■ユニークな個性あふれる、笑えるシミュレーションRPG
シミュレーションRPGというと、シリアスな宇宙(スペース)オペラや
リアルな戦争もの、魔法世界が舞台のファンタジーものなどを連想するが、
この作品はそれらのうちの、どの種類にも属さない。
「なんだこりゃ〜☆」と笑ってしまうデザインのキャラクターと動き・ユ
ニークなメッセージの数々。独特の表現で構成されたギャグ・ワールド。寒
いダジャレに言葉を失うものから、記憶を直撃する懐かしいパロディネタに
声を出して笑ってしまうものまで、笑いのレベルはさまざまだ。プレイヤー
を少しでも笑わせようとする“あの手この手のアイデア”が、たくさん詰め
込まれている。「究極のバカバカしさを極めようとしている」とでも言おう
か(注:ほめてる)。
召喚ダンスを踊るとたまごが割れて、中からエッグモンスターが出現する。
たまごがない(壊れている)と、敵と味方の兵士たちがぶつかりあってべー
ゴマのようにハジける、兵士+将軍同士の肉弾戦となる。放っておいても勝
手に戦ってくれるので楽だが、自分でコントローラーを操作して動かすこと
もできる(その方が画面に動きが出るし、戦闘らしくなる)。将軍や兵士は
成長せず、エッグモンスターを何度も呼び出すことで全体の戦闘力を上げて
いく。基本的にはエッグモンスターの使用がメインだ。
通常、コンピュータゲームでは、プレイヤーが指示できるコマンドの種類
は限られている。RPGでいえば、最初から最後まで「攻撃」「魔法」「道
具」といった一定のコマンドを繰り返す。しかし、この『半熟英雄』では、
役に立つものからウケ狙いのものまで、いろんな種類のおかしなコマンドが
たくさん出てくる。エッグモンスターはそれぞれコマンド名(攻撃法)が異
なり、敵&味方の反応の仕方もバラエティに富んでいる。物語が進むにした
がって少しずつランクがアップし、使えるコマンドやエッグモンスターの種
類が増えていく。セリフには音声も入っていて、楽しい。
エッグモンスターを召喚する時の長い踊りはボタンを押すことで短縮でき
るが、毎回やるので少々かったるい。月イチコマンドでたまごを回復させる
だけでも踊りのシーンが入る(これは早送りしても長い)ため、短気な人は
ちょっとイライラしてしまうかもしれない。面白いのは戦闘シーンやイベン
トシーンまで早送りできる点で、ボタンを押したり放したりして、好きな場
面を部分的に速くできる。「ペチャクチャ早口しゃべり」「大急ぎで流れる
音楽」「高速なキャラクターの動き」は、それだけで笑いを誘う。
難易度はあまり高くなく、システムも複雑ではないので、コツがわかれば
クリアは早いだろう。ギャグだらけではあるが、3Dボスとの戦いでは迫力
ある構図変化で、真剣な戦闘の雰囲気も味わえる。どちらかというと小学生
などの低年齢層向けだと思うが、お子様には理解不能なアダルトネタも結構
あるので、大人のプレイヤーでも安心だ(何が?)。
タイトルの「対3D」は、「2D(ツーディー)キャラが3D(スリーデ
ィー)キャラと戦う」という意味。単なる「3D化した続編」ではなく、ひ
とつのソフトの中に2Dと3Dのグラフィックが混在し、味方(2D)と敵
(3D)に分かれて戦う趣向になっている。
2Dは、ファミコンやゲームボーイのような平面的グラフィック。
3Dは、プレイステーションから増え始めた立体造型のグラフィック。
プレイステーションが登場してから、3Dの立体映像ゲームが多くなった。
確かにリアルでかっこいいのだが、グラフィックを3Dにすることで失われ
るものもある。「操作スピード・グラフィックの見やすさ・キャラクターの
親しみやすさ」などだ。シンプルな方が、マップなどがわかりやすかったり
する。元が2Dのゲームを3Dにすると、操作性や雰囲気が変わってしまっ
たりする。そして何より、
「3Dはギャグに向かないッ!」(笑)
「3Dキャラクターが敵」という設定のこの作品には、「3Dもいいけど、
2Dも良いものだぞ」というメッセージが、こめられている気がする。
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