プレイステーション
『第4次スーパーロボット大戦S』
<SUPER ROBOT WARS IV SCRAMBLE>
発売日 1996年1月26日
定価 6800円
発売日 1996年11月29日(「the Best」)
定価 2800円(「the Best」)
メーカー バンプレスト(→メーカーHP
内容 世界の平和をかけてTVアニメのロボットたちが戦うシミュレー
ションRPGシリーズ。新ユニットとしてダンクーガ、ダイモス、
エルガイム、ザンボット3が加わった。この『〜S』はスーパー
ファミコン版『第4次スーパーロボット大戦』を移植したもの。
戦闘中のキャラクターのセリフに声が入っている。

『第3次〜』から『第4次〜』への変更点

 システムデザインにいくつかの変更が加えられた。戦場において、最初からは
敵ステータス値を見られなくなったため、緊張感が増している。ユニットに強化
パーツを二つまで取り付けることができ、反撃時に武器選択・回避・防御を選べ
るようにもなった。おかげで、より幅広い戦術行動が可能となっている。
 今回は、主人公としてプレイヤーキャラクターを男女各4タイプ(計8タイプ)
から選択できる。これは嬉しい。アニメなどの創造物上のキャラクターにいくら
惚れこんでも、彼らはプレイヤーの存在など知るよしもない。しかし自分の分身
キャラクターがいれば、自分専用のロボットに乗って、ゲーム中のキャラクター
たちと一緒に時を過ごせるのだ。自分の持ちキャラだと思うと、成長させるのに
も特別に力が入る。また、「男女のプレイヤーキャラクター設定」は、男性プレ
イヤーにも女性プレイヤーにも感情移入をさせやすくするだけでなく、物語中で
一組の恋愛イベントを起こすことによって、男女両方のキャラを用意した意味を
ちゃんと持たせてある。

 『第4次〜』では、オプション機能がおそろしく充実している。特に、ついに
出た、という感のカラオケモードは感涙ものだ。流れる歌詞に合わせて歌うと、
当時の想い出が掘り起こされてきて懐かしい。サビ部分しか覚えていない曲や、
間違って覚えていた曲を再確認できる。1番しか歌えない仕様なのが残念だが、
もし全曲3番まで熱唱したら、相当エネルギーを消耗して疲れ果ててしまいそう
だ(笑)。
 アニメのことを知らないとどういう意味なのか理解できないメッセージが出て
くるという問題も、今回新しくつけられたデータベース“キャラクター大事典”
“ロボット大図鑑”のおかげでかなり解消している。むろん、実際にアニメを見
ておいたほうが世界観の理解および感情移入度がずっと深いのは言うまでもない
が、昔やっていたアニメを観たいと思っても今ではなかなか機会がない。詳しい
背景説明が読めるのはありがたい。
 全体にシステムは遊びやすいように非常に気をつかってあるが、『第3次〜』
から変わっていない部分で気になったのは、ユニットを戦艦に収容したときのエ
ネルギー残量が、目分量でしかわからないこと。出撃させてみないとどれくらい
まで回復したのか、正確な数値を確認できない。エネルギーが1足りないだけで
も勝敗が分かれる場合があるのだから、HP表示と同じように数値で見られると
便利だ。

●PS版の変更点

 電源を入れてしばらくすると、迫力のデモが展開する。リアルな画像で、ユニ
ットが動く。とぶ。撃つ。思わず口をポカンと開けて見とれてしまった。かっこ
いい。これはSFCでは出来ない芸当だ。さすがはCD−ROMである。ただ、
最初のメーカーロゴとタイトル画面のグラフィックがボヤけて見え、英字タイト
ル部分が読みにくい。デモ表示の関連で、こうなっているのだろうか。

 SFC版と異なるPS版の大きな特徴は、何といっても戦闘中のキャラクター
のセリフに声が入ったことだ。声は、入っているほうがやはり迫力が出る。が、
声入りでしゃべるキャラとしゃべらないキャラがいるし、敵側のキャラクターに
はほとんど声が入っていない。できれば敵も含めた全てのキャラクターに声を出
してほしいところだが、そうすると予算が足りないのかもしれないし(笑)、名前
のない敵の部下全員にまでいちいち声をつけていたのでは大変である(かといっ
て、全部に同じ声を割り当てるのも不自然だ)。相手からの反撃の際にも声が出
てくれれば一層、臨場感が高まるのだが、これは仕方のないところか。それと、
声優さんたちも以前演じていた頃から時間がたっているせいもあってか、一部、
もうその役をやるのがつらくなっている印象を受ける。ちょっと無理があるか、
と感じる部分は、聞いていて違和感をおぼえた(かえって、それが面白かったり
もするのだが)。

