『アウターワールド』<OUTER WORLD>
発売日 1992年11月27日
定価 8800円
メーカー ビクター音楽産業
内容  ポリゴン使用の、アドベンチャーアクション。

 電源を入れた瞬間から画面に引き込まれる、堂々たる社名ロゴ。これから一体
何が起こるのだろうと思わせる、雰囲気たっぷりの見ごたえあるデモ。グラフィ
ックが個性的だ。妙な味が出ている。

 とにかく爆笑である。怖くて不気味で、とても笑うような状況ではないのだが
爆笑である。「あっという間にゲームオーバー」が何度も連続する。笑わずには
やっていられない。どうにもこうにもいきづまってしまい、笑うことができなく
なったとき、人はこの作品に見切りをつけて封印してしまうのかもしれない。
 はたして、プレイ開始後1分でゲームオーバーにならない人がいるのだろうか。
予備知識がないと、あっという間にゲームオーバー。「この作品は甘くない」と、
最初に思い知らされる。
 謎が難しい。アクションも難しい。悩みに悩む。しかしあれこれ試してうまく
いったときの嬉しさは、格別だ。注意深く画面を見つめて、その場をきりぬける
方法を自分で読み取っていく。親切なゲームに慣れているとちょっとカルチャー
ショックを受ける。けっして「ユーザーフレンドリーなゲーム」ではない。

 いきづまっている原因がアドベンチャー部によるのかアクション部によるのか
わからないことがあるのが、ゲームの難易度を上げている。できることはもうす
べてやりつくした、思いつく限りのことをやってみた、でも進めないというとき
は何かを見落としている。観察力、推理力、応用力が必要だ。何度も何度も失敗
していくうちにいつかは正解の行動へたどりつける。問題はそこまで根性がもつ
かどうかだろう(笑)。「忍耐力測定ソフト」である。「なんでそうなるんだー!」
「そんなのアリなのか〜?」と思わずコントローラーを投げだしそうになるが、
この作品世界のルールはこうなのだと納得してプレイするしかない。

 ゲーム中、主人公は何度も生命を落とす。「ゲームオーバー回数カウント機能」
がもしついていたら、さぞかしすごい結果になることだろう。やり直し回数はハ
ンパではない。ひとつ切り抜けるたびに、「今のはむずかしかったな」と思うが
しかし、後にはさらに難解な仕掛けが待っている。これに比べればさっきの謎な
んてカルいよな、と思っているとまだそれさえも甘い謎だったりする。

 アクションのタイミングのシビアさもなかなかのものだ。頭では「こうすれば
いいんだな」とわかっていても、実際にやると思ったようにいかず失敗する。が、
練習さえ積めば少しずつ進めるようになる。失敗するとまた続きからやり直しと
いうのが少々うざったいが、「今度こそは成功だ!」とファイトをかきたててく
れる。
 作品中で重要な役割を果たす銃は、エジソンも感心するであろうナイス発明品
である。銃を使うことで作品がよりいっそう面白いものになっている。うまく使
いこなさないことには道が切り開かれない。時には激しい銃撃戦になる。主人公
が銃を持ってゆっくりと歩くさまは、西部劇みたいでちょっとかっこいい。

 主人公キャラの走るスピードは遅い。思わず、「それがお前の“生死を賭けた
走り”なのか! 頼むからもっと急いでくれぇ!」と叫びたくなる。通勤時のサ
ラリーマンの速歩きよりも遅いのではないかと思える、ゆっくりとした走り。急
いで走らないと死ぬかもしれないというのに、まるでジョギングでもしているか
のようだ。夢の中で何かに追いかけられてるときには、じれったくなるほどゆっ
くりな走りかたになったりするが、ちょうどあんな感じである。タイミングがぎ
りぎりで、ドキドキハラハラさせる。演出がうまい。
 音楽、ビジュアル面の演出も最高に良く、曲をまったく流さないことで不気味
な静けさをあらわしたり、ピンチの時にはドカドカ音を出しまくってプレイヤー
をアセらせてくれる。手に汗にぎる。効果音もいい。

 映画的技法を使用、と説明書に書いてある。周りが黒ワクで囲ってあることや
構図のとり方など、確かにそういう感じを受ける。が、私は別の観点からも映画
的だなと思った。それは、幾多のNGを経て、成功した本番フィルムのみが本筋
として語られるという点である。俳優さんたちがえらく苦労して練習して、たく
さんのNGフィルムを出しながら一編の映画を完成させていく、そんなイメージ
が浮かぶ。映画とちがうのは、隠された正解のシナリオを主演男優が自分で捜し
当てなければならないということだ。
 この話は一応、主人公を襲った事件がドキュメンタリーっぽく語られているが、
もし本当にあれらの行動を一度でパスできたのならそれはひとつの奇跡だ。主人
公は頭と運動神経が良いだけでなく、一種の超能力まであるにちがいない。偶然
が偶然を呼び、一生分の幸運をかきあつめた上に他所からも借りてくるくらいで
なければ、ああもうまくいくはずはない。60年に一度の大幸運期だったのかも
しれない。

 なぜ自分がこんな目にあわないといけないんだ! と思ったとき、心の支えと
なってくれるのは唯一の味方であるひとりの大男だ。名前も素性もわからないが、
脱出するために力をあわせる。周り中のあらゆるものが自分を消そうとしている
この世界で、頼れるのは自分自身の力とおのれの運と、この大男だけ。こいつが
じつにいい味を出していて親しみがわく。オプションとしていつもそばにいてく
れるわけではないが、脱出の道中でふと見かけると「ああ、あいつもがんばって
るんだ」と、励まされる。ホッとする。この大男の存在が、プレイヤーの精神的
助けになっている。

 まったくもって、ふしぎな世界である。ゲーム終了後も、謎な部分がたくさん
残る。もっと詳しく知りたくなるが、プレイヤーにあれこれ想像させるというの
も良い手かもしれない。それにしてもむずかしいゲームだ。もうあとほんのちょ
っとだけ簡単にしてほしかった気もする。いくらおもしろくとも、投げ出されて
は意味が無い。が、これだけおもしろいゲームはぜひとも自力で解きたい、と意
地にさせる魅力がある。
 とても親切でヒントもわかりやすく教えてくれるものを「誘導型」とするなら、
この作品は「放任型」になるだろうか。超超超むずかしいが、超超超おもしろい。
自分の力で何かを成し遂げることができたという強い実感は、やはり自分自身で
考えて行動することからうまれるのだなと、思わせてくれる。
'94 11/4 NIFTY-Serve FCGAMEM
     ファミコン&スーパーファミコン会議室 #4702(改稿)
               (登録日 '96/11/6)
ソフト発売1992年11月備考なし