【メガドライブ】
『タイムギャル』
発売日 1992年11月13日
定価 7800円
メディア メガCD
メーカー ウルフ・チーム
内容  アニメーションアドベンチャー。アーケード版(タイトー)の移植。


■派手なアクションで魅せる、ボタン押しアドベンチャー

 反射神経が命のゲームである。一瞬の油断は命とりになる。
 主人公レイカはプロのスタントマン顔負け、運動神経バツグンのスーパー
ギャル。常人にはとても真似できない動きをする。危険をかえりみずにこん
なに思いきり動けたら、さぞかし楽しいだろうと思わせる、生命エネルギー
に満ちた動き。イキがいい。見ていると元気が出てくる。

 ゲームシステムは単純そのもの。画面の左右上下にボタンが設置されてい
て、光ったところに合わせて方向キーを入力すれば行動がうまくいき、アニ
メーションをつなげていくことができる。ボーナス得点をためると1UP。
なかなか面白いシステムである。タイミングはシビアで、うっかり画面にみ
とれた瞬間、入力が遅れて1ミスになる。ボタンは全部いっぺんに光ったり
もするので(そうしたら、銃を使用・あるいは行動選択)、ボタンのみに神
経を集中させねばならず、画面で今「何が起こっているのか」見ている暇が
最初はほとんどない。説明書を読まずにゲームを始めると、敵の首領の高笑
いを数回聞いてゲームオーバーになる(このオヤジの笑い声は以後、耳にタ
コができるほど何度も響きわたる)。
 いきなりピンチの場面に出くわし、うまく操作しないと1ミス。入力は、
ほんの一瞬遅れても間に合う時もあるし、押したつもりでも効いてなかった
りする。常に画面に集中していなければならない。
 タイムマシンで時空を超え、いろんな時代へ次々にワープしていく。タイ
ムジャンプし終わったとたん、待ち構えていたかのように敵が襲ってくる。
一瞬のうちに状況を判断し、行動に移らねばならない。最初は光に反応して
ボタンを押しているが、慣れてくると絵を見て押せるようになる。何度も繰
り返し練習するごとに、先へ進めるようになる。そしてパターンを覚えるの
にともない、絵をながめる余裕が、わずかながら生まれてくる。
 ひたすら入力に追われて、じっくり画面を鑑賞するゆとりがないから、ビ
ジュアルシーンだけを見ることができるモードが通常オプションでついてい
るのは親切だ。パスワードをとることもでき、入力すればすべての場面を見
ることができるので、わざわざ全部見るために何度もやり直さなくてすむ。
 おもしろい(かつ困った)ことに、ゲームをやり直すたび、出てくるシー
ンの順番が違う。同じ時代でも、左右反転を使ってあったりするので、前回
覚えたコマンドの逆を入力しなければならないこともある。ミスパターンも
さまざまな種類が用意されている。同じ場面を何度も何度も繰り返して全部
頭の中にたたきこんでゆくしか、クリアする道はない。紙にパターンをメモ
して、それを見ながらプレイしたり、誰かに次はどうするかをそのつど叫ん
でもらうという手もあるが、結局、自分の頭と手を直結させるのが一番速い。
 慣れてくれば、4つのボタンに神経を配りながら同時にアニメーションも
楽しむという芸当もできるようになるが、それはかなりの回数、ゲームオー
バーを経た後のことになるだろう。人によっては、途中で飽きてしまうかも
しれない。が、意地になる人はとことんハマッてしまう魅力がある。
 動画の出来がみごとだ。動く、動く。止まらない。これだけ動きある絵を
歌やたくさんのセリフつきでスムーズに流すメガCDの力もさることながら、
コンテを切った人もかなりの実力者と見受けられる。アクションシーンが生
き生きと描かれ、構図の取り方、視点の移動などバラエティに富んでいる。
絵は少々粗く、絵柄もバラつくものの、テンポの良さと躍動感が、それらを
充分すぎるほどカバーしている。声優の山本百合子さん(レイカ役)が、動
画の躍動感を殺さない、のびのびしたいい演技をしている。オープニングデ
モは繰り返し見ても飽きないし、テーマソングもいい。
 難易度は3段階あり、EASYモードではパスワードが出ないというニク
い設定。慣れるとノーマルモードでも簡単にクリアできる。ハードモードは
時間制限がシビアなのかと思ったら、なんとボタンがまったく光らず、絵だ
けを見て操作しなければならない。
「んなもん、できるかぁー!」
と言いたくなる、超・激ムズなモードだ。
 ストーリーらしい展開は見られず、いくつかのシーンをつなぎあわせたと
いう感じで心理描写はなく、クライマックスの盛りあげ方も弱い。全体的な
ボリュームも、そんなにあるわけではない。人によっては全然進めなかった
り、逆に簡単すぎたりして、定価で買うと、お買い得感は薄いのかもしれな
い。しかし、ひとつひとつの場面に力が入っているので、絵の動きは見てお
いて損はない。
 アニメーションつきゲームとTVアニメーションの違いは、前者がプレイ
ヤーによる介入が可能なのに対し、後者はただ画面を見守るしかないという
ところだ。この作品は、アニメつきゲームとTVアニメーションの境界にぎ
りぎりまで近づき、アニメーションの良さをゲームに活かすことに成功して
いる。
 このゲームでは犯罪者を追跡する役だったが、逆に逃げる側を主体とした
システムにしても、面白そうだ。
(「まぐまぐプレミアム」発行(2003.5.31)・
有料メールマガジン「巴かずみのゲームソフトレビュー(有料版) Vol.8」改稿)
(HP登録日 2003/9/29)

ソフト発売1992年11月備考なし

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