『フェーダ〜エンブレム オブ ジャスティス』 <FEDA −THE EMBLEM OF JUSTICE−> |
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発売日 1994年10月28日 定価 9990円 メーカー やのまん 内容
マップ上のミッションを次々にクリアしていく
シミュレーションRPG。
この作品は実質、メガドライブの『シャイニング・フォース』シリーズの続編
である。キャラクターや設定は異なるが、ゲームシステムや雰囲気がそっくりだ。
他のSFC作品で言えば『ファイアーエムブレム』や『スーパーロボット大戦』
シリーズに近い。これらの作品を遊んだことがあるなら、たやすくゲームに入っ
てゆけるだろう。
大作の香りが感じられるこの作品を、私はずっと楽しみにしていた。かなりの
期待をこめて遊びはじめる。が、何だかおかしい。ワクワクしない。はっきり言
って、おもしろくない。これは一体どうしたことだ。こんなにおもしろそうに見
えるのに、なぜ楽しくないのか。
ひょっとすると私は、シミュレーションRPGというジャンルにすでに飽きて
しまったのだろうか? いや、飽きるほど遊んではいないし、ジャンル自体は、
おもしろさに関係しないはずである。おもしろさを決めるのは、ひとえに創り手
のセンスしだいであるからだ。
では、何が足りないのか。まず、新鮮さがない。どこかで見たような画面デザ
インと表現方法。しかも、『シャイニング〜』と比べると、総合的魅力度がダウ
ンしてしまったように感じられる。確かに絵はていねいに描かれているし、キャ
ラクターにも魅力がある。いろんな種族がいて、セリフが個性的だ。一番のウリ
とも言える戦闘中の動きあるグラフィックはさすがに気合いが入っており、芸が
こまかい。しかし残念ながら、感嘆するほどのレベルではない。
次に、おそらくこれが、おもしろく思えない最大の理由ではないかと思うが、
目的達成したときの達成感が薄い。考えに考えて作戦を実行する楽しみが少ない。
カウンター攻撃が一切ないことが、ゲームの戦略性を低くしている。どの敵にど
ういう攻撃のしかたをしようが、その場で仕返し攻撃が来ることはない。「味方
全員の行動を入力し終わると、今度は敵が行動を開始する」というパターンでは
なく、味方と敵はほぼひとりずつ交互に順番が回ってくる。よって、仲間集団か
ら離れてしまったキャラが、連続集中タコ殴り攻撃をくらってツブされることは
めったにない。危険な状態になっても、すぐにフォローできる。
キャラの位置が1マスちがうだけで戦況に影響が出るというシビアさはなく、
どのへんにいても適当にやっていれば、(よほどムチャをしないかぎり)勝てて
しまう。手ごたえがない。プレイヤーの挑戦欲をそそる「練りに練られたゲーム
バランス」を感じさせる面がない。ゲーム後半では敵もわりと強いので、多少の
やりがいは出てくるが、基本的な簡単さはおなじである。略図全体マップでは敵
が近寄ってきたりするのが見えるのだが、自分の移動方法がマズかったせいでピ
ンチにおちいることなどほとんどなく、いまひとつ緊張感がない。かと思えば、
主人公ブライアンと相棒アインのどちらかでも殺られると、即ゲームオーバーと
なってしまう。このへんの調整には、どうも納得しにくいギャップを感じた。
仲間が倒されると敵の収容所に捕まってしまうので、助けに行くことになる。
が、これがあまりに簡単すぎる。守りについているのはザコ3匹。言ってみれば、
スライム3匹で門番をしているようなものである。攻略は形式でしかない。動作
パターンに変化がなく、毎回ほとんど変わりばえしない。「何としても仲間を取
り戻す!」といった意気込みは必要なく、まるで幼稚園に子供を迎えに行くよう
な気軽さだ。
収容所攻略がやたら大変なのも困るが、こうまであっけないと、自分たちが戦
っている敵をナメてかかってしまう。本気になれない。頭の良い指揮官なら、捕
まえた仲間を人質にとるなりして、もっと賢く立ち回れるはずである(主人公の
仲間を捕まえたことが上層部の耳に全然入らないというのも、連絡網の悪さを感
じさせる)。せっかくのアイデアなのに魅力をうみだせておらず、もったいない。
救出部分だけでミニゲームにできるほどのものになるよう、スリルを演出してほ
しかった。
どう行動するかによって「ロウ・ニュートラル・カオス」といった属性が変化
していく。旅のなかでは何人ものキャラクターが仲間になってくれるが、主人公
