【プレイステーション】
『ファイナルファンタジー8』
<FINAL FANTASY VIII>
発売日 1999年2月11日
定価 7800円
メーカー スクウェア(→メーカーHP
内容 RPGシリーズ第8作め。PSでの発売は2作めとなる。

好みが分かれる? 劇画調キャラ

 子供向けから大人向けになったような印象の、スラリと背の高いキャラク
ター。前作より洗練され、グラフィックは一層リアルになった。しかし、フ
ァッションや動きに個性は出ているが、等身が長いためか遠景画面が多く、
キャラクターとプレイヤーの間に心理的な距離感が生じる(メニューの最初
の画面にキャラクターの顔イラストも表示されない)。たまにアップの場面
があっても無表情で生気がなく(ムービーシーンは良いのだが)、魅力があ
るような、ないような……。例えるなら、「子供の頃に仲の良かった友達に、
成人してから再会したら別人のように変わっていて、違和感がある」のと似
ている。昔からのFFファンの中には、以前のような“かわいい系”キャラ
の方がいいという人も、少なくないかもしれない。

 キャラクターデザインは個人の好みの問題だが、感情移入を妨げている最
大の原因は、シナリオの流れが良くないことだ。
 2つの視点が交互に切り替わる構成は興味深いのだが、キャラクターそれ
ぞれの描写が中途半端で展開も不自然なので、「なぜいきなりそーいう話に
?」「自分は今、どうしてこんなことをしているんだ?」と、だんだんわけ
がわからなくなってくる。セーブや画面切り替えが速く、基本操作は快適で
ある反面、「ちょっと動かしただけで意図していない方向へ移動してしまう」
「次にどうしていいかわからず、いきづまりやすい」などの不親切な箇所も
いくつか見受けられる。

あまりにも強すぎるザコ敵

 たいていのRPGでは、敵の強さは場所ごとに決まっている。「ある地域
に出現する敵に楽勝できるようになったら、より強い敵のいる別の場所へ向
かい、だんだん成長していく」というのがパターンだ。ところがFF8では、
同じモンスターでも、味方のレベルに比例して強くなる。これは通常戦闘に
手ごたえをもたせる良い工夫だ−−と思いきや、同じ場所でずっと戦ってレ
ベルアップすることができるため、ゲーム中盤ですでに、主人公のレベルが
最高値になってしまったりする。
 「ザコキャラ一匹がボスキャラよりも強く、倒すのにやたら時間がかかる」
という逆転現象が起こってしまう結果、本来、最も盛りあがるはずのボス戦
がひきたたない。目的地へ到着するまでのザコ戦が長引きすぎると、物語の
勢いも止まる。さらに、敵のHP量や特徴を詳しく知る魔法“ライブラ”を
簡単に使えることが、「敵をいつ倒せるかわからないスリル」「自分で試行
錯誤して攻略法をあみだす楽しさ」を薄れさせている。ザコ敵との遭遇なし
で進める方法も用意されているので、プレイヤーが自分で調整すればいいと
はいえ、もう少しバランスどりが必要だったように思う。

やはり光る、システムの面白さ

 以上、戦闘バランスやストーリー展開などに問題はあるものの、今回も、
普通のRPGとはチョット違ったアイデアがいろいろ盛りこまれている。G.
F.(ガーディアンフォース)と呼ばれる召喚獣を身につけて魔法を装備す
る“ジャンクション”と、魔法を吸収してストックする“ドロー”。コマン
ドRPGにつきものの“MP”(マジックポイント)を廃止して魔法を個数
で扱い、パワーアップエネルギーとして利用する斬新なシステムである。大
幅に画面デザインが変わったFF7以降、魔法は“FFらしさ”を保持する、
大切な要素だ。強力なG.F.の存在によって戦闘時における有効性が薄れ
る魔法を、この両システムがきちんとカバーしている。
 さすがに、時代の先端を走って業界の手本・刺激剤にならねばならないF
Fシリーズは、人気に安住して「前作のシステムをそのまま使い、キャラと
ストーリーだけ変える」というようなことはしていない。グラフィックの凄
さをウリにして、ゲーム性を軽んじているわけでもない。ただ、「新しい面
白さを提供しようとするチャレンジ精神」だけでなく、「作品の完成度を高
めること」をもっと大切にするべきだ。そうすれば、FFはきっと、無敵の
RPGシリーズになることだろう。
(2002/4/25 @ニフティ「ゲームマシンフォーラム2」
5番会議室 #37369
(HP登録日 2001/12/13)
ソフト発売1999年 2月備考なし