『魍魎(モウリョウ)戦記 MADARA2』

発売日 1993年7月16日
定価 9800円
メーカー コナミ
内容  漫画が原作のコマンドRPG。この作品はオリジナルストーリー。


 ファミコン版の1は途中でいきづまり、挫折した。原作はチラッと見たことが
あるだけで、まだちゃんと読んでいない。FC版でもそうだったが、原作をよく
知らなくても、設定がちょっと独特なゲームだなと思うくらいで、特に困ること
はない。知っていたほうがより楽しめるが、そうでなくても普通にプレイできる
だろう。

 CD−ROMばりにきれいなデモシーン。気合いが入っている。背景グラフィ
ックなども美しい自然色で、作品のムードを高めている。春夏秋冬の四季の移り
変わりがあって、一定の距離を歩くごとに景色の色あいが変化する。画面に飽き
がきにくい。
 ストーリー展開は完全な一本道でなく、途中でいくつかのイベントがあちこち
に散らばっている。ある場所で敵が強くて進めないなら、別の場所へ行き、イベ
ントをすませてから戻ってくると、勝てるようになる。全体マップはけっこう大
きいが、ひとつひとつのダンジョンはそんなに広くない。意地悪なしかけもなく、
疲れきることはない。敵の出現率もほどほどである。

 物語のなかでキャラクターが活きている。特に主人公の性格が強く打ち出され
ているのが良い。何人かの仲間と出会い、そのつどパーティを組み替えながら進
んでいく。別れた仲間とはまた後で酒場で会えば、再度仲間にできる。どうやら
彼らは別れてからも独自の修業をつんでいたらしく、いつでもレベルは主人公と
ほぼ同程度だ。「しばらく仲間にしていなかったブランクのためにレベルが低く、
使いものにならない→どうしても固定メンバーになる」といったことがない。戦
闘終了時に重症(HPがゼロ)になっていてもちゃんと経験値は加算されており、
「弱いキャラは戦闘不能になりやすい→経験値をもらいそこねる→レベルアップ
がますます遅れる」という悪循環もない。

 戦闘はオートが基本。オートコマンドが、コマンド群のカーソル初期位置に配
置されているので、ボタンを一度押すだけでオートバトルになる。防御コマンド
はなく、ひたすら戦うか、逃げるかである。HPが残り何パーセントになったら
オートバトルを強制解除する「警告セット」機能で、フォローも万全だ。
 戦闘シーンは、FC版のものをよりリアルにしてある。原っぱでケンカしてい
るのをプレイヤーがながめていて、危なくなったら補助する、という感じ。リア
ルなキャラクターがアニメして戦闘する。アクションゲームっぽくて(よく見る
と)かっこいい。一回の戦闘のうち、最後に倒した敵の殺られかただけ変えてあ
るのも、にくい演出だ。が、地味といえば地味である。敵と遭遇した瞬間、敵が
大アップで迫ってくる絵が出るのは戦闘画面の地味さのカバーになっているし、
魔法をかけるときなどにピカピカと光る効果などはとてもきれいで目立つのだけ
れど、剣での通常攻撃はハデさがなく、インパクトに欠ける。何か特別の必殺技
みたいな剣技があってもよかった。キャラクター表示は小さめで戦闘は混戦なの
で、よくよく見ないと誰が誰だかはっきりしない。

 システム面にかなり気が配られている。店での買い物と、武具装備が大変便利。
とても親切な設計だ。値段が高すぎたり、レベルが足りないために装備できない
武具があちこちに出てくるので、「自分なんてまだまだなんだ、上には上がある
のだ」と思うことができて、気がひきしまる。絶えず目標が存在するのは、緊張
感があっていいことだ。キャラクターに合った武器を装備すると攻撃力が飛躍的
にアップすることもあり、そういうこだわりもうれしい。

 ふしぎなことに、全滅しても腹がたたなかった。残念ではあるけれど、ムカム
カするいらだちとは無縁だった。全滅しても状態はそのまま、持ち金も減らない
システムのせいだろうか。作品全体をつつみこむふしぎな雰囲気と、気配り十分
のシステムに緩和されたのかもしれない。全体に、気分のいいテンポで進むこと
ができる。
 経験値はちまちまと数十ポイントずつセコく稼ぐのではなく、一度に何千単位
で入る。そのぶんレベルアップに必要なポイント値も高いのだが、何となく気分
が広々とする。この作品には、インフレ数値が似合う。
 お金を払うことで魔法を覚えたりステータスアップしたりできる「魔法学院」
「武術道場」など、戦闘による経験値稼ぎ以外に強くなれる、こういった選択肢
があるのは良い。

 魔法選択ウィンドウは個人個人開くのではなく全員共通で、魔法の種類を選ん
でから誰が唱えるかを決定する、ちょっと変わった様式だ。魔法の種類によって
画面を右へ切り替えていくようになっているが、HP回復呪文が一番右(つまり
初期位置から一番遠い)になっているのはいちいちページをめくらねばならず、
ちょっとめんどう。フィールド上では攻撃呪文は使えないのだからそれを最初の
画面にするのでなく、よく使う治療系を先頭に持ってきてほしかった。
 漢字入りメッセージ文字や数字は読みやすい。しかし、やたらと文中に読点を
多用した箇所があるのは気になる。ほとんど一文節ごとに「、」がつくのは読ん
でいてうっとうしい。

 音楽に異国情緒がある。私はアップテンポな曲がないと眠くなってしまうタチ
なのだが、この作品の曲群はそんなにテンポは速くないが深い味わいがあって、
聴きいってしまう。扉や宝箱を開ける、水が流れるなどの効果音の響きもとても
良い。

 オリジナリティを高めようと、こまかいところであれこれと新しい試みが見ら
れる。プレイしていくうちにじわじわと魅力がわかってくる。全体の構成のしか
たがうまく、きれいだ。何ともいえないさわやかさを感じる。作品の根底に流れ
る、聖なる清流のしずかな冷水のイメージと音。プレイしていて受ける、ここち
よい感覚。深呼吸してくつろげるようなおおらかさはFC版から変わっていない。
独特な世界の空間を立ち上げることに成功している。
'94 8/5 NIFTY-Serve FCGAMEM
     ファミコン&スーパーファミコン会議室 #2284(改稿)
                    (登録日 '97/2/26)
ソフト発売1993年7月備考なし