『闘技王キングコロッサス』<KING COLOSSUS>

発売日 1992年6月26日
定価 5800円
メディア メガドライブ
メーカー セガ
内容  アイテムを手に入れつつ、道を切り開いてゆくアクションRPG。


 漫画家の荻野真さんが総合プロデュースした作品だと知って、最初こっそりと
「あまり期待できないかもしれない」などと思ってしまった。荻野さんだから、
ではない。「他業界の有名人が関わった作品は、ゲームとしておもしろくないの
ではないか」という、偏見とも言えるイメージを、私は持っていたのである。
 有名人の参加、あるいはキャラクターものにも言えることだが、そういう点を
ウリにしている作品はネームバリューに「おんぶにだっこ」しがちで、かんじん
のゲーム内容がいまいちなのではないだろうか? ……しかし私のそんな心配は、
プレイし始めて数十分で、あとかたもなく消え去った。これはおもしろい。おも
しろすぎる!

 「闘技奴隷」という、今までのRPGにない新鮮な設定。この作品において、
闘いは単なる経験値&お金かせぎの遊びではない。生きるか死ぬかの真剣勝負だ。
知らず知らず、血が燃えたぎってくるのがわかる。くじけてしまいそうな状況に
も、強く立ち向かっていく主人公。逃げずに現実に直面して、愚痴を言うことも
せず、自分がその場でできることをこなしていく。
 主人公の体力がゼロになるとゲームオーバーになり、セーブしたところからや
り直しとなる。はじめのころは、やり直してばかりだった。が、だんだん要領が
つかめてくると、がぜんおもしろくなる。熱中してしまう。下の階に落っこちて
同じ道を何度もたどらされても、回り道が無駄にならない。途中でザコを倒して
経験値が加算されていき、どんどん強くなる。はっきり言って一部の飛び移りジ
ャンプは、あの『ランドストーカー』もこれほどまでには、というくらい、よく
失敗した。難しい。それでも、責めるのはひたすら己れの不器用さにたいしてに
なる。作品に対する文句は出てこない。「もうこんなゲームやーめた!」なんて
考えは、これっぽっちも起こらなかった。「次は絶対うまくやってみせる」とい
うこと以外、何も頭に思い浮かばない。ミスは自分が悪い、と納得できるのだ。

 ボスが強くて何度も負けた。しかし、レベルを上げて工夫すれば必ず倒せる。
ボスを倒した後の達成感は格別だ。あるボスをどうしても倒せなくて、経験値稼
ぎのためのザコ戦をたくさんやったのだが、全然、苦にならなかった。あいつを
倒せるのなら何だってしてやる、と、意欲満々なのである。気を抜くと、すぐに
ゲームオーバーになって悔しい。負けるたびに、今度こそはミスせずに生き抜い
てみせる、と闘志がわいてくる。アクション面の満足度はかなり高い。
 敵を倒すと体力回復アイテムなどがよく出てくれるので、迷宮内でも息の長い
活動が可能になる。その場所での「仕事」が終わると自動的に場面が移動するの
が親切。アイテムの出かた、武器・魔法の扱いかた、レベルアップのスピードな
ど、ゲームの面白さとはどういうものかをわかっているつくりだ。音楽と効果音
の響きも大変良い。雰囲気を演出する、いい曲がそろっている。

 闘いに集中しているため、ゆっくり見ていられないが、ボス戦での背景効果が
なかなかすごい。グラフィックセンスが良く、雰囲気の盛り上げかたが上手い。
装備を替えるごとにグラフィックがちゃんと変化する。いろいろな武器があり、
攻撃グラフィックも多様で、質感がしっかりしている。ちょっとしたキャラクタ
ー動作もいいし、敵キャラの動きもそれぞれ個性的だ。
 メッセージ表示の色が、しゃべる人物によって違う。青や赤など、色わけして
あってカラフル。文字自体は小さく、少し読みづらい。メニュー画面の開閉は、
ちょっとひっかかる感じがする。キャラクターサイズが大きいので、うっかり人
物に接触して会話が始まってしまうのは、少々うっとうしい。

 終盤の、あるポイントからセーブするのをやめた。もしゲームオーバーになれ
ば、かなり前の場面まで戻ってやり直しだ。そうなったら、ドジを踏んだ自分が
悪い。この勝負は一度だけなのだと自分に言い聞かせるつもりで、あえてセーブ
しないことにした。背水の陣である。セーブしてあると、安心感が出てしまう。
負けたらまた苦労してここまで来なければならないというプレッシャーが、私の
甘えを消してくれる。
 はたして最後の勝負を、一度めでクリアできるだろうか。無理かもしれない。
甘くはないだろうことは容易に想像がつく。けれど、自分の力を信じて賭けてみ
たくなった。そうさせるだけの魅力が、この作品にはある。
 結局−−賭けには破れた。予想通り、やはり甘くはなかった。が、悔いはない。
そして、ちょっと休憩して時間をおいてから再挑戦してみた。すると驚いたこと
に、あれだけ苦労した道のりを、いとも簡単に進んでいけるのだ。何度失敗した
かわからない飛び移りジャンプも次々こなし、あっという間に目的地へ到着して
しまった。またあの大変な道を行くのかと、覚悟していたというのに。山の頂上
まで一気にヘリコプターで飛んでいったような気分だ。一度めと二度めで、まる
で世界が変わってしまったかのような違いが生じた。そして私は、この二度めの
挑戦でエンディングをむかえた。

 「剣と魔法のファンタジー世界」なのであるが、よくある“旅行感覚のRPG”
とはひと味ちがった雰囲気を持つ。地に足のついた展開。運命に翻弄される、人
間という小さな存在……それでも強く、生きていかねばならない。
 パッケージなどを見て、何となくとっつきにくい印象があったのだが、遊んで
みるとこれがまぁ、ものすごくおもしろかった。長時間プレイになるRPGでは、
途中でダレてきてプレイ続行の気力をなくすこともあるのだけれど、この作品は
ちっとも退屈しなかった。ちょっとボス戦が『イース』みたいだなぁとか、爆弾
で道をつくるのは『ゼルダの伝説』みたいだなぁとか、そんなことはまったくど
うでもいい。そう言われればそうかなと気づく程度のことでしかない。しっかり
と、独自のおもしろさと世界観は備えている。最高だ。
 私は、RPGは一度遊んでクリアすれば、再び手をつけることはほとんどない。
だがこの作品はもう一度最初から、それも今度はノーミスでクリアしてみたい、
と思わせる。


'94 10/7 NIFTY-Serve FCGAMEM
     SEGAゲームマシン会議室 #1686(改稿)
                   (登録日 '97/1/15)
ソフト発売1992年6月備考なし