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【プレイステーションポータブル(PSP)】
『モンスターキングダム・ジュエルサモナー』
発売日 2006年2月23日
定価 5040円
メーカー SCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント )(→メーカーホームページ
内容  ジュエルでモンスターを晶換(召喚)して戦うコマンドRPG。
 音楽は、ゲームミュージック界の有名作曲家・数名が担当。


■ヒットするゲームの必要条件は?

 戦闘で弱らせた敵を「マテリアル」というアイテムでジュエル(宝石)化 
して味方につけるのは、『ポケットモンスター』のモンスターボール。
 モンスターにいくつも「クオーツ」を融合させて強化するのは、『ファイ
ナルファンタジー7』のマテリア。
 戦闘では人間が戦うのではなく、モンスターが戦うが、モンスターがダメ
ージを受けると持ち主の人間(サモナー)が苦痛の声をあげる、「ロボット
に乗ったパイロット」感覚。各モンスターはアビリティ(能力)を持ち、パ
ワーアップさせていくことができる。これは『スーパーロボット大戦』。
 『モンスターキングダム・ジュエルサモナー』は、ヒットした有名ゲーム
に似たシステムをあわせ持っているが、これら3作品にあって、この作品に
足りないもの。それは「ていねいな作り込み」だ。

■甘すぎたゲームバランス

 戦闘画面は、インターネットブラウザのフレームのようなデザイン(画面
を縦の線で左右に分割)。PSPの狭い画面を有効に使って、モンスターを
大きく見せている。
 しかし戦闘バランスが甘く、序盤は準備を怠ると全滅する場合もあるが、
中盤以降は、ある程度モンスターを錬成(れんせい)すれば余裕で勝ててし
まう。お金やポイントが楽にたまるので、アイテムもたっぷり用意しておけ
るし、モンスターを簡単にレベルアップさせられる。ゲーム中盤で、お金や
パワーアップポイントが余りすぎるほど余り、モンスターをすぐに最大限強
化できるようになってしまう。

 つかまえた敵モンスターを自分のモンスターとして使えるのは楽しいアイ
デアだが、敵と味方の攻撃方法が同じになってしまい、戦闘がワンパターン
化する。属性の違いはあっても、攻撃方法は強弱の異なる全体(単体)攻撃
がほとんど。敵の攻撃順を遅らせやすくする「ディレイ系」の攻撃も、使う
のは序盤だけ。中盤以降は全体攻撃だけで終わる。
 錬成によって、さまざまな種類のアビリティを選べるようになっても、1
体のモンスターが装備できるのはたった4つ(錬成しても5つ)しかない。
「攻撃系(単体・全体)」「回復系」以外のアビリティは実用化しづらく、
似たり寄ったりの能力しか持たないモンスターばかりになる。1体につき、
もう少し多くのアビリティを装備できればよかった。

 説明書では、各キャラクターに専用のレアモンスターが1体ずついるとい
う設定になっているが、実際には専用ではないし、レアモンスターは登場が
遅く、活躍機会が少ない。専用モンスターがいれば育成しがいもあるし、パ
ートナーモンスターという感じがするのだが……。メインで使ったのは、レ
アモンスター以外の通常モンスターだった。
 自分で鍛えたモンスターより、戦闘でジュエル化したモンスターの方がレ
ベルが高く、アビリティもいいものを持っているので、そちらに乗り換えた
方がてっとりばやい場合があるのも、育てる楽しみを弱くしている。
 すべての属性でなく、ひとりのサモナーがひとつ(あるいは複数)の属性
モンスターしか扱えない(モンスターのジュエル化も、同じ属性を扱えるサ
モナーにしかできない)ようにすれば、各キャラの、サモナーとしての個性
の違いを表現できただろう。

 ひとつの探索場所にセーブ&全回復(外部への脱出までできる)ポイント
が数ヶ所もあるおかげで、難易度はさらに下がっている。よほど広い場所な
ら2つくらいはあってもいいかもしれないが、そんなに広くないのに3つ以
上設置されている。携帯機用ソフトであることを考慮したのだろうが、PS
Pにはスリープモード(ゲーム途中で一時的に電源を切って待機状態にした
後、再開できる)があるのだから、そこまで親切にしなくてもいいと思う。
セーブしやすくしたいのなら全回復は無しにして、セーブ機能だけにすれば
よい。
 大甘で親切すぎるゲームバランスが、多彩なアビリティとアイテム・モン
スターの進化・ボス敵の存在感などの要素を無意味にしてしまっている。強
力な全体攻撃アビリティさえ持っていれば、すべてのアビリティ&アイテム
・錬成を駆使するまでもなく、あっさり勝ててしまう。
 やはりボス敵は、強くなくてはダメだ。このゲームでは、ちょっとだけ強
いボス戦もあるが、ほとんどの敵は手ごたえ無さすぎで戦いがいがない。1
ターン経過しないうちに倒れてしまうボスを、ボスとは呼びたくない。そん
なに弱くては、通常戦と変わらないではないか。
 1つのエピソードごとにプレイヤーに達成感を与えるちょうどよいバラン
スが、そのゲームをおもしろくする。簡単すぎると、つまらなくなる。「簡
単に進める」のと、「適度な手ごたえがあるテンポの良さ」は、違うものな
のだ。
 手軽な携帯ゲーム機用という制約にとらわれたのか、システム・物語のボ
リュームが「軽く・短く」なってしまった感がある。やりこみがいのあるゲ
ームになれる可能性を秘めたシステムをあまり活かせていないのは、とても
もったいない。と、言うほかない。
(HP登録日 2006/5/28)

ソフト発売2006年2月備考なし

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