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【スーパーファミコン】
『ロマンシング サ・ガ2』
<Romancing SaGa 2>
発売日 1993年12月10日
定価 9900円
メーカー スクウェア(→メーカーHP
内容  コマンドRPGシリーズ第2作め。

■歴史の流れを体験する、戦闘重視型RPG

「なんじゃあ、このゲームバランスは! フザけるなー!」

 このゲームを遊び始めてしばらくたつと、思わずこう叫びたくなる。おそ
ろしいまでの大ダメージでパーティは全滅。強くなるために経験を積もうと
しても、最初の一戦でアッサリたたきのめされてしまう。味方パーティが強
ければ、どんな強敵をも蹴散らし、自信満々で進むことができるのだが、弱
いと状況は地獄に一変する。調子がいい時と悪い時の差が、むちゃくちゃ激
しい。

「こんなゲーム、キライだっ☆」

 と思いつつプレイしていると、味方もだんだん強くなってきて、ようやく
話が進むようになる。すると、おもしろくなってくる。しかしまた少したつ
とコテンパンにやられ、何度も連続して負ける。

「やっぱりこんなゲーム、キライだーっ!」

 上記のパターンをひたすら繰り返すうちにコツがつかめてきて、その頃に
はすっかり、ゲーム世界にとりつかれている。

 ワラワラうごめく敵が猛スピードで突っ込んできてぶつかり、戦闘になる
パターンは前作と同じ。うまくよけながら進めば、戦闘になることはない。
前作から変更されたのは、「戦闘終了後、体力と状態が完全に自動回復する」
「一部のボス戦などを除いて、逃走がほぼ100%成功する」という2点。逃げ
るたびに少しずつキャラの位置がズレていくので、袋小路に追いつめられな
い限り、逃げることが可能だ(ちょっと面倒だが)。逃走後、またすぐに同
じ敵にぶつかっても、出くわす敵の種類はそのつど違う。いくつかパターン
が用意されている。中には、「こいつからは絶対に逃げなければならない!」
という信じられない強さの、ボスクラスに匹敵するザコ敵もいる。
 前作『ロマンシング サ・ガ』と共通する特徴は、
「敵がめちゃくちゃ強い」。そして、
「クライマックスがものすごく盛り上がる」こと。
 全滅に全滅を重ねて苦汁をなめ、ようやく最後の決戦にたどり着いた時の
ワクワクする血のたぎりは、他のRPGではめったに味わえない性質のもの
だ。ゾクッとするほどの臨場感である。

 フリーシナリオのため、ひとつの事件がまだ未解決なのに、別のシナリオ
に首をつっこむはめになる。あっちをちょっと、こっちをちょっとやってい
るうち、物語は最終決戦へと向かって進んでいく。「ひとつひとつの物事を
きっちり順番に片付けていくのが好き」という人は、ちょっとイライラする
かもしれない。あるはっきりとしたルートを持つ他のRPGと比べると、プ
レイヤーの選択自由度が高い。ああすることもできるし、こうすることもで
きる。どっちを先にするか、選べるのだ。
 通常、RPGでは、先へ進むにしたがって(主人公のレベルが上がるにし
たがって)、周りの敵の強さも、それを見越して計算されたものが出てくる。
『ロマサガ2』は、難易度段階がそれぞれ異なるイベントがあちらこちらに
埋まっている。プレイヤーは自分でそれを掘り起こし、今のパーティに最適
なバランスの敵が出る場所を探さないといけない。セルフサービスなのだ。
強すぎる相手と無理に戦っても、勝てるわきゃないのである。どこかで修業
してくる必要がある。
 強敵に対抗する手段として画期的なナイス・アイデアなのが、「見切り技」
システム。かなり強くなったのに、「この私がスライムごときに1ポイント
でもかすり傷を負わされるとは……!」という理不尽さを感じることが、従
来のRPGではよくある。見切り技は、一度ひとつの技を見切ってしまえば、
どんなに強い敵からの攻撃であろうと、(キャラクターの意識がある限り)
その技を完全にかわせる。これは快感である。「ふ、キサマの技など、すで
に見切っておるわ」と、ニンマリすることができる(笑)。見切り技は一度に
限られた数しか持てないので、一度覚えたものは格納しておき、好きな時に
また覚え直せる。その時々の戦いに、その技能を装備していくべきかどうか、
考える戦略性が生まれるのが良い。

 聖 悠紀(ひじり ゆうき)の漫画に「超人ロック」というSFシリーズがあ
る。並みはずれた超能力者であるロックは、年をとらずに永遠に生き続ける。
周りの人間は自然のおきてにしたがい、次々に死んでいく。誰とどんなに心
が通じ合っても、いずれ彼はひとりになる。
 このゲームにおいて、プレイヤーはロックの立場に似ている。時の流れを
越え、経過のすべてを知る存在。ひとつのパーティのメンバーが志なかばに
して倒れると、彼(彼女)らの役目はそこで終わる。そして次の新メンバー
が遺志を継ぐ。ゲームスタートして最初のダンジョンで早くも全滅すること
だってある。物語は始まったばかりだというのに歴史に名を残すどころか、
「こんなところで死ぬはずじゃなかったのに!」という悲しい結果になる。
無念だ。それでも、物語は続行される。
 普通のゲームでは、勝利するまで何度も同じキャラクターで挑戦し続ける
が、この作品では失敗すると、いさぎよくメンバーが変わる。能力は次の人
物に受け継がれる。しかし、その力もいつまでも有効なわけではない。やが
て失われる時が来る。効力が切れてきて、物語の決着をつけることをプレイ
ヤーに急がせる。
 主人公が時の流れとともに次々入れ替わり、LP(ライフポイント)という
限られた値がゼロになると、そのキャラクターは永遠の死をむかえる。死人
が魔法やアイテムで気軽に生き返るRPGにおいて、死はちょっとした昼寝
にすぎない。ところが、この作品では寿命が設定されていて、無茶ばかりし
ているとどんどん命を縮めてゆき、ついには若くして命を落とすことになる。
多くの人々の死の積み重ねが、そのまま歴史の重みとなっていく……。
 「これぞ、ゲームデザイン」と呼ぶべきシステムである。どこかで見たよ
うな形にちょっとだけ独自の味つけをしたゲームとは確実に違う。「何度も
失敗しつつ進んでいく」のが当然のつくりになっているので、「こういうゲ
ームなんだ」と割り切ることができなければ、途中で投げ出しかねない。が、
手ごたえある戦闘を望むRPG好きには、やりがいがある一本だろう。
(「まぐまぐプレミアム」発行(2002.12.13)・
有料メールマガジン「巴かずみのゲームソフトレビュー(有料版) Vol.3」改稿)
(HP登録日 2003/4/1)
ソフト発売1993年12月備考なし

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巴かずみのゲームソフトレビュー