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【スーパーファミコン】
『スーパーマリオ ヨッシーアイランド』
発売日 1995年8月5日
定価 9800円
メーカー 任天堂(→メーカーHP
内容 スーパーFXチップ搭載のアクション。


■ほんわかグラフィックの、マリオシリーズ新バージョン

 ファミコン時代から任天堂の看板キャラクターをつとめる、スーパーマリ
オシリーズのマリオ。おじさんキャラのマリオにも当然、子供の頃があった。
この作品では、赤ん坊(正確には、生まれる前)のマリオが出てくる。今回
の主役はヨッシーという名の恐竜。「恐ろしい竜」と書いても全然恐ろしく
はない。仲間と協力してベビーマリオを目的地へ運んであげようという、気
のいいヤツらなのだ。
 ヨッシーたちは駅伝の要領で、背負った赤ちゃんマリオを次々にバトンタ
ッチしながら進んでいく。赤ん坊は手がかかるものと相場が決まっている。
時々、将来の大活躍をうかがわせる力を発揮するが、赤ちゃんマリオははっ
きり言って“(文字どおり)お荷物”だ。アクションするうえでハンディキ
ャップとなる。それでも、どこかに置き去りにするわけにはいかない。赤ち
ゃんマリオを連れていくことがゲームの目的なのだ。もし失敗すれば現在の
マリオは生存していないことになり、そうすると、今の任天堂もなかったか
もしれない。ヨッシーたちの使命は、かなり重要なのである。
 グラフィックの出来がとにかくすばらしい。夢のある色づかいとタッチで、
とてもあたたかい。じっくり描きこまれていて、見ていると楽しい気分にさ
せてくれる。メッセージ文字やウィンドウのデザインにいたるまで、手づく
り感覚が画面いっぱいにあふれている。このソフトには“スーパーFXチッ
プ”という特殊チップが積まれていて、より高度なグラフィック表現を可能
にしているが、チップの力もさることながら、この絵のレベルの高さは描き
手の実力と根気によるものだろう。
 特別なチップまで使っているのだから、普通のアクションゲームではなく、
グラフィックに凝りまくったものをつくろう−−それが、この作品のテーマ
であるかのようだ。絵を見せることに重きを置くという大前提は、同時にゲ
ームの性質を決定する。今までのマリオシリーズのように、目にも止まらぬ
スピードで一気に駆け抜けてゆかれては、いい絵を用意した意味がなくなる。
絵を鑑賞してもらうためには、スピーディな動きをある程度、犠牲にせざる
をえなくなる。そのためか、テンポは非常にゆっくりだ。背景のどの部分も
「私を見て!」と自己主張の念波を発しているので、目をとめないわけには
いかなくなる。
 その結果、息もつかせないほどの緊張感・アクションとしての爽快さには、
少々欠ける。開発陣も当然そのことは意識していると思われる。カウントダ
ウンをとったり、強制スクロールを取りいれたり、無敵モードをつくったり
して、動きあるプレイになるようにしているのはわかる。しかし、根本的な
スピード感の欠如は補いきれず、従来のスピーディなマリオのアクションが
好きな人には、物足りなさを感じさせるかもしれない。入り組んだマップを
うろうろしながら進むところは、任天堂のスーパーファミコンソフト『スー
パーメトロイド』のゲーム性に近い。頭を使って道を切り開かせる仕掛けが
こらされているので、進めなくて悩むところもある。途中途中でセーブしな
がら進むため、「電源を入れたらエンディングまで一気につっ走る」のでは
なく、「毎日少しずつ遊んで少しずつクリアしていく」といった感じだ。

■神経のいき届いた、一級品のこだわり

 ヨッシーは、さまざまな特技を持っている。カメレオンのように舌をのば
して敵をまるごとゴックリのみくだし、たまごに変えてしまう技。シューテ
ィングゲームにおけるオプションのように、たまごをいくつも従えつつ、そ
れを使って攻撃したり、道を切り開いたりする。他に、モグラに変身して地
面を掘り進んだり、スイカをシャグッと口いっぱいにほおばってプププ……
と種吐き連射をしたりと、楽しさいっぱいの動作がたくさんある。赤ん坊マ
リオが連れ去られようとしている風船玉を舌で割ってまた背中に背負い直す
というシステムはなかなかユニーク。いくつものボタンを駆使し、あらゆる
動作をさせることができる。アクションの幅が豊かだ。
 ボタンを押し続けることで滞空時間の調節ができることが、アクションに
微妙な味つけをしているが、「いったん地面より低い位置へ落ちてしまうと、
どれだけあがいてももう上がることができずに墜落して1ミス」というのは
キツかった。落っこちたら終わりとか、スクロールに追いつかないとはさま
れるとか、さまざまな趣向をこらした面が数々、用意されている。いろいろ
な個性的操作があるため、慣れるまではむずかしく感じる。ていねいな説明
がゲーム中ところどころで出てくるが、なかなか覚えきれない。逆にカッタ
るく感じてしまうくらい親切に、少しずつ操作に慣れていくよう誘導してく
れるのは、このソフトを遊ぶ、多くの子供たちのことを考慮してあるせいだ
ろう。しかし、それでもやはり後半のステージ(特にボス戦)の難易度は高
めで、何度も挑戦し直してようやく勝てる。
 どの場面の絵と音にも工夫がこらされており、背景の遠近感・キャラクタ
ーの豊かな動きと表情・ゲームシステムのデザインセンスが大変良い。パチ
ンコやバスケットボール、ブロックくずし、ビリヤードなど、遊びのエッセ
ンスがゲーム中につめこまれている。マリオが飛びまわるアクションに比べ
てスローテンポであるが、こういう形のアクションも、魅力的である。
(「まぐまぐプレミアム」発行(2003.1.13)・
有料メールマガジン「巴かずみのゲームソフトレビュー(有料版) Vol.4」改稿)
(HP登録日 2003/5/9)

ソフト発売1995年8月備考なし

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