『スーパーバレーボール』

 アーケードからの移植。コート横から見た視点
のバレーボールゲーム。試合中に景気づけの音楽
が流れたりせず、静かな雰囲気がリアルだ。ボー
ルを打ち合う音がよく聞こえる。
 ある日、ゲームショップで中古ソフトを物色し
ていて、手頃な価格にまで下がったこのソフトを
発見。さっそく購入することに決めた。ふと見る
と、お試しプレイができるゲーム機(100円で
好きなソフトを15分くらい遊べる)の周りに数
人の子供たちが集まって、ちょうどこのゲームで
遊んでいるところだった。ふむ、なかなか楽しそ
うだな、と横目でながめつつ、空のパッケージを
レジへ持っていく。すると、なぜか店員さんは子
供たちのほうへ行き、何やらしゃべり、ソフトを
手にして戻ってきた。……そう、在庫がそれ一本
しかなかったのである! 店員さんは、何百円の
客のために、何千円の客をたとえ数分でも待たせ
るようなことはしなかった。

(すまないな……でもこれが、大人の世界という
ものなんだ……)

 彼らの楽しい時間を取りあげてしまったことに
少し罪悪感をおぼえながら、ソフトを手に私は店
を出た。

   →1990年2月