『真・聖刻(ラ・ワース)』<La WARES>

発売日 1995年4月21日
定価 9800円
メーカー ユタカ
内容  ファンタジーと機械文明がミックスした世界の、コマンドRPG。


 キャラクターやいろいろな名称に、栗本薫の小説「グイン・サーガ」の影響を
感じる。そこに「操兵」と呼ばれるロボットの存在が混ざって、ひとつの世界を
形成している。味のあるセリフと魅力的なキャラクターデザインは好感がもてる
が、物語の奥は浅い。どの人物の描写も中途半端で、活かしきれていない。

 ゲームのおもしろさのひとつに、「選択の楽しみ」がある。ある状況に対して
用意されたいくつかの行動のなかから、どれをどういう順番で実行するかをプレ
イヤーが選び、結果に一喜一憂する。それが楽しいのだ。
 この作品のボス戦は、「多少の実力差があっても工夫しだいで勝てる」という
ものではない。アイテムや特殊コマンドによる攻撃補助が貧弱で、選択の余地が
少なく、勝敗はひたすらレベル数に支配される。「数字の書かれたカードを見せ
あって、数の多いほうが勝ち」といった程度の、まったく味気ない勝負である。

 戦闘には操兵戦と、人間でのパーティ戦の2種類あり、時と場合によって切り
替わる。この2つの戦闘の相互バランスがよくない。パーティ戦ではついに一度
も宿屋に泊まらなかったし、アイテム類を使う必要すらなかった。ところが操兵
戦ときたら、戦闘中の回復がいっさいできない消耗戦、しかもレベルを上げるか
町へ戻って修理を頼むかする以外に、ダメージ回復方法がない。
 操兵の強さは主人公のレベルの高さに直結している。パーティ戦で楽々勝って、
「さあ、この調子でボスも倒すぞ!」と操兵戦に挑んでも、ボロ負け。ボス戦は
ほとんどすべて操兵戦だ。ひとつのボス戦から次のボス戦までに、少なくとも1
〜2レベルは上げておかないと太刀打ちできないのに、その間の通り道に戦闘が
なかったりする。普通の通路を歩いているといきなり場面が自動的に動きだし、
セーブする時間も与えられずにボス戦へ突入することもよくある。かなりキツい。

 しかたなく、ボスの直前でパーティによるザコ戦をたっぷりとこなし、地道に
レベル上げをするはめになる。ダンジョンマップはどこもワンパターンで、何の
飾り気もない。同じ場所をひたすらウロチョロして経験値稼ぎしなければならな
いのは苦痛だ。レベルが上がるとより強い敵が出現するようになって、もらえる
経験値量が増える工夫がされているのはいい。が、ただボタンを連打するだけの
単調な戦闘は飽きる。

 操兵で殴ったり蹴ったりするとき、剣で切り込んだような表現になるのは違和
感がある。質感が出ていない。効果音にしても、ガシーンとかドカッとかいう音
のほうが迫力が増すのではないだろうか。ザコ戦では、自分と敵の攻撃グラフィ
ックが似ているため、どっちが攻撃しているのか見分けにくい。ボス敵の攻撃グ
ラフィックはなかなかキレイだが、味方の戦闘コマンドはあいかわらず「殴る」
「蹴る」「防御」の3つのみで、あまりカッコよくない。必殺技のひとつくらい
あってもよさそうなものだ。
 「殴る(当たりやすいが攻撃力は低い)」では弱いので「蹴る(命中率が低い
代わりに、与えるダメージは大きい)」を使うと、本当に驚くべき高確率でミス
ってくれる。操兵の凄さをアピールする見せ場がないうえに攻撃をスカスカはず
しまくるのでは、戦闘に爽快感がうまれない。

 操兵での移動はオートパイロット。目的地を指定すれば後は勝手に歩いていく。
……のはよいのだが、悲しいことに途中で行き先の変更ができない。ブレーキの
こわれた自動車のように止まれない。初めて通るルートでは、移動終了までどれ
くらい距離があるのか、つかめなくて困る。
 操兵の燃料&HPが減っていても、移動時にはなぜか、いつも満たん表示にな
っている。移動時のグラフィックは“はりぼて”で、現在の状態が反映していな
い。戦闘に入ると現在値表示に戻る。また、説明書では「燃料がなくなると移動
できなくなる」と言っているが、実際は、移動はできるが攻撃・防御などができ
なくなる。戦おうとしても強制的に逃走してしまうのだ。プログラマーの力不足
(あるいは努力不足)のせいで、こうなるんだろうかと思ってしまう。

 文字表示がかなり大きいのは読みやすい。レベルアップ時の表現がおもしろい。
歩行スピードが速いのもいい。曲や効果音の響きに深みがある。操兵関係の絵は
独特だし、敵グラフィックもていねいに描かれている。
 しかし、装備交換時にステータス変化がわからない、買いものするときにあら
かじめ値段が表示されていない、体力回復しようとするときに現在の状態が表示
されない、装備時には武具以外のアイテムもすべて表示されるが武具なのかアイ
テムなのか判別しにくい名称がある、コンティニュー時のカーソル位置が“はじ
めから”になっている(これはゲーム開始時の画面をそのまま流用しているため
だ。ちなみにゲームオーバーになってから“はじめから”を選択すると、バグの
パッチワーク地帯にとばされることがある)などなど、あちらこちらで洗練不足
なところがめだつ。

 グラフィックの見栄えは悪くないし、凝った物語設定にも興味をひかれる。だ
が、実際遊んでみると「何だ、こけおどしか」とガッカリする。融通のきかない
システムやボス敵の無配慮な配置は、まるでプレイヤーのことなど眼中にないか
のようだ。外見をどれだけ飾ろうが、中身がともなわなければ魅力的な作品には
ならない。どうやら、表面的な体裁を整えることに忙しくて、内容を充実させる
余裕がなかったようである。


'95 10/26 NIFTY-Serve FCGAMEM
     ファミコン&スーパーファミコン会議室 #13401(改稿)
                    (登録日 '96/12/25)
ソフト発売1995年4月備考なし