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【ゲームボーイアドバンス】
『オリエンタルブルー 青の天外』
発売日 2003年10月24日
定価 4800円
メーカー 任天堂(→メーカーホームページ
内容  コマンドRPG『天外魔境』シリーズの新作。

■天外シリーズ、ゲームボーイアドバンスに登場

 『天外魔境』シリーズは、1989年にPCエンジン初の音声つき(キャ 
ラクターが声入りでしゃべる)RPGとして発売され、続編の2(1992
年)も好評を得た、ハドソンのコマンドRPG。日本の江戸時代に似た世界
で展開される和風RPGである。
 現在では、RPGに声優の音声セリフが入ることは珍しくなくなっている
が、当時はかなり新鮮だった。このゲームボーイアドバンス版は、「もうひ
とつの天外魔境」というキャッチフレーズで、シリーズの外伝的な位置づけ
になる(音声は入っていない)。GBAには、昔に発売されたRPGが移植
されたりするが、これは完全新作だ。
 「オリエンタル(東洋の)」というタイトルが示すとおり、舞台は日本に
限らず、世界各地の文化がいろいろ混在。魔法名がすべて英語になったため、
西洋ファンタジーRPGのような感じだ。「画面の小さいGBAで漢字を表
示すると、文字が小さいので見づらい。メッセージウィンドウの文字は大き
く出来ても、コマンドメニュー内の文字には漢字を使いづらい」という特性
によって、GBAでは和風の雰囲気を出しづらいのかもしれない。それとも
和風RPGより、西洋ファンタジーRPGにした方がユーザーにウケがいい、
ということなのだろうか。

 戦闘などで入手できる「マ石」という丸い石を、物理の原子・分子結合の
ように組みあわせて、さまざまな魔法力を持つ石を合成する「マ石合成」。
過去の天外シリーズにはなかったシステムだが、なかなか面白い。
 MPがあっても、マ石を持っていないと魔法を使うことができない。ボス
戦にそなえて、充分な数のマ石を用意しておく必要がある。さらにマ石は、
知力が一定値ないと使えない。敵の攻撃によって知力が一時的に下がってし
まうと、高レベルのマ石が使えなくなったりもする。必要知力はマ石の種類
によって異なるので、単に「覚えた魔法をMP消費して使う」のではない、
奥の深さがあって良い。
 レベルの上昇によって魔法を覚えていくのとは違い、新たに出会う魔物を
倒して得られる新しい種類のマ石を入手して、新しい魔法が使えるようにな
っていく。自分で組み合わせて新しいマ石を完成させるのは楽しい。

 もうひとつの特徴は「クリエイティブ・シナリオ・システム」。
 たいていのRPGでは、ひとつの事件が起こり、それを解決してから、次
のイベントに移る。このゲームでは、各地でいろいろイベントが起こって、
「あっちもこっちも気になる、どっちから行こう?」という状況になる。世
界各地を回りながら、解決できそうなイベントから片付けていく。解決する
順番の自由度が比較的高いので、未解決のまま、ずっと放っておくイベント
もあったりする。その方が、世界として自然ではある。普通、ひとつの事件
が解決するまで、他所で事件がまったく起こらない、なんてことはないから
だ(主人公たちの移動にあわせて、順番に事件が起こるわけではない)。
 ただ、どれから解決しても、それほど大きな違いはないようなので(仲間
になるキャラクターが多少異なってくるようだが)、どちらを優先するかで
大きく違ってくるようだと、システムとして、さらに面白くなったかもしれ
ない。

■「青」を使う意味

 このゲームでは物語中の要素やアイテム名にタイトルの「青」が使われて
いて、システムウィンドウも青地になっている。青いウィンドウに白い文字
という取り合わせは文字が読みやすい。しかし、それだけだろうか? なぜ
青にする必要があるのか?
 この配色は、スクウェアのファミコン・スーパーファミコン時代の『ファ
イナルファンタジー』シリーズを思い出させる。プレイステーション以降の
FFシリーズはリアル志向になり、トレードカラーであった青いウィンドウ
はあまり使われなくなった。「使わないならウチが使いますよ」という感じ
で、青いウィンドウを使いたいがために、タイトルに「青」を入れ、青をテ
ーマにしたように思える。
(このソフトが任天堂から発売されていることから、スクウェアがFFシリ
ーズの移植をゲームボーイでなく、先にバンダイのワンダースワンで発売し
たことに対する、一種の仕返しのようにも見えてしまう)

 タイトルが『天外魔境外伝 オリエンタルブルー』でないのは、このGB
A版が、あまり天外魔境らしくないからかもしれない。キャラクターデザイ
ンの雰囲気がかなり変わっているし、青いウィンドウは昔のFF。天外の名
をつけない新作タイトルでも問題ないくらいだ(しかし、それだと知名度が
ないので売り上げ的にキツくなるのかもしれない)。
 気になったのは、他社の有名RPGのアイデアを、そのまま持ってきたよ
うなところがいくつかあったこと。同じシステム・同じシーンが複数、見受
けられた(似ている部分を5作品以上挙げられる人は、RPGを結構プレイ
している人だろう)。
 天外シリーズはオリジナルのシリーズとしてやっていけるだけ有名であり
(PCエンジンに詳しくない最近のユーザーは知らないかもしれないが)、
他作品のマネをする必要はないはずなのに。CD−ROMによる音声つきR
PGという新機軸を先がけて実現した天外シリーズだけに、オリジナリティ
には、こだわってほしかった。
 マネっぽい部分は気になるが、よく作り込まれているので、やりこみがい
はある。起こった出来事をまとめた「日記」や進行のヒントを読めるのでわ
かりやすく、操作性もなかなか良い。戦闘での各キャラクターの行動を細か
く設定できる「作戦」という自動戦闘コマンドはかなり便利。男主人公と女
主人公のどちらからでも始められ、ボリュームも結構あり、遊びやすく楽し
める内容だ。
(「まぐまぐプレミアム」発行(2004.7.13)・
有料メールマガジン「巴かずみのゲームソフトレビュー(有料版) Vol.22」改稿)
(HP登録日 2004/10/13)

ソフト発売2003年10月備考なし

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