『ユートピア』<UTOPIA>
発売日 1999年2月11日
定価 9500円
メーカー エピック・ソニーレコード
内容  惑星にコロニーを建設し、繁栄させていくシミュレーション。

 説明書を熟読してからでないと遊べないタイプのゲームは面倒くさい。プ
レイしているうちに自然に操作方法が身につく−−「主なところは実戦で学
び、さらに精密なプレイのために説明書を読んで補足とするようなつくり」
が望ましいと思う。しかし世の中には、まず説明書を読まないことには何が
何だかわからないゲームも存在する。この作品もそのひとつであろう。
 なにしろ、説明書(※折りたたんだ1枚の紙。説明が少ない)を読んでも
理解しづらい。練習モードが用意されているが、要領を得るまでに時間がか
かる。グラフィックセンスも独特で、紙ヒコーキのようなものがフワフワ飛
んでるなと思ったら、それが敵の攻撃だとわかって慌てさせられたりする。
リアルタイムに時間が流れるため、プレイヤーの理解度などおかまいなしに
容赦なく状況は進行していく。やるべきことが常にあり、少しも気を抜けな
い。とにかく忙しい。コントローラーに接着剤でも塗ってあるかのように手
が放せない。放すと確実に不利な展開を招くからだ。調子のいい時は大変調
子がよく、いったん悪くなると地獄絵図のごとく悲惨。後手に回ると状況が
どんどん悪化し、最初からやり直したほうが早いということになってしまう。
 おそらく、ハマる人は他のゲームでしばらく遊べないほど熱中し、合わな
い人は最初の数分できっぱりと投げだすような両極端な作品である。操作に
慣れてコツさえつかんでしまえば、ポーズ機能を使うのも忘れて、ぶっ続け
でゲームに集中。気がつくと数十分たち、ハッと我に返る自分がいる。物事
をうまく運ぶには現状のデータをよく分析し、不足要素の補強を着実に実行
していかなければならない。ヘタな指示が即、状況の悪化につながるこの作
品は、優先順位決定能力を養うための、良いシミュレーターとなってくれる
だろう。
 開発すべき星は複数あり、ひとつの惑星のクオリティ(生活水準)値を1
00%にすればステージクリア。次の星の開発に着手できるようになる。初
めはほとんど何もない土地の上に、さまざまな建築パーツを置いて好きなよ
うに町をデザインするのが楽しい。小さな集落はプレイヤーの手によって、
次第に大都市へと発展していく。
 タイトルの“ユートピア”が意味するのは“理想郷”。ゲームの目的は、
荒野を立派な近代都市へと造り変えることである。技術革新だけが進み、自
然が破壊された世界。閉鎖的空間に建築物が息苦しいほどギュウギュウづめ
に並び、侵入者の攻撃におびやかされ、戦力を増強して敵をたたきつぶし、
自分たちの繁栄のみを守りつづける。そして瞬間風速的にクオリティ値が1
00%になれば問題が山積みのままでも放置し、次の惑星へ行って同じこと
を繰り返す。これで住民は本当に幸せなのだろうか。今の地球を思い起こさ
せる姿に、何だか悲しい気持ちになる。
 このような世界こそが理想郷だと言いたいのならちょっと恐ろしい。が、
ここはやはり逆説的にとらえたい。つまり「本当の平和・安心とは何か」と
いう問いを考えさせることが、この作品に秘められたテーマなのではないか
ということだ。ひとつの惑星を制覇したときの達成感と、その裏に潜む、か
すかな虚無感。飽和した都市を眺めて、プレイヤーはいったい、何を思うの
だろうか。
(登録日 '02/5/25)

ソフト発売1993年6月備考なし