PCE:ときめきメモリアル
トップ
【PCエンジン(スーパーCD−ROM)】
『ときめきメモリアル』
発売日 1994年5月27日
定価 8800円
メーカー コナミ(→メーカーホームページ
内容  高校生活を舞台にした恋愛シミュレーション。


■コナミの「高校恋愛シミュレーション」

 現在、リズムアクションゲームの印象が強いコナミだが、昔のイメージは
「ちびキャラのかわいい系」か、「硬派アクション系」のどちらかだった。
そのコナミが自社の固定イメージを打ち破ったのが、この『ときめきメモリ
アル』(略して、ときメモ)だ。
「ときめき……メモリアル?」
 そのあまりに少女漫画ちっくなタイトル。コナミが恋愛ものを出すという
意外さ。
「どうしたんだ、コナミ!」
 と思わず言ってしまいそうなほど、当時は浮いて見えた。

 プレイヤーは、主人公(男子学生)が毎日どういう行動をとるのかをアイ
コン選択で決定するだけ。その行動により、主人公のさまざまなパラメータ
が変化していく。主人公を“育てる”わけである。しかし、育てるというほ
どの苦労は感じない。操作はかなり簡単。ボタンを押して、起こる出来事を
ながめる。展開に幅を持たせたデジタルコミックという感じがする。
 ゲームを始めて少しの間は、ただ平凡な毎日を送るのみ。はやくカワイイ
女の子と出会いたいと思っているプレイヤーは、何も起こらないのに少々、
イライラしはじめる。そのおかげで、女の子が登場した時の感動が倍増する
わけだ。
 しかしゲームとして見ると、ちょっと退屈。BGMがおだやかな曲なので、
単調さに拍車がかかる。もっと楽しげでアップテンポな、「学生生活をエン
ジョイしている〜!」という感じの曲だったらよかったかもしれない。
 ひとつの行動をとった時、簡単な絵が出るだけなのも、もう少し工夫があ
るとよかった。高校生活の毎日がビッグイベントの連続であるわけはないけ
れど、もう少し何か事件があってもいいんじゃないかと思った。どこか物足
りなさを感じるのは、男性ほどには、女性相手の恋愛ゲームに入れ込めない
からだろうか。

 このゲームは男性プレイヤーを想定して作られている。例えばRPGなら、
主人公が男であっても、行動そのものは男にしかできないことではないので、
プレイヤーが女でも、感情移入できないことはない。しかし、こういう恋愛
もののように、はっきりと男性の視点からゲームをプレイするような場合は、
女性から見ればきっぱりと別人になってしまう。もちろん、ゲーム部分だけ
見れば遊べないことはないが、「男性シミュレーション」としてプレイする
ことになる。
 このゲームをプレイすると、バレンタインデーにチョコレートをもらえる
喜びというのが、わかる気がする。義理でもなんでも、もらえるとやっぱり
嬉しいのだ。嫌いな奴にチョコなんて渡さないわけだから、程度に違いはあ
れど、それは好意の証なのである。たくさんの子からもらえればそれだけ、
好かれている実感が増す。
 「自分の価値を信じているなら、チョコをひとつももらえなくたって気に
しない。それが男らしさってもんよ」とは思っていても、いざ何人かの女の
子からチョコレートをもらうと、にんまりする。好きな女の子からもらえな
いとショックだ。
(恋愛においては本来、男性が主導権をとって女性に申し込むべきだ、とは
思うが、女性の方から積極的に行動せよと、バレンタインデーは言っている)

 本命の子以外の女の子ともデートしたりしてつきあっておかないと、周囲
からの評価が落ちるシステムなので、しかたなく何人もの女の子の相手を同
時にこなすことになる。ハーレム状態である。なぜか彼女たちは主人公のこ
とが気になるらしく、長いことかまってあげないと機嫌をそこねてしまうの
だ。本命以外はいっさい切り捨て、このコひとすじ、ということがしにくい。
本当は、中途半端につきあうくらいなら、最初から冷たくして期待させない
方がよっぽど優しいのではないかと思う。自分の人気が下がるのを防ぐため
にフラフラして、結局、最後には多くの女の子を切り捨てることになるとは。
なんてヤツだと思うのであるが、好きになったら、そういうことが見えなく
なってしまうのかもしれない。
 最後の告白シーンはなかなか感動的。「すべては今日この瞬間のためにあ
ったのだ!(人生バラ色モード)」という感じで、別の女の子のことがチラ
チラ脳裏をかすめつつも、二人だけの世界へ突入してしまう。
 何人か出てくる女の子キャラクターには魅力があり、それぞれ個性的。ク
リアすると、声優のフリートークを聞くことができる。告白してもらえない
と聞けないので、全員から告白を聞くための励みになる。全員分クリアしよ
うと思ったらなかなか大変で時間もかかるので、こういうオマケはあった方
が嬉しい。

 PCエンジンCD−ROMソフトでは、小川範子の『No・Ri・Ko』、
酒井法子の『鏡の国のレジェンド』など、アイドルもののゲームが発売され
た。『ときめきメモリアル』は実写映像ではないアニメ調の絵だが、CD−
ROMの音声を活かし、身近な学園アイドル(芸能界アイドルではなく、普
通の(普通でないのもいるが)女の子)たちとのコミュニケーションを描い
た、好作品に仕上がっている。
 このゲームはパソコン通信の会議室でも話題になって人気を呼び、恋愛シ
ミュレーションとして、すっかり有名になった。その後、シリーズとして第
2作以降やアドベンチャーゲーム、さまざまなキャラクターグッズなどが発
売されたが、次第に人気も沈静化していった。『ときめきメモリアル』は、
「PCエンジン時代に生まれたアイドル」と言える存在なのかもしれない。

 小学生・中学生・高校生と、人は段階的に教育を受け、社会人になってい
く。学生時代は同じ制服を着て、同じ授業を受けていても、社会に出てから
は道が分かれていく。いろんな職業・生き方がある。学生の頃は仲良くして
いた友人も、社会人となってからは会う機会も少なくなっていったりする。
 小学生・中学生では恋愛はまだ早い。社会人だと、自分とは全然違う環境
だったりする。その中間の高校時代は、「あこがれ」を超えた恋愛が始まる
時期。多くの人が共通経験を持つ「高校」を舞台に選んだことが、ときメモ
の人気が出た要因のひとつではないだろうか。
(「まぐまぐプレミアム」発行(2004.3.13)・
有料メールマガジン「巴かずみのゲームソフトレビュー(有料版) Vol.18」改稿)
(HP登録日 2004/8/27)

ソフト発売1994年5月備考なし

トップ