発売日 | 1992年12月18日 |
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定価 | 7800円 |
メディア | スーパーCD−ROM |
メーカー | リバーヒルソフト |
内容 |
章ごとに分かれて展開するコマンドRPG。ストーリーは
前作の続きからとなっている。パソコンゲームの移植。
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謎でいきづまり、私は前作を、あやうく放りだすところだった。セーブデータ
は「天の声バンク」に保存されていた。久しぶりにデータを取りだして再挑戦し
てみて、何とかクリアすることに成功。そしてそのすぐ後、この『II』を開始し
た。
オープニングデモを見る。まず「質が落ちたかな」と感じる。悪くはないのだ
が、魅力が薄れた気がする。前作ではノーマルのCD−ROMでありながら、絵
をとてもスムーズに流していて感心したものだった。少々バラつきはあったもの
の、質も非常に良かった。「これでホントにスーパーCD−ROMじゃないの?」
と何度もパッケージを確認してしまったくらいだ。今回、スーパーCD−ROM
になって、さぞかしグラフィック面が向上しただろうと期待していたのに、前作
のほうが良かったように思える。絵や声の量こそ増えているが、質のレベルダウ
ン感は否めない。ゲーム中には光る絵も見受けられたものの、絵柄がバラつく。
おそらく、各パートの担当者がちがうせいで絵柄が変わってくるのだろうが、で
きれば統一してほしかったところだ。
体験版ソフトがプレイできる「CD−ROMカプセル」というソフトには、こ
の作品のオープニングデモが収められている。前作をプレイした人が続編はどん
な出来かとこのデモを見てみたとき、どう思ったであろうか。これでは期待をあ
おるどころか、逆にソフトの買い控えを考えさせることにもなりかねない。それ
ほど、前作の絵は良かったのである。特にオープニングというのは最初にプレイ
ヤーを作品世界へとひきつける、きわめて重要なものだ。アニメ映画のパイロッ
トフィルム並みに、めいっぱいの気合いをこめるべきだろう。
画面デザインがかなり変わった。前作ではパソコンゲームの香りがずいぶんと
濃かったのだが、今回は画面がコンシューマ向けに構成されている。アイテムや
術の効果説明もちゃんと表示される。わかりやすい、親切なシステムへと改善さ
れた。
戦闘画面も、画面全体をいっぱい使ったものになり、すっきり広々とした感じ
を受ける(前作では、小さなワクに、敵キャラや味方のグラフィックがところ狭
しと並んでいたので、ちょっと窮屈だった)。が、確かに迫力はアップしたが、
いかにもよくあるタイプの画面で、新鮮さはあまりない。戦闘自体もどちらかと
いうと退屈な部類に入る。ほぼどんな敵に対しても、各キャラクターの行動が一
定して同じになってしまい、ワンパターンなのである。前作のレイアウトがとて
も良かったというわけではないけれど、今回は何だか個性が失われてしまったよ
うに思えた。受ける印象が平凡なのだ。一部、背景などが『イース』シリーズに
似ているのも気になった。
コマンドアイコンがサササッと現われたり去っていったりするのはおもしろい
が、少々の待ち時間が生じてしまう。コマンド入力できる状態になるまで、すこ
し待たなくてはならない。別にそんな動きには凝らなくていいから、もっとすば
やくパッパッと出てくれたほうがうれしい(メッセージを送るカーソルが、動く
キャラクターになっているのはかわいい)。
戦闘時のコマンド入力は、いったん決定してしまうとやり直せない。ミスって
も取り返しがつかない。これは前作でも不便に感じた点だ。今回も変わっていな
い。ストップさせるまで前ターンとまったく同じ行動を繰り返し続ける「リピー
ト」という機能は、普通のオートバトルよりは融通がきいて、良い。
全体的な戦闘量は少なめだが、バランスは一部キツかった。単なるザコ戦が、
まるでボス戦のように長いことがある。やたらカタくて倒すまでに時間がかかっ
て、うんざりする。そのかわり(?)、この作品のザコ戦ではパーティ全員の体力
