『フェーダ2 〜ホワイト=サージ ザ・プラトゥーン』 <FEDA 2〜WHITE SURGE the PLATOON> |
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発売日 1997年 4月18日 定価 5800円 メーカー やのまんゲームズ 内容
シミュレーションRPG続編。
私はスーパーファミコン版の前作『フェーダ〜エンブレム オブ ジャスティス』
をクリアしたが、あまり楽しめなかった。世界観やキャラクターはなかなかいい
のに、戦闘に手ごたえがなく、やりがいを感じられなかった。さて、続編の出来
はどんなものだろうか。
戦闘時・非戦闘時を含めて、操作性は良好。コマンド選択が上下左右への方向
キー入力になっていて選びやすい。曲や効果音が活き活きしているので操作感覚
もいい。「戦場で全体図が一望できない」「移動可能範囲を越えてカーソルを動
かせない」「ボタンひとつで未行動キャラクターへ次々とカーソルを移動させら
れない」などの不便な点は、カーソルの移動速度が速いおかげでさほど気になら
ない。ただひとつ困ったのは、「戦闘途中データ」の記録だ。コンティニューで
再開しても、なぜか、そのミッションの一番最初からやり直しとなってしまう。
注意書きを入れるか、一度でも行動終了したらセーブコマンドが表示されないよ
うにするかしないと、途中経過をセーブできるのだと誤解する人もいると思う。
それとも、バグか何かなのだろうか?
戦闘の行動順は自動的に回ってくるのではなく、好きなキャラから選んで動か
せる。移動ポイントが残っていれば一撃離脱も可能になった。さらに、ひとりの
キャラクターが数種類の「兵装」パターンを持つことにより、行動タイプを変え
て出撃できる。仲間にできるキャラクター数が多いゲームでは、どうしても活躍
するキャラと出番のないキャラに分かれてしまいがちだ。この作品の登場キャラ
クター数は少ないが、ひとりで複数の役をこなせるから、多様な行動パターンを
楽しめ、なおかつ、各キャラクターとの出撃前の会話や装備状態がじっくり個性
的に描きこまれていて良い。
また、「OPM(部隊ポイント)」の数値によって、その時点での称号が査定
されるシステムも、ゲーム全体をひきしめる役割を果たしている。出撃時の兵装
タイプの違いや、入院した仲間の回復などもポイント消費量に関係してくるのだ。
全体に、前作よりもシステムの戦略性は大幅にアップしている。
しかし−−前作と比べて明らかにシステムが充実したにもかかわらず、やはり
今回もいまひとつ面白くないのである。なぜなのだろう。
まず、ミッションクリアの達成感がどうしようもなく薄い。各面にはいろいろ
な目的が設定されている。この作品では、「敵を全滅させるか、ボス的存在を倒
したらクリア」という目的は少なく、「ある場所にたどりつくまで戦う」などの
クリア条件が多い。そのこと自体は悪くないのだが、いかにもバラエティに富ん
だ戦略が必要なように見えるわりに、結局は普通に前進して敵をほぼ全滅させる
パターンになりやすい。ミッション中に思わぬ出来事が起こったり会話が交わさ
れたりするわけでもなく、展開は単調。作戦を実行していてもワクワクしない。
スリルがない。何だか、たいして強くもないザコ兵の集団とばかり戦っている気
がして飽きてくる。メインキャラクター二人のどちらかが倒されるとゲームオー
バー、油断すると時々仲間がやられることもあるが、よほど手を抜かないかぎり、
こちらが全滅することなど皆無にひとしい。
多くのゲームにおいて、途中途中にボス的存在との戦闘が用意されているのは、
たとえワンパターンであろうとも、やはりそれが面白いからである。それまでの
ザコとは違う、強い力を感じる存在との戦いは緊張感をうみだす。この作品では
そういう緊迫した場面が少ない。すべての面がそうだというわけではないけれど、
「あれ? もう終わり?」と拍子抜けしてしまうほど、盛りあがらないまま終了
するミッションが多いのだ。
システムの外枠は確かにしっかりとつくられている。あらゆる要素を考慮した
うえで、採用するシステムを決定した慎重さがうかがえる。他のシミュレーショ
ンRPGシリーズのシステムを参考にしつつも、安易には真似まいとする気概も
買える。だが、凝ったシステムを構築したところで力つきたという感じで、かん
じんの各ミッションの内容があまりにも薄っぺらだ。そのため、「兵装」の切り
替えも、単に好みで選べばいい、という程度のものになってしまい、使い分ける
必要性が薄くなっている。
称号は前作にもあったシステムだが、今回はキャラクターに善悪の属性がなく、
この評価基準がよくわからない。どう戦えばこうなる、といったルールが不明確
なため、自分で意図して戦闘方針をたてられない。それに、任務に失敗したとき
にポイントがもらえないのはわかるが、出撃メンバーの数を多く選ぶ&倉庫から
アイテムをたくさん持ちだすほど、部隊ポイントの消費量が増えてしまうのは妙
な感じがする。不充分な装備&メンバーで戦うことがなぜ、良い評価につながる
のか。戦場では結果が第一であり、わざわざ危険をおかすことに実利的な価値は
ない。しっかり準備をして確実にミッションをこなすことこそ重要なはずである。
不利な状態で戦うことをよしとする評価方法は、英雄伝のネタとしてなら理解で
きても、軍部の称号評価基準としては首をひねらざるをえない。
もうひとつ、『フェーダ』シリーズの特徴として、攻撃してもその場で敵から
の反撃がないことが挙げられる。相手の攻撃をかわして反撃、などの連続した動
きがないから、どうしても迫力と臨場感に欠ける。シリーズの個性を大切にして
反撃なしのシステムを選択するのなら、それを補う別の魅力を用意しなければな
らない。戦闘中の絵はどうか? 戦闘シーンの画面切り替えはスムースで、複数
同時攻撃など攻撃方法も多彩ではある。が、グラフィックに爽快感・スピード感
がいま一歩足りず、キャラクターを使う楽しさが弱い。では、キャラクターを育
てる楽しみはどうか? この作品には強さのクラスが数段階しかなく、RPG要
素は付属的なもので、実質、面クリア型シミュレーションに近い。キャラクター
を育てている、という感触はない。むむむ、それでは、ミッション自体の面白さ
は……前述した通りだ。メンバーの強さに差が出にくく、レベル差を考慮してゲ
ームバランスを調整する大変さは軽減しているはずなのだから、そのぶん演出に
力を注ぎやすいと思うのだが、そういった工夫があまり見られず、無造作にユニ
ットを配置しただけの、魅力のないミッションが目につく。
複雑なルールは少なく難易度も低めなので、「難しいゲームは苦手」という人
には、気軽に遊べていいのかもしれない。考えに考えた末、行動を決定する“骨
のあるシミュレーション”を期待するとかなり物足りない。難易度を低く設定す
るにしてももう少しミッションの展開にメリハリをつけて、見せ場をつくってほ
しかった。これでは、せっかくのシステムや世界観&キャラクターの魅力がじゅ
うぶんに活きない。プレイヤーを退屈させないよう、もっと多くのアイデアを各
面に惜しみなくつぎこむべきだ。ストーリーも消化不良気味で、中途半端なまま
妥協してしまった印象がぬぐえない。あとひと押し粘れば、とても面白いゲーム
に仕上がっただろうに、非常にもったいないことである。
'97 4/27 NIFTY-Serve FCGAMEM2
PS:戦略ゲーム会議室 #925
(登録日 '97/4/30)
ソフト発売 1997年 4月 備考 なし
巴かずみのゲームソフトレビュー