『レナス〜古代機械の記憶』<LENUS>

発売日 1992年11月13日
定価 9600円
メーカー アスミック
内容  個性あふれるグラフィックが目をひく、コマンドRPG。


 華やかで、淡くきれいなグラフィック。この作品の一番の魅力はこれだ。背景
などが独特のデザインで、ファンタジー世界の魅力を描きだしている。ゲーム中
のグラフィックイメージとパッケージイラストとがそんなに食い違っておらず、
統一感がある。説明書のイラストも超美麗で、個性が光る真の美を感じる。曲も
場面ごとにこまかく用意されており、なかなかいい味を出している。
 コマンド入力方法もちょっと変わっており、十字キーのみで入力をおこなえる
ので片手操作ができて楽だ。最初は少しとまどったが、慣れてくると感覚的かつ
スピーディな操作が可能になる。

 旅の途中で、さまざまなキャラクターを仲間にしていく。彼らの基本装備は変
更することができない。新しい仲間が入るたびにいちいち装備を買い与えて出費、
しかし別れは突然で、「あの装備高かったのに! アイテムも持っていっちゃっ
て……フッ、しかたない、私からのせんべつということにしてやろう」などとケ
チくさいことを考えたり、ひどいときには仲間と別れる前に彼らの装備をはぎと
って売り飛ばし、ちゃっかり換金しておいたりといったセコい手はつかえない。
装備の買い替えや着せ替えをしなくてすむので楽だし、何よりもあくまで彼らの
好きなコスチュームで参加するというのがいい。強力な鎧だからといって全員が
全員同じものを身にまとっているのは、考えてみれば没個性的である。

 精霊の組み合わせによって、効果の異なる呪文がうまれる。魔法は使えば使う
ほど威力が高まり、よく使う精霊ほど、その系統の呪文が強力になっていくシス
テム。リアルでいい。この作品では珍しいことに、体力回復の魔法がない。敵の
HPを吸い取る魔法はあるが、そんなものをいつもあてにするわけにはいかない。
回復は「ボトル」に入れてある薬を使用する。これはこの作品の個性ともいえる
が、少々面倒なシステムである。ボトルがすべて空っぽになり、補給場所へ行け
ない状況になると苦しい。武器や防具のなかにはアイテムとして使うことで体力
回復効果を持つものもあるが、それが「使う」ことのできるものだと気づかなか
ったり、ダンジョンなどに眠っている効果の高いボトルを入手しないまま通り過
ぎてしまう場合だってありうる。
 さらに戦闘中に気絶してしまうと、その戦闘にはもう復帰できない。気絶回復
魔法&アイテムが存在しない。これは非常につらい。特にボス戦で、主力である
主人公が欠けてしまうと「残ったメンバーで勝てるわけないじゃないか〜」状態
になり、みるみる戦局は悪化、そして全滅となる。

 中盤で、戦闘がめんどうくさくて逃走ばかりしていたせいか、後半の戦闘がと
てもキツかった。「逃げる」は1ターンめで成功することが多い。しかしこれが、
後の悪夢を呼ぶことになる。敵の強さと味方の強さに大きく差がつき、戦闘バラ
ンスがくずれるのだ。出現する敵の数が多く、それがまた一匹一匹カタくて強い
奴らばかり。こちらの戦力が弱いためにすぐに片付けられず、一回の戦闘がやた
ら長びく。特に後半で使う強力魔法のグラフィック効果は、凝っているので毎回
数秒待たされる。ハデできれいなのは確かに魅力的だが、時間がかかってしょう
がない。

 システムには独自性が見受けられるものの、展開は基本的によくあるパターン
を踏襲している。が、視覚的な面においての新鮮さは突出している。グラフィッ
ク面に、新しさの可能性の方向を見た。従来のコマンドRPGの骨組みを、こだ
わりのグラフィックでデコレーションした印象である。システムにしろグラフィ
ックにしろ、デザインセンスというものがいかに大切かをあらためて考えさせて
くれる。センスがよければ、遊んでいて気分がいいのだ。続編が出るなら、今度
は骨組み自体もよく吟味してほしい。そうすれば、より個性的な作品としての道
が開けることだろう。


'94 5/13 NIFTY-Serve FCGAMEM
     ファミコン&スーパーファミコン会議室 #622(改稿)
                   (登録日 '96/12/25)
ソフト発売1992年11月備考なし