ライルは水差しの水をコップにうつし、さしだした。それを飲むと、店の主人はすこし落ちついたようだ。
「ふー、ごめんなさいね、取り乱してしまって」
「思ってることは心にためないで、パーッと吐きだしたほうがいいときもあるよ」
「そ、プァーッとね」
無責任にあおりつつ、フライデーはシチューの最後のひとさじを口に入れる。
「そうですね。でもまぁ、場が場ですから、ちょっと控え目にします。なにしろ、ここは由緒正しき街メルカトル。粗暴な言動はつつしまないとね☆」
「由緒正しいわりには、とばく場があったりするわね」
「人生は多かれ少なかれバクチだと思うぞ」
「んー、深いこと言いますね、ライルくんは。さすが私よりも年上だけある」
「俺なんかさぁ、いつも命がけで生きてるもん。大バクチだよ。でも、ひとつのところにジッとしてるなんて、退屈でしょうがねぇよな」
「あたいもおんなじ。それで故郷をとびだしたの」
「みんないろいろあるんですねぇ……」
食後の紅茶を飲みながら、さらに三人は話していた。
「音楽も味があっていいですね。全体の曲配置もうまい。盛り上げかたを知ってますね。宝探しっていう素材も夢があっていいです。エジプトのピラミッドの仕掛けってこんなふうなのかなーって思ったり。まさかここまで凝ってないだろうけど」
「大陸のほうにはもっといろんな場所があるんだぜ」
「へー、今回の冒険が済んだら、あたいも行ってみたいな」
「え? お前ずっとついてくるつもりなのか?」
「なによー、わ・る・い?」
すぐにケンカになりそうなライルとフライデーの会話をにこにこと聞きながら、店の主人はいつしかまどろみのなかにひきこまれていった。酔いが回ったらしい。
「あらっ? プレイヤーさん眠っちゃってる。きっととても疲れたのね」
カウンターに両腕を枕にしてうつぶせている店の主人にフライデーが近寄ると、すーすーという気持ちよさそうな寝息が聞こえた。
「起こすのは悪いな。じゃ、そろそろ仕事の続きに行くとするか。そっと出よう」
「そうね」
ライルはまた背中にバッグを背負った。フライデーがそのなかへ潜りこむ。
「ごちそーさん。うまかったよ」
「おいしかったわ。あまり飲み過ぎないようにねっ」
ふたりは眠っている主人に静かに声をかけ、店を出ていった。
プレイヤーは夢を見ていた。そこは『ランドストーカー』の世界で、自分が実際にライル、フライデーと楽しそうに話をしているのだ。そして、寝言をつぶやいた。
「すっごく苦労するけど楽しい冒険……またどこかで……会えるといいね……」