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【セガサターン】
『AZEL(アゼル) −パンツァードラグーンRPG−』
発売日 1998年1月29日
定価 6800円
メーカー セガ(→メーカーHP
内容シューティングゲーム『パンツァードラグーン』シリーズがRPGに。


3D空間を飛ぶ楽しさを味わえる、シューティングRPG

 「伝説の生き物・ドラゴンが出てくるコマンドRPG」と聞いて、どんな
内容を思い浮かべるだろうか。

 ドラゴンを育てる。
 最後のボスがドラゴン。

 しかしドラゴンを、こんな風に使うRPGは珍しいだろう。町から町へと
旅する、普通のRPGを想像してこの作品を遊び始めると、ちょっと面くら
ってしまうかもしれない。なにしろ、ドラゴンに乗って空を飛びながら移動
し、シューティング風に戦闘していくゲームなのだから。

 セガサターンで発売された3Dシューティングゲーム『パンツァードラグ
ーン』『パンツァードラグーン ツヴァイ』をコマンドRPG化したのが、
この作品である。3Dシューティングゲームと見間違えてしまいそうなゲー
ム画面で、ドラゴンに乗っての空中戦をコマンド入力でおこなう。出現させ
たアイテムを自分の操作で追いかけて取りに行かねばならない通常のシュー
ティングとは違って、ポイントに自動照準を合わせて撃てば、遠く離れてい
ても自動的にアイテムを取得したり洞くつに入ったりできる。うまく入口を
通れなくてイライラすることはないし、障害物や地面に接触してもダメージ
はない。「シューティングは難しいからやらない」という人でも、シューテ
ィングゲームの「空を飛ぶ気分」や「撃ち落とす爽快さ」を味わえる。
 シューティングゲームではゲーム開始後、敵が大量に襲ってくるため、飛
ぶのを楽しむどころではない。また、RPGでは、空を飛んで移動できるよ
うになるのは「飛行船を手に入れてから」など、ゲーム後半であることが多
い。しかし、この作品では序盤からゆったりと空を飛べるのだ。

 戦闘になると、敵は中央に位置し、自分たちがその周りを動いて位置替え
をしながら攻撃する。四方向のうち、敵の弱点となる側から攻撃すれば、与
えるダメージも大きい。3D空間の中をプレイヤー側が回転することで、臨
場感たっぷりの迫力ある戦闘シーンとなる。カメラアングルが切り替わり、
画面に動きある変化をもたらす。攻撃がピンボールのようにはね返ってダメ
ージが連鎖したりするなど、見せ方にも工夫がある。攻撃できるのはドラゴ
ンだけではなく、主人公である自分も銃で戦える。状況に応じて両者を使い
分け、協力しあって戦うのがいい。
 戦闘はリアルタイム進行だが、コマンドウィンドウを開いている時は状況
が静止するので、リアルタイム制に慣れていない人でもゆっくりコマンドを
選べる。しかし、やはり戦闘はリアルタイムの方が面白い。実際の戦闘では、
自分が行動するまで相手が待っていてくれるわけではないのだ。
 時間が経過するにつれて増えるゲージが満たんになると攻撃を繰りだせる。
ゲージは3つ分まで溜めることができる。戦闘で使われずに残ったゲージパ
ワーが次回の戦闘に引き継がれるので、常に1ゲージ残しておいたり、ボス
戦の前にはフルゲージで準備しておくなどの戦略をたてられる。
 見た目が斬新なだけでなく、RPGには珍しいアイデアが他にもいろいろ。
敵を倒すまでの時間が短いほど、そして敵から受けたダメージが小さいほど、
経験値&アイテムを得やすくなる「戦績評価」。戦闘が始まったら敵の性質
を見抜き、効果的な攻撃方法を選択。早押しクイズのようにすばやくボタン
を押す。アクションやシューティングなどの技能系ゲームが苦手な人でも楽
しめるのがコマンドRPGの良さだが、「手際のよいプレイヤーには見返り
も大きい」という、リアルタイムシステムを活かすルールを取りいれれば、
毎回の戦闘が単なる単調な作業ではなくなり、戦闘への集中度も違ってくる。
良いシステムだ。

 いくつかのジャンルを複合させたゲームは過去いくつもあった。RPGに
アクション性を持たせたものをアクションRPGと呼ぶ。RPGにシューテ
ィングをとりいれたものをシューティングRPG……というのは、あまり聞
かない。今までになかった組み合わせ−−いや、ありはしたけれど良さを完
全には引き出していなかったジャンルである。
 「ルールを覚えるのが大変で、自分の思い通りに操作できないのではない
か」という先入観が無意識に生じ、既存の面白さで満足しているユーザーに
敬遠されかねないため、新しいアイデアを試みる時はひとつの賭けとなる。
なじみのない操作を苦労して覚えるよりも、慣れたシステムで楽しむ方が楽
で簡単だからだ。しかし、新しい挑戦なくしては、新しい魅力も生まれない。
 この作品は、コマンドRPGと3Dシューティング、ふたつのゲームジャ
ンル要素をミックスすることで、「RPGとはこういうものだ」という既成
の枠から確実に脱している。力の入ったグラフィックながら、人物デザイン
が少々地味なのが物足りないが、意欲作である。
(「まぐまぐプレミアム」発行(2003.2.13)・
有料メールマガジン「巴かずみのゲームソフトレビュー(有料版) Vol.5」改稿)
(HP登録日 2003/6/9)

ソフト発売1998年1月備考なし

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