『アドベンチャーアイランド』
<ADVENTURE ISLAND>
発売日 1991年4月19日
定価 5300円
メディア Huカード
メーカー ハドソン
内容  セーブつきアクション。基本はアクションで、そこに 
 アイテムをそろえることなどによって強くなっていく 
 RPG要素が混ざっている。

 経験値稼ぎの手段がアクションになっているRPGは、“アクションRPG”
と呼ばれる。この作品の場合、“ロールプレイング・アクション”という感じだ。
語をひっくり返しただけなのだが含まれる要素の割合が違う。アクションRPG
の“アクション”は“RPG”の修飾語で、主体は“RPG”。“ロールプレイ
ング・アクション”はその逆。そして私は、アクションがきっちり楽しめ、かつ
成長要素もある“ロールプレイング・アクション”のほうに、今はより魅力を感
じている。もちろん出来さえよければ、細かいジャンル分けなんてどうでもよい
ことなのだが。

 この作品はアクションでありながらセーブ機能がある。街へ戻りさえすれば、
途中経過を記録しておける。一気にラストボスまで突っ走るという楽しみかたと
はちょっと違って、体力が減れば早めに街へ戻り、回復してからまた出かける。
ひと息つきながらの長丁場である。
 セーブはバックアップラムに4ケ所でき、パスワードも出せる。ちょっとショ
ックだったのは「復活の薬」の数を記憶してくれないことで、せっかく持ってい
た薬も、いったん電源を切って再開するとゼロ、攻撃アイテムもかなり失われて
しまう(代わりに少しお金が増えるようだが)。全部記憶させると、パスワード
が長くなってしまうためだろうか。

 ゲームが進むにつれて、主人公の姿はいろんなモンスターに変わる。それぞれ
に特徴を持たせることにより、ゲーム性豊かな内容になっている。敵への対処法
・相性、マップの進みかたなどが各々変化するのだ。その変化によって、今まで
通りすぎていた場所から新たな道がひらける。ドラえもんの、“机の引きだしが
タイムマシン”的な、新鮮なアドベンチャー感覚が楽しい。
 アクションの難易度はおさえられていて、ボスも凶悪な強さではない。それで
いて緊張感を失わず、ドキドキする戦闘である。アクションゲームの面白さのひ
とつは、「生きるか死ぬかの急場を自分の力でしのいでみせること」だ。あんな
に大変な状況を自力でのりきることができたという自信は、プレイヤーに満足感
をあたえる。そしてまた、もう引き返せない、進むしかないという、あの緊張感
がここちよいのだ。

 ダメージを受けると、操作がきかなくなる時間がある。それがけっこう長く、
身動きできないのはつらい。キャラの動きが少々トロいため、「あぶない!」と
思ってもよけられずに当たってしまう。しかし、そのことをハンディとして受け
入れても腹が立たないくらいのうまいゲームバランスで、イライラよりも楽しさ
のほうが上回る。アイテムなどもよく出てくれ、親切だ。もし敵が強すぎる状況
なら、おそらく何か装備を見落としているか、どこか回る順番を抜かしているか、
なのである。
 体力はハートメーター制だが、「敵の強弱にかかわらず、1ダメージ1ハート
減」というおおざっぱさはない。きちんとした装備をしていれば、ザコ敵の攻撃
による被害はハートひとつぶんのメーターのうちの、ほんのわずかの量ですむ。
敵に倒されてしまっても、そのたびにルーレットが回り、うまく当たれば「復活
の薬」をひとつ入手できる。これによって、失敗することにすら意味を持たせ、
プレイヤーのやる気をバックアップしている。ペナルティとして攻撃アイテムは
すっからかんになくなってしまうが、それでも所持金はそのままというシステム
が大変ありがたい。
 あちこちで、「この作品のゲームデザインをした人はなんてセンスがいいのだ
ろう」と感心させられる。ひとつの世界がしっかりと成立しているので安心して
遊べる。グラフィックは「最高に美しい!」と、ほめたたえるほどキレイではな
いが良い絵だ。臨場感があり、臨戦体制に入りやすくする曲の数々や、効果音の
出来もいい。

 PCエンジンソフトは(CD−ROM作品が増えだしてからは別として)、一
時期の古いソフトのパッケージ裏には、作品紹介部分がない。この作品もそうで、
どうしても店頭でのアピール性に欠ける。どういう内容のゲームなのか、いや、
ヘタをするとジャンルすら不明である。「得体のしれないゲーム」とみなされれ
ば、一度手にとったとしてもまた棚に戻されてしまうかもしれない。
 また、パッケージイラストとタイトルの地味さでも損をしている。プレイヤー
がお金を払ってゲームを買い、ソフトを手にしたとき、「ワクワク感」がわいて
こなければパッケージとして失格なのだ。さぁ箱のふたを開けるぞ、というとき、
おおげさに言えば、緊張で手がふるえるほどでなくてはならない。いくら中身で
勝負だと言っても、買ってもらえなければ陽の目を見ずに埋もれてしまう。それ
だけ重要な使命をパッケージデザインは背負っているのではないだろうか。作品
内容がいいだけにそれらの点が惜しまれるが、ともあれ、久々に楽しめる冒険だ
った。いいゲームである。
'94 9/23 NIFTY-Serve FCGAMEM
     PCエンジン会議室 #1165(改稿)
                   (登録日 '97/3/19)
ソフト発売1991年4月備考なし