【ゲームボーイ】 『ナノノート』<NANONOTE>

発売日 1992年8月7日
定価 4500円
メーカー コナミ
内容  ゲームボーイの簡易電子手帳。


 ゲームボーイを電子手帳として使おうという、ユニークな発想のソフト。10大
機能を紹介しよう。

1.カレンダー・時間割
 このカレンダーはなんと、毎日いちいち自分で設定し直さなければならない!
(何のためのカレンダーだ?)
 時間割は、国語算数理科社会英語など19種類を登録できる。

2.パスワード
 鍵つき日記帳のように、4つの数字パスワードで内容を守る。ON・OFFが
可能。ONにしたままパスワードを忘れてしまうと悲惨である。忘れたパスワー
ドを知るための裏技はないようだ。……もっとも、そんな機能があったらパスワ
ードを設定する意味がないのだが。

3.カードメモ
 カードにメモる感覚で、文章などを記憶しておける。通信により、他のゲーム
ボーイとデータ交換もできる。便利なのが検索機能で、検索文字を入力すると、
その文字の含まれたカードメモを探しだしてくれる。

4.計算(電卓)
 ちゃんとした8ケタの電卓。なかなか使えそう。台形や円の面積などを求める
公式まで登録しておける。宿題はこれで簡単に済ませよう。

5.スケジュール帳
 分刻みのスケジュールを入力。カレンダーで、好きな日を休日に設定できる。

6.アドレス帳
 住所、氏名、電話番号、血液型、生年月日を入力。検索もできる。ちょっとし
たデータベースだ。
 このソフトの大きな目玉と言える機能がここに存在する。「オートダイアラー」
がそれだ。電話機の送話するほうにゲームボーイのスピーカー部分をくっつけ、
登録した電話番号を指定すると、ピポパパポとモデムが発するような音をたてて、
電話をかけられるのである(プッシュ回線のみ)。
 ただ、外でおもむろにゲームボーイを取りだし、何やらあやしげな動作をする
のは目立つ。人前でやるのは勇気が要る。もうひとつ言えば、ソフトを起動して
オートダイアラー画面を呼びだすより、自分でダイヤルしたほうが断然速い、と
いう事実がある。自分で番号を押さずに電話をかけられる感動を味わう、あるい
はちょっと友達に見せびらかすための機能かもしれない。

7.おこづかい帳
 出金および入金の名称と金額、種類(14種類の“しなものアイコン”から選択)
を入力。集計モードでは、1、6、12ケ月ごとの集計を表示させることができる。
グラフの種類も豊富。

8.成績表
 小学1年〜中学3年までの毎月の成績結果を科目別に入力する。自分の成績が
どの程度のレベルなのかグラフで確認でき、じつにわかりやすい。中学は平均点
も入力できる。

9.占い
 星座と血液型による相性をみてくれる。「おみくじ」は1日1回、引いた結果
がソフト起動のたびに出る(ON・OFF可)。

10.パーソナルデータ
 自分自身のデータを保管。通信ケーブルを使って通信すれば、他の人のナノノ
ートデータと“名刺交換”できる。


 説明書が大きいうえにブ厚い。文章入力の仕方は説明を読まないと、やや理解
しづらい。コマンドRPGの名前入力のように、ずらっと並んだ文字列から一字
ずつ拾って文章入力する。ひらがな、カタカナ、アルファベット、数字が使える。
 曲は流れない。カーソル移動のときの、ピッピッという音が聞こえるだけだ。
ゲームではなく電子手帳なのだから、オープニングの曲が流れたりしたら、まぁ
確かに変である(流れても楽しいとは思うが)。

 データは、ソフトに内蔵された電池によって記憶されており、記憶メモリが残
り0%になると記憶できなくなる。思ったよりたくさん記憶できるので、すぐに
メモリ不足になったりはしないものの、電池が切れたら当然交換しなくてはなら
ない。とりあえず一年保証がついているが、いつ電池が切れるかわからないもの
に、データを蓄積する気が起きるだろうか。
 説明書にも「重要なデータはメモにとったりしておくように」と勧めてくれて
いる。転ばぬ先の杖として手動バックアップしておけば安心です、というわけだ。
けれど、それはちょっと本末転倒かもしれない。苦労して入力し、さらに手書き
で紙に書き写しておく労力はバカにならない。プリントアウトできればよいのだ
が、「ゲームボーイ用ハンディプリンタ」なんて周辺機器は、任天堂が絶対出し
そうもない製品だ(笑)。

 小・中学生向けに、普通の電子手帳がカバーしきれない成績表や時間割などを
盛り込んで、ターゲットをしぼっている。このソフトが発売されたころはそうで
もなかったが、最近は子供向けのミニワープロや電子手帳が人気のようである。
子供たちがメインユーザーのゲームボーイにいちはやく目をつけ、こういうソフ
トを発売したのは、時代を先取りしていたと言っていい。が、電子手帳としては
使い勝手等に疑問が残る。手帳というのは、いつも身につけていてこそ十二分に
力を発揮するものだ。学校へゲームボーイを持っていったらまず、先生に取り上
げられてしまうだろう。「これは電子手帳なんです」なんて言いわけは通用する
まい。通信ケーブルを使用してのデータ交換機能も、わざわざ手間をかけてデー
タ入力する友人がいなければ、用をなさない。

 いまやゲームボーイも、かつての勢いはなくなっている。いまだにこのソフト
を使っている人は、たぶんほとんどいないと思われる(いたら凄いが)。しかし
当時、子供たちに一時でも夢を与えたという点においては、意義あるソフトだっ
たにちがいない。子供相手の商売にも真剣さがうかがえるコナミの姿勢が、私は
好きである。
'93 7/2 NIFTY-Serve FCGAMEM
     ハンディゲームマシン会議室 #165(改稿)

                  (登録日 '96/12/11)

巴かずみのゲームソフトレビュー
/KAZUMI TOMOE'S GAME-SOFT REVIEW

ソフト発売1992年8月備考なし