『ライトファンタジー』<Light Fantasy>

発売日 1992年7月3日
定価 8900円
メーカー トンキンハウス
内容  勇者の成長を描く、ファンタジー・コマンドRPG。


 『ファイナルファンタジー』および『イース』シリーズから影響を受けている
ようだが、独特の魅力は持っている。グラフィックは、ファミコン時代のそれと
たいして変わらない。悪いというわけではなく、地味ではあるが懐かしくホッと
する感覚の絵だ。ほのぼのしている。
 メッセージがあたたかい。汗マークや猫の足あとマークなどが使ってあるおか
げで、こまかいニュアンスまで表現され、読んでいて楽しくなる。相談コマンド
に出てくるメッセージにもいろんな種類があって、ほほえましい。

 「光」「闇」「勇者」「女神」「魔竜」など、使いふるされた素材がたくさん
出てくるものの、シナリオ展開はなかなかいい。場面の雰囲気づくりが上手だ。
人と魔物の共存というテーマは新鮮で、これがゲームシステムに溶けこみ、作品
の個性となっている。
 主人公は勇者の末裔(まつえい)。最初はちょっと弱虫である。「いつでもキ
リリと勇ましく」「恐怖を表にあらわさない」ことを義務づけられた典型的勇者
のタイプからは外れていて、親しみやすい。誰だって、こわいときはこわいのだ。
恐怖を感じながらも、立ち止まることなく思った方向へ進んでいけるのが、勇者
の勇者たるゆえんなのだ。

 普通の村人やザコ戦の魔物が、旅の仲間になってくれることがある。こいつら
が、泣けてくるほど弱い(もちろん育てれば強くなるが)。序盤では自分の装備
をそろえることすらままならないので、とても仲間のめんどうまで見きれない。
出てくる敵は容赦なく強く、仲間はバタバタ倒れていく。よろよろの婆さんなん
かを死なせてしまった日には、罪悪感いっぱいである。これは、戦うために選ば
れた勇者と、戦闘にあまり向いてないキャラとの差がよく実感できるシステムだ。
主要キャラクターの重要性をきわだたせ、世界観に深みを増す効果を上げている。

 戦闘では、シミュレーションRPGっぽく行動可能範囲が表示され、敵のそば
まで移動しながら戦う。敵の数は多く、しかもけっこう強い。敵・味方とも、攻
撃を受けるたびにダメージの度合いを示すセリフをひとりずつしゃべるので、全
然スピーディではない。やたら時間がかかって、どうにもかったるい。
 オートコマンドは一応あるが、はっきり言ってこれがタコである。効率が悪い。
敵にまっすぐ向かっていかずになぜか意味もなくヘンな方向へ移動したり、攻撃
のチャンスなのに攻撃しなかったり、逃げる必要がないのに逃げだしたり、よく
わからない行動をとる。オートにすれば戦闘時間が短くなるかと思いきや、逆に
長くなってしまうのだ。通常のザコ戦一回で5分以上(!)かかることもある。

 ボス戦は気合いが入るので戦いの手順のひとつひとつも楽しめるが、ザコ戦で
はちょっと単調だ。シミュレーションRPGというジャンルが楽しいのは、毎回
の戦闘が特徴あるステージ構成になっていることと、終われば話が進むという、
“ごほうび”が後に控えているのがわかっているからだ。似たような戦闘を大量
にこなさねばならない普通のコマンドRPGにおいて、この戦闘形式は(よほど
魅力を持たせなければ)めんどうくささが先にたってしまう。サクサク進みたい
者にとってはちょっとイライラさせられる。
 戦闘は、特殊攻撃との戦いと言っていい。毒、眠りなどの特殊攻撃をほとんど
の敵が使ってくるので、毎回何らかの症状におちいり、治療が必要になる。回復
魔法あるいはアイテムを持っていないとお手あげである。魔法はけっこう魔力を
消費するので、そう何度もかけられない。回復手段がなく、全員が操作できない
状態におちいってしまうとハマり状態になり、リセットせざるをえなくなる。全
滅するのがわかっていながら、逃げることすらできないのだ。
 特殊攻撃を受けると、キャラクターは状態変化を示すマークに化ける。複数の
キャラ表示が同じマークになってしまうと、誰が誰だかわからなくなってしまい、
治療しづらいのが困る。このへんは、何らかの工夫がほしかった。

 調子いいときと悪いときの差がはげしく、圧倒的に敵が強すぎる場合がある。
装備が不十分だと悲惨な目にあう。ストーリーが進むと敵も強くなっていくが、
そのバランスが少々ズレている感じだ。味方のレベルはなかなか上がらないのに、
敵の強さばかりが上がっていく。しばらくセーブしていないとかなり戻されて、
プレイの気力が減退する。また、メインキャラがひとりでも死ぬとゲームオーバ
ーになってしまうので、こまめなセーブが必要になる。
 ダンジョン脱出や村への瞬時帰還手段がないというのもめんどうくさい。いち
いち歩いていかねばならず、すごく疲れる。緊張感のある旅ができるのはいいけ
れど、やはり不便ではある。村から村への移動手段はあるのだが、わかりにくい
位置にあるので、気がつかない人もいるかもしれない。一部、背景に溶けこんで
いるせいで見落としてしまいそうな重要ポイントがあるのは、いきづまる原因に
なりやすい。

 レベルが上がるとステータス回復、そしてどこでもセーブ可能というシステム
のおかげで、宿屋へ戻る必要はほとんどない。宿屋に泊まるのはめんどうなのだ。
広い宿屋の奥まったところにベッドがあって、そこまで歩いていかねばならない
し、出発できるようになるまで時間がかかる。あまり利用する気にはなれない。
さいわい、準備さえしっかりしていれば連続して旅に出ていられる。これはなか
なか楽しかった。ボスを目の前にして、「ザコ戦で消耗したから、いったん村へ
帰る。また来るから待っててね」などと引き返していては、ノリが悪くなってし
まうというものだ☆

 ゆったりしたテンポが気にならなければ楽しめる。戦闘と移動のかったるさを
我慢できなければ、途中で投げだしたくなる。快適さには欠ける。昨今の、「超
親切システムRPG」に慣れていると、ストレスがたまりまくること必定である。
しかし全体を通して一本、筋が通っており、「とにかく手は抜いてない」という
開発者の姿勢はうかがえる。不満も確かにあるが、この作品に対してあまり悪く
言う気がしないのは、そのせいなのだろう。


'95 8/18 NIFTY-Serve FCGAMEM
     ファミコン&スーパーファミコン会議室 #11896(改稿)
                    (登録日 '96/12/25)
ソフト発売1992年7月備考なし