の属性変化によって、突然去って行ってしまう奴もいる。考えが合わないので、
ついていけない、というわけだ。
善の道を行こうと悪の道を行こうと、離れていく人物は多かれ少なかれ出てく
る。リーダーの大変さと、人間関係の複雑さをうまくシミュレートしているとい
えばそうだし、馴れ合い的でないので緊張感は出るが、こうなると本当に信用で
きる仲間しか、ちゃんと育てようと思わなくなる。いくら育てても、いつどこへ
行ってしまうかわからないようなキャラクターに仲間感情は育ちにくい。幸い、
ミッションクリア時には戦闘に参加しなかったキャラクターにも経験値が入る。
おかげで完全なお荷物キャラ、というのは出にくくなっている。
ミッションのなかには、ある場所に到達することのみを目的とするものがあっ
たりする。善の道を目指す場合、むやみに敵を殺してはいけない。戦闘オンリー
でなく変化がつけてあるのは良いと思うが、一方的にダメージをくらってもただ
ひたすら耐えなければならないというのは、ちょっとストレスがたまる。相手を
動けなくする特技などを、もっと充実させてあるとよかったのではないだろうか。
プレイ気分を左右するカーソルの動きは、良い出来だ。SFCにしては速くて
スムースだし、キャラクターを指定するとフワッと大きさが変化するのがセンス
いい。が、行動権利がひとりずつ交互に回ってくるため、敵と味方の間をせわし
なくカーソルが行ったり来たりすることになり、すこし時間はかかる。
キャンプ時や町中で建物のなかを出入りすると、画面切り替えに妙な間があく。
ちょっと長くて、遅い。待たされる。
ひとつのエリアが終了したら、セーブするかどうか聞いてほしい。セーブでき
ない状態のまま、すぐ次のエリアの戦闘が開始されるときがある。ここでうっか
りゲームオーバーになれば、かなり前に戻されて、長いデモをまた見るはめにな
ってしまう。
メッセージ表示が勝手に進んでいってしまうのにも困った。適度な間隔は空い
ているものの、あせって読まなくてはならず、落ちつかない。リアルタイムな感
じを出すためにこうしたのかもしれないが、デモはけっこう長いこと続くので、
この間に電話がかかってきたり人に呼ばれたりして中断すれば、読みそこなう。
直前でセーブしていなければやり直すこともできず、やむなく説明不足のまま、
進まざるをえない場合だってありうる。コンフィグモードで、自動送りにしたい
人だけ変更するようにしたほうがよかった。
町などではキャラ間で直接アイテム交換ができない。現在、何を持っているの
かも確認できない。キャンプに入って倉庫へ物を入れ、そこからまた出して他の
キャラクターへ渡してやらねばならないのはめんどうなことこの上ない。店で買
った物をキャンプへ自動転送してくれる機能、戦闘中では未行動のキャラへ次々
とカーソルを移動させる機能、主人公のいる場所へカーソルを一気に戻す機能、
キャラクター全員の状態を一覧表示する機能などがなく、不便だ。
曲は、この作品世界独特の雰囲気を出している。通常攻撃、必殺技などの状況
によって、戦闘時の曲が変わる。経験値を得たときや、レベルアップしたときに
曲が鳴らないのは何だかものたりないなと思ったが、ひんぱんにレベルが上がる
ので、いちいち鳴らすのはうっとうしいと判断したのかもしれない。
説明書によると、メーカーは『フェーダ』のファンクラブをつくったらしい。
この作品に対する入れ込みようがうかがえる。けれど、熱意がから回りしている
のではないだろうか、と思わずにはいられなかった。ファンクラブでユーザーが
語るのはおそらく、主にキャラクター方面のことであろう。少なくともシステム
や内容において、ファンクラブを結成するほどの魅力があるとは思えなかった。
ゲームというのはバランスを煮詰めていくことによって、おもしろさの質が上
がってゆくものだ。この作品は、煮詰めかたが甘い。あえて低い難易度におさえ
たのだとしたらこれは、頭を使って考えるシミュレーション要素よりも、ストー
リーの流れやキャラクターの動きをながめて楽しむことに重きを置いた作品だ、
ということになる。しかし、そのわりにはキャラクターとエピソードの描き込み
が不足していて、薄っぺらな印象を受ける。設定はけっこう凝っているし、キャ
ラクターの魅力もあるのだから、もっとドラマティックに糸をからめて深く、描
いてほしかったところだ。
'95 4/8 NIFTY-Serve FCGAMEM
ファミコン&スーパーファミコン会議室 #8044(改稿)
(登録日 '96/11/6)
ソフト発売 1994年10月 備考 なし