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【ゲームボーイ】
『ONI III 黒の破壊神』
発売日 1993年2月26日
定価 4980
メーカー バンプレスト(→メーカーホームページ
内容  和風コマンドRPGシリーズ第三作め。


 最初から極悪なバランス。いきなり連続四回やり直し。ザコ戦なのに全然勝て
ない。奇跡の一勝に喜んだのもつかのま、すぐにまた敗北の嵐。受けるダメージ
がデカいうえに、こちらのすばやさの値が低いせいか先攻される。逃げられない。
二〜三匹一度に敵が出た瞬間、全滅が決定する。幸運にも敵が一匹のみ出たとき
にかろうじて倒して経験値を稼ぎ、レベルアップを狙わねばならない。運わるく
“必殺の一撃”をくらえばハイおしまい。出だしから、こんなにもプレイヤーの
やる気をそぐようでは、いくらかっこいいオープニングで興味をひいても、だい
なしである。

 町や特殊な場所以外ではいつでもセーブできる。問題なのはゲーム開始直後で、
うっかりセーブせずに最初のザコ戦に突入してしまうと、かなりの高確率で敗北、
長い長いオープニング劇場を再度見るはめになる。これは大変つらい。名前入力
した時点で自動セーブするか、序盤バランスを易しくするなどの配慮がほしい。
 ある程度強くなっても、ザコ戦一勝ごとにセーブしておかないと安心して歩け
ない。たまに、敵に出くわさずにけっこう歩けるのでいいなと思ったら、これが
罠だったりする。レベルが低いのにすいすい遠くまで行けるものだから、あっと
いう間に瞬時全滅ゾーンへ入りこんでしまう。強敵の巣が、すぐ行ける場所に何
気なくポンと存在している。「わー、何だろうここは」とちょっと探検のつもり
で入ったが最後、強烈なダメージをくらって全滅。まるでアリ地獄だ。

 一定のレベルに達していないと敵に歯がたたないので、しかたなく機械的作業
の経験値稼ぎをしなければならない。なのに、そういうときに限って、歩いても
歩いても敵に出くわさない。「敵に出あわずにどれだけ長距離歩けるか」の最高
記録をつくってやろうかと思うくらい、無意味にうろうろして敵の出現を待つ。
かと思うと別の場面では「少し歩くと敵。またちょっと歩くと敵」→「タコ殴り
されて全滅」→「タイトル画面に戻ってやり直し(このときのカーソル位置は、
“はじめから”になっている。“つづきから”にしておいてくれてもよさそうな
ものだが)」。このパターンが何度も繰り返される。自然と、「何なの、これ?」
というセリフが出てきてしまう。
 序盤はキャラがひとりきりなので全滅しやすく、やっとパーティプレイになる
後半でも、当然のことながら敵もバカ強くなるのでこれまた全滅しやすい。さい
わい、ゲームの最初から終わりまでずっとバランスが悪いわけではない。戦闘中
に体力がゼロになっても、戦闘終了後に体力1で復帰できるのは親切だし、多少
回り道をして我慢すれば、それなりに楽しめはする。

 前作で不便だった、買い物時における「一歩下がってカウンター再接触」の必
要はなくなり、改善された。キャラクター描写にもなる相談コマンドもちゃんと
あり、次の行動に迷うことは少ない。カーソルがすべりやすいのはあいかわらず
で、そのコマンドを指しているかしっかり確認してから決定しないと、すべって
誤決定になる。行動人数が2人以上になるとBボタンでキャラ表示の切り替えが
できるが、Bボタンはキャンセルボタンもかねているので、たまに押しすぎて、
切り替えるつもりはないのにキャラが切り替わってしまうのも困る。新しい装備
を身につけると攻撃力・防御力・すばやさのステータス表示が出るのも、装備後
の値しかわからず、どれだけ上がったか下がったかが確認しにくい。同時比較で
きるシステムのほうがよかった。
 画面切り替え時のグラフィックがスーパーファミコンのモザイク処理みたいに
なったり、建物の裏手を通れたりと、表現のしかたには工夫のあとが見られる。
セーブ画面のデザインセンスもいい。シナリオは章じだてになっていて、多彩な
キャラが次々入れ替わるため、展開が単調にならず、変化に富む。ひとりひとり
のキャラクターに魅力があり、セリフ回しが個性的でおもしろい。音楽も良い。

 シナリオやその他の面が悪くないだけに、残念なのはやはり一部のバランスの
悪さである。こういうゲームバランスの作品を見ると、「ちゃんとテストプレイ
したんだろうか」「したとしたら、誰もおかしく思わなかったのだろうか」「敵
キャラや町やイベントをデザインし、適当にばらまいて段階的に主人公が成長す
るように数値をならせば、それでRPGができたことになるのだろうか」などと
思ってしまう。
 途中で道草をくって経験値を稼いでからでないと進めないのは“RPGの常識”
なのかもしれないが、全滅によるやり直しがひんぱんにあるRPGは、その他の
要素がいくらすばらしくても、どうも好きになれない。とはいえ、じっくり腰を
すえて遊ぶつもりであれば苦労させられるぶん、やりがいのある作品だといえる。
'94 7/1 NIFTY-Serve FCGAMEM
     ハンディゲームマシン会議室 #177(改稿)
(登録日 '96/12/11)
ソフト発売1993年2月備考なし

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