『炎の闘球児ドッジ弾平』

発売日 1992年9月25日
定価 6500円
メディア Huカード
メーカー ハドソン
内容  ドッジボールのルールを試合形式に仕立て直した“スーパー 
 ドッジ”をシミュレートした、スポーツゲーム。原作はコロ 
 コロコミック連載の同名漫画。


 小学生のころ、昼休みの校庭ではドッジボールがさかんだった。2チームに分
かれたクラスの皆が、運動場に描いたふたつの四角の中と外に散らばり、ひとつ
のボールを投げあう。ボールの流れにしたがい、人も流れるように動く。ルール
は簡単で、敵にボールを当てられたらワクの外に出る。どちらかのチームが全員、
ワクの外に出るまでゲームはつづく。私は運動神経が発達しておらず、ワクの線
に沿って、ただひたすら逃げまどうばかりだった。たまにころがってきたボール
をしかたなく拾うがヘロヘロボールしか投げられず、簡単にキャッチされてしま
う。強い子の投げるボールは、すごい勢いで飛んでくる。ボールがお腹にドシン
と当たるととても痛い。

 ドッジボールという遊びにいくつかのルールを加えて本格的にしたものが、こ
のゲームの題材である“スーパードッジ”である。漫画のなかだけの架空のスポ
ーツではなく、実際に小学生による試合が全国でおこなわれているようだ。ちゃ
んと専用のユニフォームもつけたりして、なかなかかっこいい。
 スーパードッジには時間制限があり、一試合は5分。終了時点で、残った内野
の人数が多いほうが勝ち。同数なら延長戦となる。残り時間が少なくなってくる
と緊張感が出る。ドッジボールゲームというとアクションゲームを想像するが、
この作品のシステムはパワーゲージを使用した、シミュレーション的なものだ。
揺れ動くメーターをできるだけゲージの最大値で止めるようにすれば、強いショ
ットをうてる。「いけぇ、スーパーショーッット!」「よけろぉ〜っっ!」など
と自分で叫んでプレイする。最初、ゲームのルールをひととおり覚えるまでちょ
っとかかったが、一度操作を覚えこんでしまうと、けっこう楽しめる。

 各選手にはそれぞれ「スタミナ」と「シュート」というポイント値が設定され
ていて、ボールを受けるごとにスタミナが減り、ゼロになるとボールを受け止め
られずヒットされる。そして、ショットをうつほどシュートポイントが減り、シ
ョットの威力が弱まっていく。これらのポイントを回復させるすべは無い。試合
は消耗戦となる。
 バスケットボールのように、最初は中央でボールを真上に投げて、それを取り
合うところから試合がはじまる。この作品では、選手の体格その他は関係なしに、
ランダムでボール獲得が決定される。最初のボール奪取は試合の重要なポイント
だから、ランダムでなく自力で奪いあうようにしたほうが楽しいのではないだろ
うか。
 敵のパスボールの近くにいた場合、パスカット画面に切り替わる。ボールが左
右どちらかに飛んでくるので方向キーでキャラを操作し、ボールをキャッチする。
ボールが見えてから動いていては間に合わないことが多いので、最初にどっちへ
ジャンプするか決めるわけだが、状況から見て、右にボールが来るはずだという
場合でも左に飛んできたりする。これもランダムで方向が決まっているらしい。
逆方向へジャンプする姿はおマヌケで笑える。思わず、チーム仲間の突っ込みの
ヤジが聞こえてきそうだ。「お前、何やってんだよー?」

 ストーリーモードと、2人プレイができるVSモードとが用意されている(対
COM戦、COM戦の観戦モードもあり)。ストーリーモードはRPGのように
町中の人から情報やアイテムを集め、試合をこなすことによって経験値を得てレ
ベルアップしていく。いろんなチームと試合し、優勝することが目的だ。しかし、
クリアしてもいまひとつ達成感がない。物語への演出をもっと増やして、キャラ
クターももっと掘り下げてほしかった。ストーリー展開が単調で奥が深くないの
で、全然ドキドキしない。
 原作のキャラクターがたくさん出てくるが、個性があまり活かされていない。
肝心の主人公・弾平のカゲが薄い。なにしろコイツは、漫画ではいきなり人前で
おシリを見せてウン○をするような、とんでもない奴なのだ。こうしたハチャメ
チャな性格の描写を増やせば、もっと弾平らしさが出たはずである。しかも試合
中の動作も、敵のほうがハデでかっこよく、見栄えがする。ストーリーモードで
弾平がスーパーショットを使えるようになるのはゲーム後半なので、それまでが
とても地味だ。球をよけるときの左右移動スピードは速いものの、油断するとあ
っけなくボールに当たってしまう。主人公キャラといえども、勝負はプレイヤー
の腕にかかっている。もう少し他のキャラよりも基本能力に差をつけてもよかっ
た気がする。

 ゲーム中のキャラクターの絵は、ほぼイメージどおりで、原作のイメージをこ
わすことはない。アニメするショットシーンなども雰囲気をうまく出している。
が、やや迫力には欠ける。
 「ドッジ弾平」の魅力は、ドッジボールという、今までは「スポーツ」とまで
は呼びにくかったものに自分の力をすべて出しつくして真剣に熱い闘いを挑む、
個性的なキャラクターたちの姿にあると思う。残念ながら、この作品には、その
“熱さ”が足りない。


'94 12/30 NIFTY-Serve FCGAMEM
     NECゲームマシン会議室 #1554(改稿)
                    (登録日 '97/3/26)
ソフト発売1992年9月備考なし