『ヘラクレスの栄光IV〜神々からの贈り物』
発売日 1994年10月21日
定価 9900円
メーカー データイースト
内容  ほんとうの自分を取り戻す旅をするコマンドRPG。


 前作『ヘラクレスの栄光III〜神々の沈黙』で私はものすごい感動を味わった。
シリーズ第4作めが出るという情報を見たときは、心は期待でいっぱいになった。
予約して買ったRPGは久々である。
 ソフト発売前、予約者全員に絵はがきセット(5枚入り)プレゼント、さらに
抽選でシリーズ II・III・IVの曲を収録した特製音楽CDが当たるキャンペーン
があった。私は幸運にもCDプレゼントに当選した。どうしてもど〜してもこの
CDがほしかったので、もう涙ものである。こういうサービスプレゼントは大変
うれしい。

 まず、オープニングデモがとてもいい。浮遊感と、流れるような視点の移動が
ここちよい。そしてゲーム開始。何とも言えない音をたてるコマンドキャンセル
音。これを聞いて、またこのシリーズに会うことができたのだと実感する。花火
が上がったかのような敵遭遇時の効果音も同じだ。
 前作では少々ヤボったかったグラフィックが、今回かなりセンスアップした。
背景が美しい。アクが薄れ、雰囲気のアヤしさが減少し、より一般性が増してい
る(個人的には前作の“ちょっとヘンな雰囲気”が気にいっていたので、すこし
残念ではある)。時間や天候などによって背景グラフィックが変わり、魔法効果
もハデで見ばえがする。画面にも奥行きが出た。

 シリーズならではのシステムは今回も引き継がれているが、システム設計やそ
の他こまかい点で少々、他作品の影響が見られる。作品の中核をなす「トランス
ファーシステム」は、『ファイナルファンタジー』シリーズの「ジョブ&アビリ
ティシステム」の変形版である。主人公は魂だけの存在で肉体がなく、いろんな
キャラクターにのりうつることができるという設定はおもしろい。しかし、のり
うつれるキャラごとに経験値がたまっていってレベルアップ、得意技もそれぞれ
異なるというのは「ジョブ&アビリティシステム」とほとんど同じ。自動的に最
強装備ができるのも一緒だ。

 本人が目の前にいなくてものりうつることができるのは謎。説明書によると、
のりうつろうとした瞬間、体がテレポートしてくるらしい(笑)。ちょっと無理が
ある気がする。「のりうつる」というよりは、そのキャラクターに「変身する」
と言ったほうがしっくりくる。
 のりうつるたびにキャラクターグラフィックがころころ変わるので、主人公を
精神的な存在としてとらえる必要がある。考えてみれば、どの作品においてもゲ
ームのプレイヤーというのはゲーム中において体を持たず、精神だけキャラクタ
ーにのりうつっているようなものだが、キャラクターの絵が固定しないことは、
やはりいまひとつ感情移入をさまたげてしまう。

 身体を替えても各キャラクターの経験値はそのまま残り、さまざまな特技を使
って戦えるので、戦闘は飽きにくい。敵のグラフィック変化も多彩で敵キャラに
演技力があり、動作の表情が豊か。戦闘バランスもちょうどよい。神殿から神殿
への瞬間移動ができるようになり、魔法の修得も楽になった。ダンジョンなどに
はパズルっぽい仕掛けがちりばめられ、なかなか面白い。けっこう複雑だから、
簡単には突破できない。
 鍛治屋での武具作製は、材料の石を今いくつ持っているのか同時表示されない
ので、武具の名前をまずカーソルで指定しないといけない。できれば最初から、
作製可能なものを色分けで表示するか、あるいは手持ち材料を同時表示してもら
えると便利だった。店で買える武具だけでも何とかなるので、あまりこのシステ
ムは活用しなかった。わざわざつくるのは、ちょっとめんどうなのだ。
 店や宿屋に一件一件独創的な名前がついていて楽しい。RPGでは、場所によ
っては一度もその店を利用しない場合もあるのだが、この作品ではどんな店名が
ついているのかを見るためだけに、店へ寄ってしまう。

 仲間のつける「日記」が、今回も登場する。これを読むのが楽しい。書いてる
本人の性格や周りの状況がよく伝わり、ストーリーを進めるためのヒントも得ら
れる。字の濃さが薄くなったようですこし読みにくいが、鉛筆で書いていると思
えばリアルなのだろう。今回は前のページに戻れるようになったため、うっかり
読みそこねる心配がなくなった。いつでも全体の流れを読み直し、把握すること
ができるのはありがたい。時間をあけてプレイしたとしても内容を思いだすこと
ができる。メッセージ関係はあいかわらずいい味を出している。曲や効果音の出
来も良い。
 コンフィグ機能が充実しており、ことこまかに設定変更できる。戦闘中のかけ
声を自分の好きなセリフにできるし、コマンド画面の壁紙も変えられるし、フィ
ールド画面の傾きかげんまで調整できる。コマンド操作画面にも神経がゆき届い
ている。戦闘中にメッセージスピード変更できるのはとても便利だ。いたれりつ
くせり、である。

 プレイしていると、何だかとてもやさしい気持ちになれる。ただ、道を歩いて
いるだけで、人びとと会話をしているだけで、たまらない充実感があふれてくる。
これはきっと、開発者の充実感がプレイヤーにまで伝わってきているのだと思う。
純粋な、「創造することのよろこび」みたいなものが感じられる。作品にかける
愛情の大きさはトップクラスであろう。

 はっきり言えば前作ほどのインパクトはなかった。今回はシステム面にパワー
が割かれすぎていて、物語の掘り下げはもう一歩だったように思える。とはいえ、
非常に味わい深いストーリーではあった。かなり精神的深みのあるシナリオで、
「自分自身を見つめ直す」ことがテーマになっている。この手の内容はなかなか
理解されがたいかもしれないが、現代人が考えるべき大切なポイントであるのは
まちがいない。全体にていねいにつくられており、プレイヤーを話にひきこんで
いく確かな技量を感じる。『ヘラクレスの栄光V』が出るなら、また予約をして
買いたい。


'95 2/17 NIFTY-Serve FCGAMEM
     ファミコン&スーパーファミコン会議室 #6985(改稿)
                    (登録日 '96/12/4)
ソフト発売1994年10月備考なし