がゼロになっても、すぐには全滅しない。少しだけ猶予をくれるのである。全滅
するとセーブした時点からやり直しになるので、このシステムはありがたいと思
った(ただし、ボス戦では適用されない)。
また、装備にそれぞれ相性があり、「値段の高い武器であれば誰が使っても強
力な攻撃が出せる」のではなく、自分に合った装備でこそじゅうぶんな力が発揮
できるという仕組みは、じつに納得のいくものだ。が、店で装備を買うときに相
性度は表示されるものの、どれだけステータス値が変わるのかはわからないため、
買った後に後悔することが何回かあった。それと、装備する瞬間に現在のステー
タス値が見えなくなってしまうので、値変化が確認しづらい。
声優の配役はぴったり合っている。ナレーション役をつとめる永井一郎さんは
シリアスとユーモラスをうまく使いわけ、物語全体をひきしめている。他の声優
の演技も、じつにいい。さすがはプロだと感心する。
登場キャラクター数が多いので、一人の声優が複数の役をこなしている。いく
ら声優がいくつもの声色を使い分けられるとはいっても、注意深く聞いていると
わかるものだ。「あ、この声はあのキャラの声と同じだ」なんて気が散ってしま
うので、なるべくなら兼任はしないでほしいと思う。ただ、この作品の場合は、
テーマが「光と闇」なのでやけに象徴的に感じられ、兼任もさほど気にはならな
かった。曲は強く印象に残るものがあまりなかったが、なかなか良い。キャラク
ターの声が、攻撃時などの効果音として取り込まれているのがおもしろい。
この作品の良さはやはり何といっても、存在感ある各キャラクターの魅力だ。
表情が豊かで会話のテンポも良く、見ていてほほえましい。ゲームをクリアした
後も、内容を思いだすたび、彼らがいとおしくなる。各キャラクターへの愛情が
これほどまでに自分のなかで育っていたとは、気がつかなかった。なにしろ、8
人もいる勇士のフルネームをすっかり覚えこんでしまったのである。普通は、ゲ
ームの登場人物の名字まで暗記してしまうことは、めったにない。いかにキャラ
の魅力が強い作品であるかがわかる。今までクリアしてきたRPGでは、すでに
主人公の名前すら忘れてしまったものがほとんどだ。
こまかいところでの不満はあった。けれど、そんなものは消しとんでしまうほ
ど脚本が良かった。前作で未解決だったいろいろなことが今回で、より深みを増
して描かれている。バラバラに見える各要素が次第にからみあい、ひとつの大き
な流れに統合されていく。この先どうなるのだろうかと、どきどきする。設定を
活かしきろうと、細部にまで気を配ってある。ていねいに伏線をはっているので
説得力がある。多少、唐突で強引な部分も見られるが、キャラクターの性質や心
情を無視したご都合主義には陥らない。まったくおそるべき力量である。
カートリッジ作品(ロムカセット)でも感動をうみだすことはもちろん可能だ。
が、CD−ROMにはやはり、カセットにはない表現力がある。CD−ROMの
ビジュアルアニメと聞くと、私はあまりいいイメージがわかない。アニメがアニ
メすることそれだけを目的としていて、プレイヤーの想像力を補うどころか、か
えって邪魔にしかなっていない例をいくつか見たせいかもしれない。しかしこの
作品の場合、ビジュアルシーンと声入りのセリフが確実に、物語を盛り上げる役
割を果たしている。効果的に絵と音声が挿入されれば、アニメは単なるアニメに
終わらず「ドラマ」になるのだ。
この後の世界がどうなったのか知りたいところだが、続編が出るということは
新たな争いが始まるということでもある。ゲーム世界のキャラクターたちにとっ
ては、続編が出ないほうが幸せなのにちがいない。
前作をクリアした人は、ぜひこの『II』のエンディングまで見てほしい。前作
だけでは、まだストーリーの半分だ。勇士が大活躍する美しい物語として終わら
せたいなら前作のみのクリアでじゅうぶんだろう。だが、心の暗部にまで踏みこ
んだ『II』をプレイせずには、この物語の真の奥深さは味わえない。
'95 3/4 NIFTY-Serve FCGAMEM
NECゲームマシン会議室 #2026(改稿)
(登録日 '97/3/26)