 声入りということ以外にも、『〜S』のプレイ感覚はSFC版とは少し違う。
原因は音楽だ。SFC版ではフィールドの曲と戦闘の曲がそのつど切り替わるの
だが、『〜S』では味方ターンで攻撃目標を指定した途端に、そのキャラクター
のテーマ戦闘曲が始まり、戦闘終了後もその曲が持続する。つまりフィールドの
曲は、毎ターンの最初にしか流れないのである(敵ターン時には、戦闘時でも敵
側のフィールド曲しか流れない)。これは、おそらくデータ読み込みの関係で、
ゲームのテンポを損なわないようにしたためと思われる。キャラクターのシリー
ズごとに曲が次々と切り替わるので、まるでカラオケメドレーのような様相を呈
する。戦闘の曲を長く聴ける利点はあるが、慣れるまで妙な感じはする。フィー
ルド曲のノリがいい場合、わずかしか聴けないのは寂しい。それからもうひとつ、
機種の違いによる差といえば、SFC版がデータセーブをほぼ瞬間で完了するの
に比べ、PS版では若干待たされることが挙げられる。

●CD−ROMならではの魅力

 全体を通して、扱うユニット数が多いが、なるべくそれぞれのキャラの影が薄
くならないよう配慮されており、戦闘バランスをとりつつ、見せ場がつくられて
いる。ユニットの活かしかた・絞りこみかたがうまい。多種類のアニメの物語を
ひとつの世界にきちんと織り込み、出来るだけていねいにわかりやすく展開させ
ている。しかしそれでも、何種類もの名称を持つ複数の組織が混在し、人物もた
くさん出てくるため、ストーリーはちょっとややこしい。しっかりメッセージを
把握しておかないと、訳がわからなくなりやすいかもしれない。

 シナリオタイトルあるいはキャラクターの言動などから、局面の展開をある程
度予測できる。全体マップを参照すると、だいたいこのあたりから援軍が来そう
だなという予感がするので、それにそって作戦をたてる。予想したところから敵
が現われれば「ほ〜ら、やっぱり出ると思った」と、ほくそ笑む。意外なところ
でフイをつかれれば「しまった! そう来たか」と己れの油断を悔やむ。戦況が
やけに楽勝ムードなら、「むっ、このままで終わるはずはないぞ」と気をひきし
め、じゅうぶんに準備しながら奇襲にそなえるのだ。
 シミュレーション系ゲームは、「何をまず第一にすべきか」「どういう順番で
やるのが一番効率がいいか」「注意すべき点は何か」「温存していた力を、いつ
どこで出すか」といったことを、事前によく考えて行動することの大切さを教え
てくれる。考えるのと考えないのとでは、結果に雲泥の差を生じる。このゲーム
には各面にいくつかの危機的状況が設定されており、うまく戦略を立てて戦わな
いと失敗するようなゲームバランスになっている。ゲームオーバーになると凄く
悔しい。考えて行動することがいかに大切かを痛感する。様々な要因をシミュレ
ートして思考トレーニングできる面白さを、たっぷりと味わえるのが楽しい。

 今回、『第3次〜』のときのような、“胃の痛くなるような容赦ない攻撃”と
いうほどの死闘は少なく感じられた。精神コマンドをフル活用してうまく立ち回
れば、全滅することはあまりない。ただしこれは、前作をすでにクリアしてコツ
をある程度つかんでいるからこそのことであって、初めてプレイする人は(攻略
本などを見なければ)最初はボコボコにやられるかもしれない。結構キツい面も
いくつかある。
(『第4次〜』がスパロボシリーズ初挑戦だったうちの弟は、終盤でどうしても
勝てなくなり、挫折してしまった。「ゲームオーバー画面から経験値そのままで
続行できるよ」と教えても、「最初からやり直す」と言う☆)
 シリーズファンには手ごたえを感じさせ、初心者にも楽しめるようにするバラ
ンスどりは大変だと思う。同シリーズ『スーパーロボット大戦EX』にあった難
易度設定は、この点を考慮した、ひとつの試みだったのだろう。だが、このシリ
ーズでは多少難易度は高くても、どうすればゲームが面白くなるか、ワクワクす
るか、という点にかなり心がくだかれているので、安心してプレイしていられる。

 状況に応じたメッセージの種類が豊富に用意されていて、これまでのシリーズ
同様、細かな違いを楽しみながら何度も遊べるつくりだ。そして、さらにPS版
では声を入れることで、SFC版にはなかった効果も生まれている。SFC版で
は乗組員が数名いる機体を変形させることや、変形バージョンを全部均等に育て
ること、パイロットの乗り換えなどが少々面倒で、ついつい使用するパターンを
固定させてしまっていた。しかし『〜S』では、いろいろな声を聞きたいがため
に、埋もれてしまいがちなキャラクターを出場させてみたり、あまり使うことの
なかった弱い武器も試してみようかな、という気が起こりやすい。その結果、自
然と、作品の奥深さをより深く知ることができるのだ。SFC版『第4次〜』に、
「声が入ることによってもたらされる相乗効果」という新たな魅力を付加したの
が、この『第4次〜S』なのである。
('96 12/18 NIFTY-Serve FCGAMEM
プレイステーション会議室 #2483(改稿)
(HP登録日 1996/12/18)

ソフト発売1996年1月
ソフト発売1996年11月(「the Best」)
備考感想