字が使えない。この5文字はぜひ含めておいてほしかった。

 こまかいバグが散在している。ちょっと変なふうに文字がはみ出したりするく
らいは許容できるが、テレポートした先が「恐怖のバグバグ無法地帯」だったり
するのはいただけない。画面がバグ特有のモザイク模様になって、右を向いただ
けで全滅、左を向いたら年をとる、前後左右一歩も動けない(しかも着いたとた
んに敵が出てきたのでその場所で自動セーブされてしまっている)。これでテレ
ポートの呪文が残っていなかったら、めんどうなことになるところだった。

 それとこれはソフトが悪いのかハードに問題があるのかわからないのだけれど、
内蔵音源の音(効果音など)だけが出なくなってしまうことがたびたびあった。
あるとき探索から帰って宿屋へ泊まったら、あるキャラだけがものすごい量の経
験値をいつのまにか得ていて、あっという間にレベル 235、HP1460のスーパー
キャラに成長してしまった、ということもあった。ウィザードリィでは、どんな
に強くHPの多いキャラでも一撃で殺されてしまうことがあるのでバランスはそ
んなにくずれないものの、目立つバグはないほうがいいに決まっている。きちん
とつくってほしい。

 私はFC版1の音楽が非常に好きなので、最初はこの作品の曲になじめなかっ
た。でも、慣れてくるとなかなか良い。CDならではの人々のざわめき声など、
いい味を出している。
 戦闘曲は内蔵音源とCD音源のどちらかを選択することができるが、CD音源
だとCDの読み込みでテンポがすこしくずれる。ノリはさほど変わらないので、
内蔵音源でじゅうぶんだ。戦闘曲やダンジョン内での曲がたったひとつずつしか
ないのに臨場感を損わないのは、さすがウィザードリィだというべきだろう。

 ゲームの目的を一応クリアしても、依然謎な部分がいくつか残ったが、おもし
ろかった。この作品の原作者に、「このゲーム、すごくむずかしいですね(This
game is very difficult! )」と言ったら、はたしてどう答えるか。この程度の
謎をむずかしいと言うなんて、日本人は根性がないですネー、なんて思われるか
もしれない。外国産ゲームの難易度はこれが普通なんだろうか。日本産のゲーム
が親切すぎるのだろうか。
 「とってもおもしろいけどちょっとむずかしすぎる。日本の比較的簡単なゲー
ムとこのゲームの、中間くらいの難易度だったらすばらしいのに」と、SFCの
『アウターワールド』で遊んだときにも思った。外国産作品は難易度が高い、と
いうイメージが私にはある。だけどそれでいてドキドキわくわく、緊張感があっ
て楽しいのだ。「真のおもしろさって何だろう」と考えさせられる。
'95 1/13 NIFTY-Serve FCGAMEM
     PCエンジン会議室 #1642(改稿)
                  (登録日 '96/11/20)
ソフト発売1992年9月備考なし