『謎のマスカレード』
<〜円陣探偵社操作日記・
龍之介と5人の仲間たち 伝説洋館殺人事件〜>

発売日 1990年3月2日
定価 6000円
メディア Huカード
メーカー メサイヤ
内容  章じたてのミステリーアドベンチャー。


 この現実世界に、興信所みたいなものではなく、「殺人事件を扱う私立探偵」
なるものは果たして実在するのか。それは創作のなかにしか、存在しないのかも
しれない。

 ファミコンのアドベンチャーゲームを思いださせる、なつかしいゲーム画面。
最近、こういうオーソドックスなタイプのアドベンチャーは、あまり見かけない
気がする。
 洋館で起こる殺人事件。捜査にのりだす探偵……典型的ミステリーだ。「マス
カレード」とは仮装舞踏会のことである。サブタイトルにすでに「連続殺人」と
あるので、いつ次の殺人がおこなわれるのか、誰が殺されるのか、どきどきする。
家族や親類が集まれば、そこにはひときわ濃い、いろんな形の愛憎が発生する。
犯人を知っているのに黙りこんでしまって口を割らない人。捜査しているほうに
してみれば、はがゆくてたまらない。それでもだんだん、容疑者がしぼりこまれ
てゆく。犯人は、一体誰か。

 複雑な人間関係や状況を整理しながら推理していくのが推理ものの楽しみなの
だが、この作品では「正解コマンドを探す要素」のほうが強く、あまり謎解きを
楽しめない。ゲームスタート、さあ聞き込み開始したはいいが、手がかりはいっ
こうに得られない。導入部分があまりうまくない。オープニングは悪くないのだ
が、序盤でもっとプレイヤーの気持ちをぐいぐいひきつけるようにしないと単調
になり、退屈さを感じさせてしまう。
 「私ゃ、私立探偵にだけはならないぞ」と決心させるに足る、地道で遅々とし
て進まない捜査。コマンド総あたりでいくしかない。何かひとつメッセージを見
落とすと次の新たなメッセージが出てこないので、ぐるぐる聞き込みを繰り返す
はめになる。一度聞いた質問事項を何度も何度も全部選んでメッセージを再表示
させるのは、非常に疲れる。

 殺人事件が起こったとは思えないような優雅な曲がバックに流れている。あち
こち調べたり聞き込み回ったりしても全然捜査が進まず、いいかげん退屈して眠
くなってきたとき、いきなり変化があらわれて効果音がチャーーーーン!!……
と入るのは非常にギクリとさせられる。寿命が1〜2秒はちぢむ。
 基本の背景グラフィックは赤茶系で統一されており、シックな印象。ていねい
に描かれている。音楽とあわせて、古き時代のけだるい雰囲気がよく出ている。
しかし絵の迫力は、やはり少々足りない。

 メッセージ文字は大きな漢字と小さなひらがな文字で構成されていて、それが
デコボコして奇妙な感じをうみだしている。この作品の雰囲気に合っているかも
しれない。数ケ所、メッセージ文中に余分な文字が混入しているところがあった。
しっかりチェックしてほしい。
 メッセージ表示を早送りするタイミングがうまくつかめない。押しすぎて再度
同じ文を表示してしまったり、押すのが早すぎて進まなかったりしてもどかしい。
操作はすこし快適さに欠ける。

 屋敷内の見取図が表示されるので行きたい場所にカーソル指定すると、そこへ
ひとっ飛びできる。便利な機能だが、カーソルは今いた場所にとどめておくよう
にしてほしかった。動くたびにカーソルが初期位置へ戻ってしまうと、どこまで
調べたか把握しにくくなってしまう。
 パスワードとバックアップRAMによる2通りのセーブ方法がある。パスワー
ドはやたら長く、28文字も使用する。章ごとのセーブで、持ち物などの変化だっ
てないはずなのに、どうしてこんなに長くなるのだろう。謎である。

 味方キャラクター名にはアガサ・クリスティや刑事コロンボなど、推理ものに
関係する名前のパロディが使われている。仲間は5人いて、彼らはいろいろな情
報を集めてくれるのだが、各キャラクターの特徴があまりうまく活かせていない
気がした。見せ場が少ない。せっかくそれぞれ個性的なのにちょっと残念。主人
公自身のインパクトも弱く、感情移入することができなかった。

 淡々と展開して、あっさり終わる。内容は浅いとは言わないが、そんなに深く
もない。ドラマとしてもうひとつ物足りない。クリア後の感動はあまりなかった。
この手の推理アドベンチャーに飢えていればそれなりに楽しめるだろうが、そう
でないならクリアするまでに放り出す可能性が高いかもしれない。謎を解く楽し
みよりも、かかるストレスのほうが大きい。移植ものだからというせいもあるの
か、全体的に覇気が感じられない。


'94 8/19 NIFTY-Serve FCGAMEM
     PCエンジン会議室 #955(改稿)
                   (登録日 '96/11/20)
ソフト発売1990年3月備考なし